ピックアップ記事
なぜスーパーのレジで“PayPay渋滞”が起きるのか?

なぜスーパーのレジで“PayPay渋滞”が起きるのか 大手流通の存在がチラリ | ニコニコニュース

 お盆休みということで家族や親戚が集まっているからか、スーパーが時間帯によってはかなり混み合っている。

【その他の画像】

 筆者の家の近くの「マルエツ」でも、レジには長蛇の列ができていた。その中でもひときわ長い列になって並んでいる人たちがイライラしているレジがあった。その先頭を見て「ああ、なるほどね」と納得した。

 「PayPay渋滞」である。

 マルエツをよく利用している人ならばご存じだろうが、このスーパーの有人レジでPayPayを使うと、店員さんはかなり面倒な作業を強いられてしまうので、長蛇の列ができることが多々あるのだ。

 どれくらい面倒な作業かというと、まず普通にレジで商品のバーコードを読み込んだ後、レジの下からQRコードを読み取る端末を取り出さなくてはいけない。次に、この端末はレジと連動していないのか、わざわざレジからレシートを打ち出して、その金額を店員さんが手動で打ち込まなくてはいけないのだ。

 手打ちなので指さし確認で間違いがないかチェックをする。そして、ようやく客が出しているPayPayQRコードカメラで読み込むのだが、時々ピントが合わなかったり、天井の照明に反射してしまったりして、もたつくことがある。どうにか読み取れたとしても、まだやることがある。端末からレシートが出てくるので、それをペリッと手で切り取って、レジから出ているレシートと合わせて、ステイプラーで止めて手渡すのだ。

 ……という流れを書いているのも面倒くさくなるほど、店員さんは大変な手間がかかるのだ。スーパーライフなどでは、レジでPayPayを差し出せば店員さんは「ピッ」とバーコードを読み込んで、レシートを渡して終了だ。それと比べると、マルエツの店員さんのアクションは5つほど多い。そのため、PayPay利用者が現れると、そのレジは途端に人の流れが悪くなって「渋滞」になりがちなのだ。

●“PayPay事故”ともいうべき悲惨な光景

 筆者もPayPayをよく利用しているが、マルエツでPayPay決済が続き疲弊している店員さんを見ると、申し訳ない気がして現金やカードで支払うときがある。現金払いのほうが店員さんの負担が少ないし、熟練のレジ打ちの人ならば小銭を扱っても、PayPayの半分以下の時間で終わるからだ。

 ただ、このくらいの渋滞はまだマシかもしれない。先日、ダイエー系列「foodium(フーディアム)」を利用したら、“PayPay事故”ともいうべき悲惨な光景を目の当たりにした。

 筆者が訪れた店舗では、店員が商品バーコードを読み込んで、支払いは客が精算機で行う、いわゆる「セミセルフレジ」が導入されていた。このシステムを最近多くのスーパーが導入しているのは、店員の負担軽減はもちろん、客側もレジ待ち時間にイライラしなくて済むことが大きい。

 店員はバーコードを読むだけなので、客が精算機でお会計をしている間に次の客をさばくことができる。そのため、1つのレジに精算機が2台置かれることも少なくない。

 だが、そんな店員にも客にも便利なシステムが、PayPay利用者によって「機能不全」に陥ってしまう。ある客が精算機の前でPayPayで支払おうとしていたところ、なんと驚くべきことが起きた。店員がレジを放ったらかしにして、精算機で会計をする客の隣にまでついてきたのだ。

 店員は自分の首から下げているIDカードバーコードを、精算機のスキャナーでピッと読み込む。次にレジで印刷されたレシートを注意深く見ながら、手に持った端末に金額を打ち込んで、やはり間違いがないか指さし確認をする。

 そして、端末を客のスマホにかざして、カメラQRコードを読み込む。すると、程なくして「ペイペイ」という音がして、精算機から明細が印刷される。それを精算機から印刷されたレシートと合わせてステイプラーで止めて、「ありがとうございました」と客に手渡していた。マルエツでやっていたアクションを今度はわざわざセルフレジの前まで移動してやっているのだ。

 もちろん、この一連のプロセスの間、次の客はレジの前で「ぼーっ」と待っているしかない。レジの列の中には、明らかに不機嫌そうにそのやりとりを見つめてため息をつく人、チッと舌打ちをして別のレジの列に移動する人もいた。レジ渋滞どころか、モンスタークレーマーが現れて怒鳴り散らすなどして完全にレジがストップするような感じで、「事故」が起きたようなムードが漂っていたのだ。

イオングループの存在

 さて、そこでみなさんが気になるのは、レジ前に「PayPayご利用できます」と明記されているのに、なぜこんなにも多くの人々が「不幸」になってしまうのかということではないか。

 いろいろなご意見があるだろうが、個人的にはこれらのスーパーが「イオングループ」であることが大きいのではないか、と考えている。

 首都圏で主に展開しているマルエツは、2015年よりイオングループに入っている。フーディアムも同様で、ダイエーグループ自体が15年からイオングループに入っている。イオングループにはWAONAEON Payという独自の決済システムがある。

 そうなればPayPayよりも自社のシステムを使ってほしいと考えるのは当然だろう。つまり、イオングループスーパーのレジで渋滞が起きるほどPayPayが使いにくいのは、自社サービスに誘導をするために、意図的に「不便」にしている可能性があるのだ。

 「バカも休み休み言え! “流通の巨人”と呼ばれるイオングループがそんなセコいことをするか。PayPayイオンシステム相性が悪いとかで、たまたまこんな面倒くさいことになっているだけだ」

 そんな風に怒るイオンファンも多いだろう。もちろん、筆者も「お客さま第一」を掲げるイオングループが、そんな客の負担を増やすようなことを意図的にやるわけがないと信じている。が、イオングループが掲げる「デジタル戦略」を聞くと、「もしかしたら」と勘繰ってしまう部分もあるのだ。

 ご存じの方も多いだろうが、イオングループはこれからの成長戦略の柱として「デジタルによる顧客体験」を掲げている。イオングループのDX担当者はメディアの取材にこう答えている。

 「イオングループとして、リアル店とデジタルを融合させたシームレスな体験を顧客に提供していくと(2021~25年度の)中期経営計画でうたっている。2021年9月に提供を開始したアプリ『iAEON(アイイオン)』は、そうした体験を提供するための、グループ共通のタッチポイントという位置付けだ」(日経クロストレンド 22年2月2日

 iAEONはWAONAEON Payといった決済のほか、ポイントや店舗情報が一つになった「イオンのトータルアプリ」である。ただ、実はこのアプリグループにとってそれ以上の大きな役割がある。

 それはグループ内で分散していた顧客情報を一つに集約することだ。

●日本企業のマネジメントルーツ

 実はこれまでイオングループでは、各事業会社が自分たちでアプリポイントサービスを運用し、それぞれが顧客情報を取得して管理していた。その数は少なくとも90以上に上るという。そんな風に分散された顧客IDと購入履歴データなどをグループ内で整理・統合している。そのプラットフォームが、iAEONというわけだ。

 さて、そこで想像していただきたい。このような膨大な情報の集約という巨大プロジェクトを、グループをあげて推進している最中に、その戦略の柱であるiAEONの競合であるPayPayに対して、どんな感情を抱くだろうか。

 使ってほしくない。そう思うのは当然だろう。せっかくiAEONへと誘導しようとしているのに「使いやすいからPayPayでいいや」となってしまったら、顧客情報も集約できない。「シームレスな買い物体験」もへったくれもない。デジタル戦略がガラガラと音を立てて崩壊してしまうのだ。

 とはいえ、露骨に「PayPay使えません、ウチはWAONAEON Payだけです」なんてうたうと、「じゃあ、近くのライフに行くか」という客もいる。というわけで、客は取りこぼしたくない。しかし、あまり積極的にPayPayを使わせたくない。ならば、残る道は「使いにくくさせる」しかないではないか。

 「いやいや、いくらiAEONを普及させたいからって、現場のレジ担当者に重い負担をかけてまでそんなことをしないだろ」という意見もあるだろう。ただ「戦略のために現場が犠牲になる」のは、筆者からすればイオンに限らず、典型的な日本企業の方法論だ。

 筆者のコラム『なぜ「ビッグモーター」で不正が起きたのか レオパレスや大東建託との共通点』の中でも少し触れたが、日本企業のマネジメントルーツ日本軍にある。戦後の日本企業のプロトタイプをつくったのは、戦時中に「産業戦士」と呼ばれた、軍隊式のマネジメントを受けた人々だからだ。

ビッグモーター日本軍の関係

 では、日本企業のルーツである軍隊には、どんな問題点があったのか。軍事のプロたちがよく指摘するのは「戦略を重視して、兵站(へいたん)を軽視する」ということだ。

 日本の戦略は大本営エリートたちが「こうすれば勝てる」「ここを守れば反転攻勢の機会がある」なんて感じで、頭の中で理屈をこねて組み立てた。そして、その戦略を現場は文句を言わずに実行に移すことが求められた。失敗したら生きて戻るな、ということで日本軍では「玉砕」という世界的に見てもかなり異常な軍事命令が下された。それほど「戦略」は重視されたのだ。

 一方、軽視された兵站とは何かというと、補給・輸送・管理という3つの要素から成立つ総合的な軍事業務のことで、戦闘地帯へ後方から必要な食料や物資などを配置するといった活動全般を指す。ちなみに、ビジネスの現場でよく使われる「ロジスティクス」も元々は「兵站(logistics)」という軍事用語を転用したものだ。

 日本の軍隊がロジスティックスを軽視していたのは、世界中の軍事研究家が認める事実だ。軽視したのではなく、米国軍に補給船を破壊されたからだと言い訳をする人も多いが、そもそも兵站にさかれるリソースが不足していた。兵器を運ぶことや弾丸を輸送することばかりに力を入れて、食糧や物資はおざなりにされた。

 太平洋戦争日本軍の死者は軍人・軍属を合わせて約230万人にのぼったが、実は戦闘で亡くなった人は半分ほどで、残りは病死と餓死だということが、戦史研究で明らかになっている。これは「兵站軽視」で進軍地域を広げるという「無謀な拡大戦略」のツケだ。

 そして、この「戦略重視、兵站軽視」は日本軍ルーツに持つ日本企業にもちゃんと受け継がれている。分かりやすい例が、ビッグモーターだ。前社長や副社長がLINEで通達する「数値目標」という戦略は、現場は絶対に死守しないといけない。しかし、“ニンジン”として高い給与は与えられても、戦略を実行に移すだけのロジスティックスは与えられない。

 すると、兵站を打ち切られた現場はどうなるか。精神論にのめり込んで心身を壊したり、自腹営業をしたりという玉砕に走るか、戦略を実行するために「不正」に手を染めていくしかない。拡大戦略でブラック労働と不正が横行したビッグモーターは、兵站無視でアジア全土に支配地域を広げた結果、膨大な餓死者と、捕虜や住民を殺害した戦犯を生んでしまった帝国陸軍と瓜二つだ。

●立派なデジタル戦略を

 こういう日本企業の「戦略のために現場が犠牲になる」という病が引き起こす問題を、筆者はこれまで何度も見てきた。そのせいもあって、PayPay渋滞で疲弊する店員の姿を見ると、iAEONというデジタル戦略を重視するがゆえの犠牲になっているのではないか、と心配してしまうのだ。

 もちろん、筆者の考えすぎかもしれない。そこで、イオングループの「大本営」でデジタル戦略を進めるエリートの皆さんにご判断をしていただきたいと思う。お忍びで店舗に行って、実際にレジでPayPayを使ってみてはいかがだろうか。

 今日もどこかのスーパーで渋滞が起きている。そのたびに、現場のレジ担当者は専用端末を引っ張り出して、キャッシュレス時代とは思えないほど手間をかけて会計をしている。そして、イラつく客に頭を下げ、場合によっては文句を言われることもある。

 デジタル戦略も確かに大事だ。データの活用、グループのスケールメリットを生かしたワンストップでの買い物体験を、ぜひ実現していただきたい。しかし、その前に今この瞬間、現場で働く人々の負担を減らすようなロジスティックスを提供することも立派なデジタル戦略のような気がするのだ。部外者が生意気なことを言って恐縮だが、スーパーコンビニで働く人たちは、社会インフラを支える「宝」だということを、われわれはコロナ禍で思い知ったはずだ。

 日本を代表する巨大小売グループとして現場の負担軽減、ぜひ前向きにご検討いただきたい。

(窪田順生)

スーパーで「PayPay渋滞」が起きているワケ

(出典 news.nicovideo.jp)

201609E

201609E

根拠ない想像と脱線のせいで何が言いたいのかさっぱりわかんない

geso

geso

単にレジのハンドスキャナーで客のコードをスキャンしてレジのモニター数回タッチするだけで清算、終わるディスカウントストアーやスーパーは普通にあるのに、それより面倒くさいイオンを褒め上げるだけで全く触れないのは不自然だよなあ?イオングループを持ち上げるためだけの提灯記事確定です。ダシにつかわれたマルエツは怒っていいぞ

geso

geso

ってきちんと読んだら全然褒めてなかったわw

CMRY

CMRY

電子マネーは使わんが、ワオ-ンと言う決済音は好きだな。

ピックアップ記事

Twitterでフォローしよう

おすすめの記事