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「ゼロカロリー」「糖類ゼロ」はむしろ大損している…科学が解明「ダイエットに失敗する人」の共通点 | ニコニコニュース

中年太りを防ぐにはどうすればいいか。肥満や運動を専門に研究する山田陽介さんは「中年太りは、摂取カロリーが消費カロリーを上回ってしまうことで起こる。ただし、おにぎり1個のエネルギーを消費するには、1時間のウォーキングが必要といわれ、運動で消費できるカロリーは意外に少ない。そのため適切な運動も重要だが、食べる量を減らすことがもっとも効果的である」という――。

※本稿は、山田陽介『科学がつきとめた 中年太りのすごい解消法』(エクスナレッジ)の一部を再編集したものです。

■肥満の原因は「ポテトチップス」よりも「腸内環境」にある

海外の研究では、ウルトラプロセスフード(超加工食品)をよく食べる人は、太りやすいということを明らかにしています。

ウルトラプロセスフードとは、糖質、脂質、塩分を多く含む加工食品のことです。ポテトチップスや菓子パン、カップ麺、冷凍ピザ、クッキービスケットなどの総称で、保存料などの添加物も多く含んでいます。

カロリーの食品が多いので、それが原因とも考えられますが、最近の研究では、腸内細菌を介して、そこから食習慣や体の組織を変えてしまうのではないかという説が話題になっています。

腸内細菌は、みなさんご存じだと思います。私たちの腸の中にはたくさんの種類の細菌(腸内細菌)が棲みついていて、その細菌のバランスが、健康にも大きく影響しているというものです。

その影響は、食の好みや運動習慣などにもおよんでいるという研究もあります。22年12月に『ネイチャー』に掲載された論文(出典は108ページ)では、マウスをたくさん飼育する実験で、よく走るマウスと、あまり走らないマウスの差を調べました。

すると、驚くべきことに、よく走るマウスと、あまり走らないマウスの差は、腸内細菌の違いでした。

そこで、走るマウスの腸内細菌を走らないマウスの腸に移植したところ、走らないマウスが走るようになりました。

この研究の結論は、腸内細菌が運動の好き嫌いを決めている可能性があるというものです。ヒトでも運動が好きな人がいる一方、運動が嫌いな人がいますが、これも腸内細菌が関係している可能性があります。

■人工甘味料が腸内細菌のバランスを崩す

中年太りを改善するには、食事と運動が重要ですが、もう1つ、腸内細菌のバランスも大事であると考えられます。

私たちの研究所でも、腸内細菌の研究を行っていますが、人工甘味料が腸内細菌のバランスを大きく変えてしまうことがわかっています。

缶コーヒーコーラなどの清涼飲料水には、「ゼロカロリー」とか「糖類ゼロ」と書かれているのに甘い飲みものがあります。この甘さは人工甘味料でつけています。この人工甘味料が腸内細菌のバランスを変えてしまうのです。

人工甘味料入りの清涼飲料水が好きな人は、ルーティーンのように毎日飲む人も多いようです。それは、腸内細菌が食嗜好を変えてしまった結果なのかもしれません。

カロリーを抑えた食習慣に変えようと思って、そういった清涼飲料水に飛びつくと、今度は無意識のうちに、自分が人工甘味料入りの飲料を飲みたくなる。腸内細菌には、そうした働きがある可能性があるといわれています。

あるいは、ラーメンのように1つの器でまとめて食べるような食事ばかり食べるのも、腸内細菌を変えてしまう可能性があります。

牛丼やカツ丼のようなどんぶりもの、カレーライスなどもそうですが、これらの食事は糖質と脂質が多いので、そうした栄養素がドカンと腸の中に入ってくることで腸内細菌が変化し、どんぶりものを好むようになるのではないかという説もあります。

■野菜が好きになることの効果

ポテトチップスなどを一気に一袋食べてしまうような人も、その可能性があります。ポテトチップスは、じゃがいもの糖質と揚げ油の脂質、そして塩分がたっぷり含まれています。

まさに前述のウルトラプロセスフードの代表ともいえるものですが、好きな人は、この食嗜好を改めないと中年太りの改善は期待できないでしょう。

なお、食嗜好が腸内細菌によって変わるというのは、腸内細菌が脳に何らかのシグナルを送っているからではないかといわれていています。

食嗜好を腸内細菌が選択しているのか、脳が選択しているか。結論は今後の研究を待たないといけませんが、ダイエットを成功させるには、ウルトラプロセスフードのような食品から離れることが大事だということです。

そのためには、腸内細菌のバランスを変えることが有効と考えられています。バランスをよくするには、食物繊維の豊富な野菜を食べるとよいといわれています。

野菜に含まれる水溶性食物繊維は、腸内細菌のエサになりますから、野菜が好きになると、腸内細菌も野菜が好きな腸内細菌に変わってくるでしょう。

また、ヨーグルトなどの発酵食品も腸内細菌のバランスを変えるといわれているので、発酵食品を摂るのもおすすめです。

■中年太り解消法は「適切な運動」より「食べる量を減らす」

中年太りは、摂取カロリーが消費カロリーを上回ってしまうことで起こります。そしてその原因は、食べすぎ(カロリーオーバー)と運動不足(活動量不足)にあります。

たくさん食べても、それ以上を消費できればよいのですが、現代のような便利な世の中では運動不足になりがちです。

運動不足が続くと、筋力が低下してやせにくい体になる傾向があります。よく、やせた後にリバウンドするという人がいますが、これを防ぐために運動が重要なのです。

ただ、運動は筋力低下を防ぐためには有効ですが、食べた分をすべて消費するには、あまり現実的ではありません。

おにぎり1個(約180キロカロリー)のエネルギーを消費するには、1時間のウォーキングが必要といわれています。運動で消費できるカロリーは意外に少ないのです。

ですから、中年太りの改善には、適切な運動も重要ですが、食べる量を減らすことがもっとも効果的といえます。

どのくらい太っているかにもよりますが、食事を減らす目安は「腹八分目」をイメージするとよいでしょう。

■「腹八分目」のカロリーを求めるたった1つの方法

とはいえ、普段摂取しているカロリー自己申告してもほとんどの人が過小評価してしまうため、なにが「腹八分目」かを評価するのはとても難しいのが現実です。ここで、簡単に「腹八分目」のカロリーを求める方法をお教えしましょう。

それには、厚労省が示している「日本人の食事摂取基準(2020年版)」というものを参照します。年齢、性別、身体活動レベル別に、「推定エネルギー必要量」というものが掲載されています。

これは、現在の日本人の平均的な身長と体重の場合に必要な摂取カロリーになります。この値に0.8を掛ければ、自分の身長に対する、平均的な「腹八分目」がどれぐらいかだいたいわかります

例えば、45歳男性で活動レベルが普通の人の場合、2650×0.8=2120キロカロリーになります。

参考として、厚労省の推定エネルギー必要量を掲載しますが、計算が面倒な人は、これに0.8を掛ければ、腹八分目がどれくらいかだいたいわかります

■おかわり無料はぜんぜんお得ではない

自分がどのくらいカロリーを摂っているかは、感覚ではわかりにくいものです。本書(『科学がつきとめた中年太りのすごい解消法』)で述べている低脂質ダイエットと低糖質ダイエットの比較でも、脂質が多い低糖質ダイエットグループのほうが摂取カロリーは大きくなっています。

実際に食べているカロリー量というのは、思いのほか多いのです。

身長も体重も人それぞれですから、牛丼の普通盛りが誰にでも「普通」ということにはなりません。もしかしたら、男性であっても、活動量が低い人は小盛りが「普通」なのかもしれません。

にも関わらず、学生時代のように、つい大盛りを注文しているなら、体重はどんどん増えていくでしょう。

あるいは、「おかわり無料」の定食屋に入ると、ついおかわりしてしまう人や、ホテルのビュッフェで何度も何度も食事を取りに行く人もいます。

これはある種の「もったいない症候群」もあると思います。でも、ホテルのビュッフェでお腹がパンパンになるまで食べれば、金銭的にはお得かもしれませんが、中年太りの改善にとってはぜんぜんお得ではないのです。

そういう食事に慣れてしまうと、なかなか食事量は減らせません。これは私の経験ですが、一度わんこそばを食べてから、すごくお腹がすくようになりました。大きくなったお腹は、なかなか小さくはならないのでしょう。

■中年になったら成長期と同じように食べてはいけない

実際に胃袋が大きくなっているわけではありませんが、たくさん食べるのが習慣になってしまうと、少ない量の食事に対して、少なすぎると感じるのだと思います。ここがダイエットの難しさです。

男性は18~22歳くらいまでは、成長を続けます。成長している間は、BMIは上がらない人がほとんどです。

そして成長が止まると、BMIが上がってきます。学生時代にいっぱい食べていた人が、その後も、同じ感覚で食べていると、BMIが22を超えて、だんだん上がるとともに、中年太りを感じるようになるのです。

何も考えないでおかわりをしているような人が、急に食べる量を減らすのはなかなか難しいと思います。

とりあえず、やれることとしては、大盛りおかわりが無料の店には近づかないこと。ビュッフェのような「食べ放題」の店を避けるようにすることをおすすめします。

■たんぱく質を極端に減らしたらダメ

食べる量を減らしても、たんぱく質は減らさないことが大事です。これまで述べてきたように、中年太りを改善するには脂質を減らして、炭水化物(糖質)を食べすぎない程度に減らすのがよいのですが、たんぱく質を極端に減らしてはいけません。

たんぱく質は、筋肉をはじめ、ヒトの体をつくる材料です。そのため、たんぱく質の摂取量が少なくなると、筋肉が崩壊していきます。ですから、必要なたんぱく質はちゃんと摂らないといけないのです。

1日に必要なたんぱく質摂取量は、体重1㎏に対して1gとされていますが、これは最低限の摂取量です。

最近、プロテインサプリメントブームになっています。プロテインとはたんぱく質のことで、スポーツをしていて筋肉量を増やしたい人に人気のようです。

また、最近は65歳以上の高齢者も、筋肉量を減らさないために、たんぱく質を積極的に摂ることがすすめられています。

これは65歳以上になると、筋肉の合成能力が弱くなるとともに、筋肉が分解しやすくなるからです。ですから、高齢者は若い人よりもたんぱく質を多めに摂らないと、筋肉が崩壊していく危険性があるとされています。

ただ、トレーニングをしている人は別ですが、30代や40代では、たんぱく質を過剰に増やす必要はありません。

■若い人はプロテインを無理に飲む必要はない

逆に、若い人がたんぱく質を摂りすぎると、がんなどで死亡するリスクが高くなってしまうという指摘もあります。

これはアメリカの研究で明らかになっていますが、たんぱく質の過剰摂取によって、がんのリスクが逆転するのが65歳ぐらいなのです。

ただそれをいってしまうと、筋肉などの維持に必要な最低限のたんぱく質摂取量を割り込んでしまう人がいるかもしれません。

普通に食べているなら、それほど心配はいりませんが、普段からお肉や魚、乳製品、大豆製品などをしっかり食べている人が、さらにプロテインを飲む必要はないでしょう。

なお、65歳以上の人たんぱく質の摂り方については、本書(『科学がつきとめた中年太りのすごい解消法』)の第5章で詳しく述べていますので、そちらを参考にしてください。

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山田 陽介やまだ・ようすけ)
国立研究開発法人医薬基盤・健康・栄養研究所運動ガイドライン研究室長
神戸大学大学院保健学研究科准教授。1980年埼玉県生まれ。専門は身体活動科学・栄養代謝学・健康長寿学。2021年2022年には『Science』誌、2023年には『Nature Metabolism』誌に共同責任著者の論文が掲載されるなど、エネルギー代謝に関する研究の第一人者。

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※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Hanasaki

(出典 news.nicovideo.jp)

ゲスト

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社畜になって身も心も会社に売ったあげく、その収入の半分を税金として取られ、年金もまともにもらえなそうな社会で、酒もタバコもやめろと言われた上に、さらに食うことまでやめろと言われたら、一体何を楽しみに生きればいいのかわからなくなりそうだなあ。

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