「長い箸」でご飯を食べると美味しく感じ、さらにダイエット効果がある | ニコニコニュース
食器を変えたらご飯が美味しく感じるようになったということはないでしょうか?
それは勘違いではないようです。
いくつかの研究では、皿の大きさや形、配色などの要素から料理の味の印象や満足感に影響が出ることが報告されています。
そして、台湾の明新科技大学のHung-Ming Lin氏(フンミン・リン)らの研究では、使う箸の長さによって食事の印象に変化が起きることを報告しているのです。
彼らの研究によると短い箸(19 cm)と長い箸(23 cm)を使ったとき、長い箸の方が咀嚼数が増え、より美味しいと感じ、同じ食材をまた購入して食べたいと強く思う傾向があったといいます。
こうした効果はどのような理由から生じるのでしょうか?
今回の研究の詳細は、学術誌「Psychological Reports: Employment Psychology & Marketing」にて2015年3月6日に掲載されています。
目次
- 長い箸 vs 短い箸 箸の長さは料理の味に影響するのか?
- 長い箸は食品の美味しさと商品の購買意欲を高める
- 店で長い箸を出すと食事客は少ない量で満足する
長い箸 vs 短い箸 箸の長さは料理の味に影響するのか?
同じようなお腹の空き具合で、同じような分量の食事をしても、満足感が大きく異なるときがないでしょうか?
私たちは常に自分の食べた量を正確に把握しているわけではありません。
そこで、私たちは皿の大きさなどの別の手がかりを用いて、自分がどれだけ食べたのかを把握する傾向を持っています。
大きい皿と小さい皿では、同じ量の料理でも、小さい皿に盛られた料理は多く感じるでしょう。
食べた量の手がかりになるのは皿だけではありません。皿のほかにスプーンやフォーク、ストローや箸などがあります。
たとえば、細いストローよりも太いストローで飲んだ方が、長く飲み物を飲んでいたと感じ、大きいスプーンで食べると、量が少なく感じ、食べ過ぎてしまうことが分かっています。
これら食べ物を口に運ぶときに使う食器に関する研究は少数行われているものの、箸が食事に与える影響はあまり分かっていません。
食事は人々の生活において重要な役割を持っているだけでなく、健康と主観的幸福感に多大な影響を与えます。
それゆえ、食器の物理的な特徴と食べ物の摂取量の関係性を理解することは、食器の生産とその使用の向上に関する情報提供として不可欠です。
そこで、研究チームは箸の長さに焦点を絞り、感じる美味しさや噛む回数などの心理・行動面への影響を検討しています。
実験に参加したのは、大学生78名です。
研究者らは、参加者を①長い箸(23 cm)を使う人と、②短い箸(19 cm)を使う人の2つのグループに分け、ご飯(80 g)を食べてもらいました。
そして食べ終えた後に、ご飯の香り、粘り気、硬さ、好感度、そしてもし購入するならどれだけ買いたいと思うかの評価をしてもらいました。
また箸の使いやすさが評価に影響する可能性を考慮し、箸の使用のしやすさの評価も行っています。
さて箸の長さによってご飯の美味しさや食べる時間に差はあったのでしょうか。
長い箸は食品の美味しさと商品の購買意欲を高める
実験の結果、長い箸を使った人は、ご飯をより美味しいと感じ、購入してまた食べたいと強く思う傾向がありました。
次に、短い箸を使う場合と比較して、長い箸を使ったときには、ご飯を食べ終わるまでの時間が長く、噛む回数が多いこともわかっています。
これは長い箸の方が食事に手間取ってしまうためと考えられますが、使用者は箸の長さで不便さを感じたり、使いやすさが変わったという印象は受けていませんでした。
研究チームは、長い箸がご飯を美味しく感じさせた大きな要因はこの「食事時間の変化」だと述べています。
箸が長いと食べるペースが遅くなり、よりじっくりと味わうため、ご飯がおいしく感じていたということです。
これらの結果から、他の食器が食体験に影響を与えるのと同様に、箸も味覚や食事の満足度を変える効果を持っていると言えるでしょう。
調べてみると、普段よく手にするコンビニやスーパーでもらう箸の長さは約19-20 cmのものが多いようです。
これらの短い箸を使うのではなく、普段から23 cmの自分専用の箸を持ち歩くことで、食事の満足度を高めることができるかもしれません。
店で長い箸を出すと食事客は少ない量で満足する
今回の研究の限界は、参加者が箸を使って食べたのは80 gのご飯のみであり、実際の飲食の場面で同様の現象が生じるかはわからないという点でした。
そこでフンミン氏らは研究チームはこの疑問点に答えを出すため、台湾の15年以上続いている、人気の中国料理店で、8週間に渡る実験を行っています。
実験期間中のランチ・ディナーの提供時に、短い箸(19 cm)と長い箸(23 cm)を、食事客にランダムに提供しました。
そして提供前後の食事の重さを測定し、食事で用いる箸の長さによって、食事客の摂食行動が変化するかを検討しています。
実験の結果、長い箸を使った客は、食べるペースが遅くなり、少ない量の料理で満足感を得ていたことが分かりました。
これらの結果は、長い箸を使うことで少ない量の料理で満足することができ、食べ過ぎの防止につながる可能性を示唆しています。
研究チームは結果を受け以下のように述べています。
「食べすぎは肥満や他の健康問題を引き起こす。本結果は、長い箸を使うことで食事量をコントロールし、食べすぎを防ぐ具体的な方法を提案している。」
「たとえば、レストランの場合であれば、長い箸を提供することで、少ない量の料理で顧客を満足させることができるかもしれない。さらに体重を減らしたいと考えている人は、日々の食事で長い箸を使うことで、全体の摂取量を減らすことができるかもしれない。」
この結果は、長い箸が食事の体験を向上させる効果が現実場面でも機能する1つの証拠であり、長い箸を使うことで体重を減らすことができる可能性を示唆しています。
今回の記事を読んだことを機会にダイエットをしている人は普段使用する箸よりも長めの自分専用の箸を購入してみるのはいかがでしょうか。