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「上野動物園モノレール」は、なぜ廃止が決定したのか | ニコニコニュース

 「日本初のモノレール」として知られる、上野動物園モノレール上野懸垂線」(以下、上野動物園モノレール)。1957年12月に開業し、上野動物園の東園と西園を結んできた。走行距離は約0.3キロ。「それくらいなら、歩けばいいじゃないか」と思う程度の距離だ。

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 両園の間には「いそっぷ橋」という歩行者用の橋も備えられている。ちなみに、東園と西園に分かれているのは、園内を公道が横切っているからである。

 そんな短距離なのに、なぜモノレールがあったの? と疑問に思う人も多いかもしれない。

●短距離ゆえに……運休は何度も

 「なくてもいい」という考えが上野動物園モノレールを運営する東京都交通局になかったのか。

 同モノレールは過去に長期の運休を3回、ほかにも車両故障などで運転を休止している。2019年11月に車両や設備を更新するため運転を休止し、以降23年11月現在も運転を行っていない。なお、代替のバスは運行されている。

 そんな中、東京都交通局は23年7月に鉄道事業の廃止届を国土交通大臣に提出した。

 東京都内でよく知られるモノレールに、東京モノレールがある。開業したのは、1964年9月。この年に行われた東京五輪に合わせ、羽田空港へのアクセス向上を図るためにつくられたものだった。

 上野動物園モノレールができたのは、それよりも前の1957年昭和32年のことだ。そのあたりから歴史や存在意義を考えてみたい。

●試行的に運行された上野動物園モノレール

 繰り返しになるが、上野動物園モノレールは日本初のモノレールである。となると、実験的な要素もたぶんにあると考えていい。当時は都電(東京都電車)の全盛期で、かつ太平洋戦争の終了から12年が経ち、戦争からの復興も進み、日本自体が経済成長しようとしていたタイミングだ。

 そんな時代に、都市部の道路は混雑してきた。路面電車路線バスへの影響も大きくなることが予想され、地下鉄の計画を少しずつ進めてきたものの、それほどでもない場所はどうするか? という課題が出てきた。

 だが、地下鉄にせよ地上鉄道にせよ、2本のレールの上を走る鉄道には問題点があった。急勾配や急曲線に弱く、高架化にはお金がかかり、線路を引く際の自由度が低いことだ。

 そこで注目を集めたのが、モノレールである。自由に路線を引くことができ、勾配や曲線もなんのその、高架線も比較的安い。そのあたりの実験的な意味合いもあり、上野動物園モノレールがつくられたといえる。

 上野動物園モノレールは懸垂式でつくられ1962年3月には跨座(こざ)式で犬山遊園駅から日本モンキーパーク内の動物園駅を結ぶ「モンキーパークモノレール線」(犬山モノレール)がつくられた。当時はモノレール試行錯誤している時代だったといえる。60年代には各地にモノレールがつくられたが、多くは廃止されている。

 上野動物園モノレールで実験し、他の地域でもモノレールを中量交通機関として実験的に建設。実際に使えるかどうかを試していたのだろう。多くは遊園地動物園に関連するもので、試験的に導入するのに適していたといえる。当時は国内で技術開発をしたり、外国から技術を導入したり、さまざまなタイプモノレールがあった。

●実用性のあるモノレールが各地に

 1970年3月には、「江の島線」(湘南モノレール)が開業した。同モノレールは、大船駅西鎌倉駅を結ぶものである。その後80年代から90年代にかけて、都市型のモノレールが各地に誕生。人々の生活の足としての中量交通機関が、モノレールとして各地で導入されるようになった。

 2003年8月には、沖縄戦により県内の鉄道が消滅した沖縄県でもモノレールが導入され、地域の公共交通は大きく変わった。

 モノレールは、地下鉄を導入するほどではないエリアで、鉄道に相当する定時性の高い公共交通を導入する際に採用されるようになった。また、新交通システムも同様の理由で採用される傾向がある。

 モノレールができることで、定時性の高い公共交通機関の利便性を多くの人が気軽に享受できるようになり、公共交通はより身近なものになっていった。特に急曲線や急勾配への対処が必要なエリアでの公共交通として、非常に役に立つものになっていった。

 上野動物園モノレールは、その先駆けとして存在したといえる。

モノレールの未来は?

 今後も、モノレールの路線は延伸されていく。東京都多摩地域の丘陵地帯を行き来する「多摩都市モノレール線」には、延伸計画がある。上北台より先、箱根ヶ崎方面に向かう路線の計画や、多摩センターより先、町田に向かう計画が進んでいる。

 同エリアの公共交通は現在バスが中心で、しかも時間がかかるという問題点を抱えている。モノレールが開業することで、輸送の安定が確保され、かつ多くの人を運び、交通の利便性向上も期待できる。

 「大阪モノレール本線」では、門真市から瓜生堂(仮称)への延伸が進められている。門真市では京阪電気鉄道京阪本線と接続し、瓜生堂では近鉄奈良線と接続する。大阪モノレールは大阪の郊外を環状に結ぶ路線であり、伊丹空港へのアクセス路線ともなっている。

 大量の人を都市部に向かわせることでなければ、モノレールは高架路線も敷設しやすく、線形の自由度も高いのでつくりやすい。そのメリットを生かすことで、これらの新規路線建設の促進にも役立っている。

 このようにモノレールは通常の鉄道線路にはない特徴があって、これまで線路を敷くことができなかった場所にも鉄道路線を設けることを実現した。その先駆けとなったのが、上野動物園モノレールである。実験的に導入する意味合いで上野動物園モノレールが設けられ、その実験は成功したのだ。

上野動物園モノレールはどうなるか

 今後、上野動物園モノレールはどうなるのか? 現在は、代替のバスが走っている。

 東京都建設局は、22年11月に「恩賜上野動物園新たな乗り物の整備に関する基本方針」を発表し、民間事業者と連携しながら新たな乗り物の整備を着実に進めるとした。バリアフリーに配慮し、上野動物園モノレールと同等の輸送量を確保。乗り物としての楽しさを備えるなど動物園の魅力を高めるものにするとのことだ。

 また省エネ性能を確保し、メンテナンス性に優れた機器を導入。維持管理や将来コストの負担に配慮した乗り物としたい考えを示している。

 上野動物園モノレールメンテナンスなどにより何度も運休していたことから、そういった事態にならないことを意識していると考えていい。23年度中に提案書を受付、審査し、整備事業者を決定する予定だ。26年度内に新たな乗り物ができるという。

 実験的な役割は運行を休止している上野動物園モノレールで終え、今後は成熟した技術を基にした交通手段に変化するのだろう。どんな乗り物になるかを期待したい。

(小林拓矢)

上野動物園のモノレール なぜ廃止に?

(出典 news.nicovideo.jp)

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