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50万円超かかり、自分で注射を打つのは「怖かった」けど…卵子凍結を「やって良かった」と思える理由 | ニコニコニュース

近年、耳にすることも多くなった「卵子凍結」という言葉。その名の通り、卵巣から採取した卵子を将来の妊娠に備えて凍結保存することです。

子供を望んでいるものの、様々な事情によりすぐには妊娠が難しい人にとって、卵子凍結は将来の妊娠に備えることができる選択肢の一つ。今回は実際に卵子凍結を受けた都内在住のOL・Aさんに話を聞きました。

実際に卵子凍結を受けた都内在住のOL・Aさん

◆離婚をきっかけに卵子凍結を決意
都内でOLとして働く30代前半のAさんは、一度は結婚を経験したものの、価値観の違いで離婚。恋愛活動を新たに開始した際に、卵子凍結への思いが強まったと言います。

「すぐに理想的な相手が見つかるとは思っていなかったので、離婚後から卵子凍結については視野に入れていました。けれど、金銭的な問題もあるので、一旦保留にしていたんです。ただ、実際に恋愛活動を開始すると、世間的な“女は30歳を過ぎたら婚活市場で価値がなくなる”なんていう煽り言葉にもすごく影響を受けてどんどん気持ちも追い詰められてしまって…。そんな時に『気持ちに余裕を持とう』と思って卵子凍結を決意しました」

女性が一生で排卵する卵子の数は生まれた時から決まっており、年齢とともに減少する一方で、増加することはありません。

結婚にタイムリミットはありませんが、出産にはタイムリミットがある…というのは、出産のリスクの話だけではなく、妊娠の可能性の高さからも言えるのです。

◆自分で注射するのは「めちゃくちゃ怖かった」
卵子凍結の流れは大きく分けて3つ。まず最初に診察と検査で、血液検査、超音波検査、AMH検査(卵巣予備能検査)などを行い、妊娠・卵子凍結が可能な体かどうかを調べます。

次に質のいい卵子を複数採取するために排卵誘発剤を使用し、多くの卵子を成熟させます。そのために、月経開始から3日以内に病院へ来院し、そこから毎日排卵誘発剤を決まった時間に自分で注射します。

排卵誘発剤の注射

最後に、排卵誘発剤を打ったあとの卵胞の育ち方を見て、採取の日時を決定。(もう少し成熟させた方がいい場合は、排卵誘発剤を打つ期間も長くなります)当日は卵巣の中の卵胞に針を刺し、卵胞液とともに卵子を吸引・採取するという流れです。

Aさんは「月経開始から3日以内に病院へ来院しなければならないのですが、予約が取れなかったり、自分の予定と合わなかったりで難しかったりする人もいるそうです。生理不順だとタイミングが難しいのでそこも要相談。予約が取りやすいか、スケジュールの融通がきくかも確認したほうがいいです」と自身の経験からアドバイス

排卵誘発剤の注射

自分で注射を打つことに怖さはなかったのかと尋ねると「最初は髪の毛くらいの細さの針なので、多少は怖いけど、別に痛くも痒くもなかったです。ただ、“採取の16時間前”など、決まった時間ぴったりに打たなければいけない最後の注射は、今までとは全く違う太さと長さの針だったので、さすがにすごく怖かったです。

『こんな太くて長い針の注射を自分で打つの?』『失敗したらどうしよう』って不安で…。でも覚悟を決めて、針を打つ部分をキンキンに冷やして頑張って打ちました。打ったら別に痛くもなんともなかったんですけどね」と明かしてくれました。

◆安くない金額、それでも踏み切れた理由
通院、自身での排卵誘発剤の注射、総合的な費用が30万~50万円ほどと、決してハードルが低いわけではない卵子凍結。さらに、卵子凍結した人の凍結卵子使用率は約10%、使用した卵子の着床確率も30%とそこまで高くはありません。

2023年9月には東京都が都内在住の18歳から39歳の健康的な女性に「当年20万円+2万円×5年で最大30万円」を支給すると発表。自己負担額が0になるわけではありません。

それでも、助成金の条件となる説明会には7000人超からの応募が集まり、卵子凍結が注目されているのは、“未来を生きる自分の選択肢を増やす”ことができるから。

「金額も決して安くはないので、ためらわなかったということはないです。ただ、50万円使ってヨーロッパへ旅行に行ったり、ハイブランドのバッグを買ったりすることって今じゃなくて、50歳、60歳になってもできるじゃないですか。でも、50歳になってから“やっぱり子供が欲しい”と思っても難しい。それを考えると、もちろん妊娠年齢は早いほうが安全ではありますが、今後、子供が欲しいとなった時のために、卵子を残しておくって選択は自分にとってすごく良いお金の使い方なのかなと思ったんです」

◆未来を生きる自分の選択肢を増やす
そう答えるAさんに、改めて「卵子凍結をして良かったですか?」と尋ねると、「良かったとはすごく思います。私はすごく気持ちが楽になりました」と返してくれた。

「身体への負担やリスクはもちろんあるので、それを調べた上で判断されるなら、人にすすめられない理由はないと思います。将来子どもが欲しいと思ってるけど今は未婚の人も、卵子凍結をしておくだけで“焦らなくていい”要素のひとつになるし、何より自分のためにもなる。気になる人は、まずはAMHの検査に行くのもいいと思います。自分が妊娠できる身体なのか、婦人科系の病気を患っていないかを、きちんと知ることってこれからの人生を考えるのにすごく大切なことなので」

女性の人生を考えた時、キャリアと結婚・出産は天秤に掛けられがちです。でも、どちらか1つを選ばなければいけないなんてことはありません。

今回、記事の監修をしてくれたにせきレディースクリニックの友影九樹先生よると「母体年齢の適齢期も考慮する必要があるのは事実で、合併症妊娠率もあがるので、35歳までに初出産を終えるのがベター」とのこと。卵子の減少だけでなく、母体のことも考慮する必要はありそうです。

しかし、パートナーがいてもいなくても、今はまだ子どもを考えられなくても、卵子凍結をきっかけに自分の体について知ることは、Aさんが話してくれたように、人生を考えるのにすごく大切なきっかけになることには間違いなさそうです。

<取材・文/瑞姫 監修/友影九樹(せきレディースクリニック)>

【友影九樹先生】
岐阜県関市にある、せきレディースクリニックの院長。著書『マタニティハッピーブック』(幻冬社)は、産婦人科専門医の目線で妊娠、出産に関する疑問や不安を優しく解消していく内容で、妊娠したらカバンにいつも入れておきたいお守りブック

【瑞姫】1994年生まれ。奈良県出身。エンタメメディアでの芸能ライターとしての経験を経て、フリーランスライターに。主にエンタメ・トレンド系の取材・インタビューを中心に、恋愛コラムの執筆を行っている。フォロワー数4.5万人のTwitterでは恋愛・美容系について発信する、インフルエンサーとしても活動中。漫画と散歩と猫が好き。
Twitter@mizuki32k

実際に卵子凍結を受けた都内在住のOL・Aさん

(出典 news.nicovideo.jp)

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