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たった6分でストレスを68%も削減する…音楽鑑賞、散歩、コーヒー、ゲームよりも効果的なストレス解消法 | ニコニコニュース

健康で豊かな生活にはなにが必要なのか。東京大学特任研究員の安川新一郎さんは「読書量は、年収、長寿、ストレス軽減との相関がある。米イェール大学の調査によると、週に3.5時間まで読書をするグループは、向こう12年で約17%死亡リスクが低く、平均して2年ほど長生きしている」という――。

※本稿は、安川新一郎『ブレイン・ワークアウト』(KADOKAWA)の一部を再編集したものです。

■47.3%の日本人が「月に1冊も本を読んでいない」

私達は、メールチャット、記事等、様々なテキスト情報を日々受け取っています。データ量から推定すると平均的な人で1日10万文字、新書1冊程度の文字情報に私達は日常的に触れています。

しかしながら読書についての統計情報(平成30年度「国語に関する世論調査文化庁)によると、読書量が以前に比べて減っているか増えているかという質問に対する回答は、

・読書量は減っている:67.3%
・読書量はそれほど変わっていない:24.3%
・読書量は増えている:7.1%
・分からない:1.2%

となっており、また、47.3%の日本人が「月に1冊も本を読んでいない」状況です。

私は昔から読書が好きなほうですが、昔ほど集中して本が読めなくなったと感じる時期がありました。ただし独立してからは、年間平均100冊程度の本を努力して読む習慣を取り戻すようにしました。

■名著には大抵の問題の答えが書いてある

1つには、先端技術の社会実装支援を行う投資とコンサルティング事業を始めたこと、それらの投資判断やコンサルティングのために、これからのテクノロジーや未来の世界はどうなっていくかについて、包括的に勉強する必要があったからです。

未来の世界を予測するためには、人類学、人口統計学、政治学、経済学、経営学、AIやバイオ等の先端テクノロジー等、様々な分野について理解する必要があります。また、世界認識の為の思考のフレームとして哲学思想の大きな流れなども時に把握する必要があります。

このように勉強のための読書を続けていて私が驚いたのは、20003000円程の名著に出会うことができれば、大抵の問題の答えはそこに書いてあるということです。

また、同じテーマについて3~4冊の本を読み込めば、その領域の研究者にはなれなくても、その領域における重要な課題や研究内容が、他人に説明できる程度には理解でき、ビジネスや投資判断上、とても役に立つことがわかりました。

単純に、会社員時代の私は、それらの本を読む時間を確保していなかった(あるいは、できなかった)だけなのです。

■本を読んでいる人はお金持ちになる

富裕層や世界のリーダーが、多忙な時間を割いてでも読書時間を確保する理由は、これらの理由からです。

また、後で解説するように、意識的な知識の獲得、帰納的分析、批判的思考、想像力、そして熟考する力などは、集中して書籍を読み込むことによってしか得られないことを知っているからでしょう。

読書量と年収の相関を示すデータもあり、例えば『プレジデント』の調査では、「月4冊以上本を読む」と答えた人の割合は、

・年収1500万円以上:34.6%
・年収800万円台:17.8%
・年収500万円台:17%

となったというデータがあります。単に年収が多い程、本に時間とお金を使う余裕があるだけではないか、という指摘もあると思いますが、実は本に使うお金は限られています。1冊2000円の本を月に2冊、つまり年間24冊読んでも、年間5万円にもなりません。飲み会や趣味にもっとお金を使っている人は多いのではないでしょうか。お金持ちは余裕があるから本もたくさん買って読んでいるという相関関係ではなく、本を買って読んでいる人はお金持ちになるという深い因果関係があると思われます。

■読書習慣で長寿とメンタルヘルスが約束される

また、アメリカのイェール大学の12年間にも及ぶ調査では、週に3.5時間まで読書をするグループは、向こう12年で17%ほど死亡リスクが低かったこと、また平均して2年ほど長生きであったことが統計で明らかになりました。

読書などの精神を刺激する活動を続けていけば、認知低下が32%遅くなること(米・ラッシュ大学メディカルセンター研究調査)や、たった6分の読書がストレスを68%も削減する効果があり、音楽鑑賞や散歩、コーヒーゲームよりも効果的であること(英・サセックス大学)等も、研究の結果としてわかっています。

定期的な読書は、集中して脳を鍛える行為であると共に、必然的に暴飲暴食を避け、速やかな入眠に導く生活習慣が生まれるといった点も、長寿に寄与するのかもしれません。長寿とメンタルヘルスと高年収が約束されるなら、誰もが読書習慣を身に付けない訳にはいきません。

■読む力は後天的に取得する必要がある

人類史を振り返ると、私達は印刷革命による大量の書籍によって、近代社会形成に不可欠な批判的思考や科学的思考のための「読書モード」(筆者の考える「脳のモード」の一つ)を手にしました。数時間集中して、1つのテーマに関することについて自らも思考しながら、静かに読み進めることで、1人の著者が多くの時間をかけた思考の真髄を、自らの大脳新皮質の長期記憶にインストールするのが「読書モード」です。

口語を話し、理解し、考えるための言語回路については、最小限の助けで学習するための遺伝子がありますが、文字を読むという読字回路は、あくまで私達は後天的に学ぶ必要があります。識字率99%とされる日本のような国もあれば、教育機関が充実していない南スーダン(男48%、女47%)やアフガニスタン(男74%、女56%)のような識字率が50%前後の国もあるのはそのためです。

読む力が(親の読書傾向や家庭の蔵書量などの)幼少期の環境要因に影響されるのは、読書モードはあくまで後天的に取得する必要があるためです。可塑性の高い脳(脳には長期間、持続的に変化する特徴がある)は、周辺環境と学習習慣によって、その読字回路をアップグレードさせているのです。

■短期記憶と長期記憶の往復による自己学習

認知神経科学の専門家でディスレクシア(識字障害)の研究者でもあるメアリアン・ウルフ教授は、読字回路は、何を読むか(書記形態と内容)、どう読むか(印刷物かデジタル媒体か)、そしてどう回路を形成するか(その教育方法)に大きな影響を受けると指摘しています。

脳の記憶は、最大9つの情報の断片を数十秒保持する短期記憶とほぼ無限大の長期記憶に分かれる「二重貯蔵モデル」から成り立っています。そしてその前者から後者への情報の移動を、脳の短期記憶の作業記憶(ワーキングメモリー)という機能が担っています。作業記憶は大脳と呼ばれる巨大な容量を持つ長期記憶とは異なり、限られた情報量しか処理できません。

私達も、講演や会議で良く知らない専門用語があまりにたくさん出てくると思考がついていかないことがあると思いますが、それは私達の作業記憶において「認知的負荷」が高すぎて(つまり、「難しい言葉が多い」「早口過ぎる」など)、容量オーバーが起きているためです。

読書モードでは静かに黙読することで、自分のペースで、時には行きつ戻りつし、文字から得られる情報を咀嚼してから、長期記憶に移動させることができます。そしてそれによって、作業記憶の容量そのものも拡張させ、深く思考しながら読み進めていく力を鍛えていきます。口語言語が遺伝の力を借りて上達できるのに対して、読書モードはこのように後天的かつ意識的に鍛えていく必要があります。

■まず入門書的な本を買って、ざっと目を通す

――まずはテーマを決める

読書が良いことはわかっている、そうは言っても「何を読んだらよいのかわからない」「自分が読むべき本をどう探せば良いのか」といった悩みをよく聞きます。

良い本との出会いは、良い人との出会いと同じく突然です。読む時間があってもなくても、まずは興味があるテーマの本を買って、本棚に並べるところから始めます。まずぼんやりとでも自分が興味関心を持ち、時間とお金を投資したいテーマを見つけます。

会いたい人を探すのと、読むべき本を探す行為は似ています。知り合いたい人を探す時に、その人を知っていそうな、人脈豊富な人に最初に当たってみることがあるでしょう。それと同じく、関心のあるテーマについてわかりやすく俯瞰(ふかん)的な全体図を解説してくれている入門書的な本(“ガイドブック”)をまず買ってきて、ざっと目を通すのです。「すぐわかる○○」のようなタイトルで入門書であることがわかりやすい本もあれば、タイトルからは想像がつかないが全体を俯瞰するのにとても良い本もあります。

やはり傾向としては、多読家で過去に俯瞰的な視点でまとめた書籍を執筆している著者の書いた本や、研究者ではなくビジネスパーソンの読書家が独学でまとめた本などが参考になることが多いです。また、自分の興味関心と経歴が重なる人の書評は特に参考にします。

■本は「テキストが書かれて製本までされたノート」

私自身は、テーマに応じて、

・日本文化、歴史、国家のあり方全般については松岡正剛氏
・歴史や哲学的思考については、出口治明氏
資本主義経済については、『ファイナンスの哲学』を書かれた堀内勉氏
・AI、ITについては『WIRED』の関係者(『WIRED』の本の特集等は、今の旬のテーマと古典名著を上手く結びつけて紹介していることが多いです)

などの方々の著作を参考にしています。

“ガイドブック”で紹介されている著者とその考えが面白そうであれば、巻末に掲載されている参考文献を参照したり、ネット書店で著者名を検索してどんどん購入していきます。

実は、この“ガイドブック”から書籍を探してネット書店などで購入するのは、効率的であるだけでなく、実は低コストです。特定のテーマ参考文献は、中古でしか販売していないものも多く、1~200円+送料300円程度で入手することもできます。しかも、ピンポイントで知りたい内容が書かれた名著が、早ければ翌日に送られてきます。

私は本を、「テキストが書かれて製本までされたノート」であると捉えています。線を引いたり、余白に感想や図を書き込んだりしてボロボロにするので、購入するのが古本であっても全く気にしません。

そうして関心のあるテーマに関して、どんどん購入していくと、その中から数冊、線を引いて何度も読み返すことに値する、テーマに関して鍵となる重要な書籍、“キーブック”に出会います。

■「積読」は合理的な行為である

――とにかく大切なことは、買って積読すること

自分の興味関心について、色々他の人に話していると、読書好きの友人が面白そうな本を紹介してくれることも多いです。読書家の友人に薦められたものは、ほぼその場でポチッとして買って積んでおきます。あとで読んでみた結果、本当に良書だったことがほとんどなのと、その良書についてあとでそれらの読書家の友人と意見交換でき、深い示唆を得られるからです。

気鋭の書評家の永田希氏の『積読こそが完全な読書術である』は今の書籍と読書をめぐる環境を冷静に分析し、どうすれば良いかについて解説した良い本です。今の時代、読みきれていなくても後ろめたさを感じずに本をまず買って「積読する」という行為が、いかに合理的で必要なことかを説いてくれています。

■まずは良い「ガイドブック」を見つける

永田氏が説くのは、まず、①多くの情報がフローとして供給されてくる時代、どうしても結果として「読みたい」「観たい」「体験したい」気持ちだけが積まれていく状況をやむを得ない現状として認めることです。

次に、②自分自身の知の生態系を自律的に整えていくための「ビオトープ(生態系)的積読環境」を構築する考え方です。要するに、順番に買った本を読み切ってから次の本に行くのではなく、とりあえず興味を持った本を買って積んでいって、まず自分のための文化資本を蓄積することが、情報濁流に押し流されないためにも大切だと永田氏は説いているわけです。

書評家でもある氏は積読の妥当性について説くと同時に、読書について考えるに当たって私が参考にした、『本を読む本』(アドラー)、『読書について』(ショウペンハウエル)などの本の要旨も紹介してくれています。そういう意味では、この本は私が「知的生産における読書モードの役割」について考えるに当たって最適な“ガイドブック”になりました。時間がなく指導教官もいないビジネスパーソンの独学においては、まずは良い“ガイドブック”を見つけることが大切です。

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安川 新一郎(やすかわ・しんいちろう)
東京大学未来ビジョン研究センター特任研究員
グレートジャーニー代表。1991年一橋大学経済学部を卒業後、マッキンゼー・アンド・カンパニーへ入社、東京支社・シカゴ支社に勤務。99年、ソフトバンクに社長室長として入社、執行役員本部長等を歴任。2016年、社会課題を解決するコレクティブインパクト投資と未来社会実現のための企業支援に向けグレートジャーニーを創業。これまで東京都顧問、大阪府・市特別参与、内閣官房政府CIO補佐官、Well-being for Planet Earth共同創業者兼特別参与等、行政の現場や公益財団活動からの社会変革も模索している。

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※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Marrypopins

(出典 news.nicovideo.jp)

ゲスト

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読書が大事だという話には同意する。しかし、読書がストレスを解消したり長寿とメンタルヘルスを約束したりといった話は、また別次元の話ではないか。そもそも、読書の「何」がこういう効果を生むのか不明だ。文字を読むことではなく、本を読むために落ち着いた環境で多くの時間を割くことが効果を生んでいる可能性だってある。それが不明なのに安易に読書不足を問題とするのはどうなのか

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