激しい運動をしても体重は増加する そのワケは? 筑波大学などが実験で検証 | ニコニコニュース
筑波大学と東京都立大学に所属する研究者らが発表した論文「Acute Vigorous Exercise Decreases Subsequent Non-Exercise Physical Activity and Body Temperature Linked to Weight Gain」は、激しい運動によって体重が増加する傾向を示した研究報告である。
実験では、マウス27匹を安静群、中程度の運動群(15m/分)、激しい運動群(25m/分)の3群に分け、30分間のトレッドミル走行を行わせた。その際、腹腔内に埋め込んだ活動量計を用い、運動前2日間と運動後3日間連続で「Non-Exercise Physical Activity」(NEPA)と体温を測定した。NEPAとは、階段を上る、物を運ぶなどの日常生活の中で自然に行われる身体活動全般を指す。また採血を行い、血中コルチコステロン濃度を測定した。
その結果、激しい運動群でのみ、運動後のNEPAと体温の有意な低下が見られた。この低下は運動後2日目まで続き、体重増加につながった。一方、食事量に群間の差はなかった。つまり、激しい運動で疲れ切ってその後の日常の動きが減少したから体重が増えた可能性を示唆する。
さらに、激しい運動では、NEPAの概日リズム(サーカディアンリズム)が体温の概日リズムに対して遅れる現象を観察できた。このことから、激しい運動がNEPAと体温の同期性を乱していることが示唆された。
また、運動6時間後の血中コルチコステロン濃度と運動前後のNEPA変化率に正の相関が見られた。コルチコステロンは、ストレスホルモンの一種で、そのサーカディアンリズムは身体活動と同期している。そのため、激しい運動によるコルチコステロンリズムの乱れが、NEPAの代償的な低下に関与している可能性がある。
以上の結果から、激しい運動は、その後のNEPAと体温、それらの同期性を低下させることで、体重増加を引き起こすことが明らかになった。この代償的反応は、コルチコステロンのサーカディアンリズム乱れに起因すると考えられる。運動プログラムを最適化するには、運動そのもののエネルギー消費だけでなく、運動後の身体的・生理的活動の変化を考慮することが重要である。
Source and Image Credits: Daisuke Funabashi, Shohei Dobashi, Kazuki Sameshima, Hiroyuki Sagayama, Takeshi Nishijima, Takashi Matsui. Acute Vigorous Exercise Decreases Subsequent Non-Exercise Physical Activity and Body Temperature Linked to Weight Gain. bioRxiv 2023.10.25.563892; doi: https://doi.org/10.1101/2023.10.25.563892.
※2014年から先端テクノロジーの研究を論文単位で記事にしているWebメディア「Seamless」(シームレス)を主宰する山下裕毅氏が執筆。新規性の高い科学論文を山下氏がピックアップし、解説する。X: @shiropen2