172万人の「外国人労働者」に円安直撃
厚生労働省『労働経済動向調査(令和4年8月)の概況』によると、2022年8月1日現在の「正社員等労働者過不足判断D.I」は、調査産業計で+41ポイントと、2011年8月調査から45期連続して不足超過となりました。業界別では「建設業」「運輸業、郵便業」「医療、福祉」で人手不足感が高くなっています。
【産業別正社員等労働者過不足状況及び労働者過不足判断D.I.】
「建設業」58/1/57
「運輸業、郵便業」55/2/53
「医療、福祉」56/3/53
「学術研究、専門・技術サービス業」45/1/44
「製造業」46/3/43
「生活関連サービス業、娯楽業」46/3/43
「サービス業(他に分類されないもの)」44/3/41
「情報通信業」41/3/38
「不動産業、物品賃貸業」39/1/38
「宿泊業、飲食サービス業」35/4/31
「卸売業、小売業」26/5/21
「金融業、保険業」13/3/10
出所:厚生労働省『労働経済動向調査(令和4年8月)の概況』
※数値左から、不足、過剰、D.I(不足-過剰)
そんな慢性的な人手不足を解消する方法として期待されているのが、外国人労働者。厚生労働省『外国人雇用状況の届出状況について(令和3年10月末現在の結果)』によると、外国人労働者数は172万7,221人。そのなかで最も多いのが「ベトナム人」で45.3万人。全体の26.2%を占めています。続くのが「中国人(香港、マカオを含む)」で39.7万人で、全体の23.0%。「フィリピン人」19.1万人、「ブラジル人」13.4万人、「ネパール人」9.8万人と続きます。
ただここにきて急激に進む円安によって、外国労働者の日本離れが加速するという指摘も。人材を供給する国自体で経済成長が進み、人件費が上昇。わざわざ賃金の安い日本に来るメリットが薄れてきているわけです。
円安で国内回帰の動き…中小企業にとってはチャンスか
また人材不足から、外国人労働者を頼る国は日本以外にもあり、そんな国々との人材獲得競争も激しさを増しています。
OECDによると、主要国の中で最も最低賃金が高いのは「ルクセンブルク」。「オーストラリア」「ニュージーランド」「フランス」「アイルランド」と続きます。「日本」は調査対象32ヵ国中11位。上位ではあるものの、先進国の中では決して賃金は高くなく、日本で働くメリットはそれほど強いものではないのです。
【世界主要国「最低賃金」上位10ヵ国】
1位「ルクセンブルク」13.79 米ドル
2位「オーストラリア」13.53 米ドル
3位「ニュージーランド」12.06米ドル
5位「アイルランド」11.51米ドル
6位「イギリス」11.01米ドル
7位「オランダ」10.95米ドル
8位「ベルギー」10.68米ドル
9位「ドイツ」10.67米ドル
10位「カナダ」10.18米ドル
出所:OECD(2020年)
一方で円安が進むなか、大企業のなかには国内回帰の動きも。円安や現地の人件費上昇により、海外生産のメリットが薄れてきていることがひとつの要因です。海外での日本企業の影響力低下という側面もいわれていますが、大企業から発注を受ける国内の中小企業にとっては、千載一遇のチャンスだといえるでしょう。日本を離れる外国人労働者に代わって……そんな流れも期待できます。
しかし、ただ口を開けてまっていればいいという甘い話ではありません。国内の中小企業のほうが高い生産性を誇らなければ、発注側となる大企業もメリットがありません。そのなかで行うべきは、いわゆるDX。企業がデジタル技術を用いて、業務フローの改善や新たなビジネスモデルの創出、レガシーシステムからの脱却などの変革を実現するもので、労働生産性の低さが指摘されている日本企業が迅速に進めなければいけないとされています。ここでDXを推し進め、高い生産性を誇れば、チャンスをつかむチャンスが広がるというわけです。
国内回帰の流れが加速するかどうかは未知数ですが、DX推進は中小企業にとっても緊急課題。外国人労働者に頼らなくてもよい、効率的な体制への変革が求められています。