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『インボイス』で漫画家の2割が廃業も?危機感抱くエンタメ業界…声優・アニメ・演劇団体と共同記者会見
 インボイス制度が始まると、エンタメ業界のフリーランスのうち2割が廃業するかもしれない――11月14日インボイス制度反対を訴える記者会見を、声優・漫画・アニメ・演劇業界が連携して実施した。

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インボイスは、年収1000万円以下の個人事業主とその発注者に、新たな税負担や事務負担を求める制度だ。さまざまな業界のフリーランスと、彼らに発注している企業が影響を受ける。

会見に参加したのは、「インボイス制度について考えるフリー編集(者)と漫画家の会」代表で、漫画家の由高れおんさん、アニメプロデューサーで、「アニメ業界の未来を考える会」の植田益朗さん(スカイフォール代表)、「インボイス制度を考える演劇人の会」の丸尾聡さん、声優の有志でつくるインボイスに反対する団体「VOICTION」共同代表の岡本麻弥さんなど。

各団体が業界内で個別にアンケートを行ったところ、「インボイスが導入されれば、廃業する可能性がある」と答えた人が、どの業界でも2~3割いることが判明。収入が低い若い人ほど廃業のリスクがあり、業界のすそ野を狭め、日本の文化を衰退させる可能性があると、危機感をあらわにする。

アニメゲーム漫画などを“クールジャパン”ともてはやすのに、そういった職のクリエイターを困窮させる政府の指針に納得いかない」。漫画家の由高さんは言う。

●零細事業者を直撃するインボイス

インボイス制度は、消費税計算の新しい仕組みだ。政府は「正確な消費税額の把握」を目的に掲げている。

制度がスタートする2023年10月以降は、発注者・受注者に、消費税率などを明記した「インボイス」(適格請求書)と呼ばれる請求書の発行・保存が義務付けられる。インボイスは、事前に登録した適格請求書発行事業者(インボイス事業者)しか作成できない。

最も影響が危惧されているのは、これまで消費税の納税が免除されていた、年収1000万円以下のフリーランス(免税事業者)だ。

23年10月以降、フリーランスに仕事を発注する企業などは、免税事業者に支払った消費税分を控除できなくなる。このため、免税事業者との取引を控える動きが出るだろうと予想されている。つまり、年間の売上規模が数百万円程度の零細フリーランスも、免税事業者のままでは仕事がなくなる恐れがある。

仕事を得るために、免税事業者が課税事業者(インボイス登録事業者)になると、消費税分(最大で売り上げの10%)の税負担が新たに発生する。課税事業者になった場合、請求書の保管や税額の計算などの事務負担も増える。また、発注する企業側にも新たな事務負担が発生することになる。

さらに、インボイス登録事業者は、国税庁の「インボイス事業者公表サイト」で氏名などが公表される。ある程度の個人情報保護対策はなされているものの、ペンネームなど実名以外で仕事をしているクリエイターには、“本名バレ”のリスクを感じている人も多い。

漫画家も2割が「インボイスが始まったら廃業」

漫画家の2割以上が、インボイスが始まったら廃業せざるを得ないと回答している」。漫画家の由高さんは、漫画家を対象に11月に行ったアンケート結果を紹介し、危機感をあらわにする。

回答は1275件。うち98%が個人事業主だ。回答者の漫画業界での年収は「100万円未満」が19.2%、100~200万円未満が18.9%、「200~300万円未満」が16.6%と、過半数が300万円未満だった。

インボイス制度による仕事の影響について聞いたところ、「廃業する可能性がある」が20.6%、「廃業することを決めている」と答えた人も0.6%いた。特に収入が低いアシスタントは、インボイスで「廃業する可能性がある」と22.9%が、「廃業することを決めている」と0.9%が回答している。

「漫画出版社が過去最高益を上げているなどと聞くが、漫画の原稿料はここ数十年上がっていない。単行本の売り上げに比例する印税額は、人気漫画かどうかで格差が大きい。この状況でインボイスを導入すれば、免税事業者だった漫画家が増税や収入源に耐えられず、廃業が加速する」(由高さん)

特に「アシスタントが廃業しそうで怖い」と訴える。「アシスタントから漫画家デビューする人は多い。アシスタントの収入減が加速すれば、漫画家のなり手がいなくなる。一部の大手作家が出す作品以外は死滅していくと思う。インボイス制度は、漫画文化衰退の原因の一つになりかねない」。

年収1000万円を超え、既に消費税を納めている漫画家にも影響はある。アシスタントが免税事業者の場合、アシスタントへの消費税が控除できなくなるのだ。「漫画家アシスタントに課税事業者になることを迫れない。アシスタントは先生に、免税事業者を受け入れることを迫れない」。インボイス制度が、漫画家アシスタントを分断してしまうのだ。

アンケートでは9割の漫画家が「誰のための何のための制度なのか理解できない」と答えたという。また、「取引先からインボイスについて問い合わせがあったか」という質問に、8割が「何も聞いていない」と回答。「企業側の理解・準備不足も顕著」だと由高さんは言う。

アニメ業界も25%が「廃業する可能性がある」

「国はアニメ業界を潰そうとしているのではないかと思うぐらい、憤慨している。まさに弱い者いじめだ」――アニメプロデューサーの植田益朗さんはこう話す。

アニメ業界で働くフリーランスを対象に10月に行ったアンケートによると、年収300万円未満の人が半数に上った。インボイス導入で、25.0%が「廃業する可能性がある」「廃業することを決めている」と回答。32.2%が「仕事が減ると思う」と答えた。

アニメ業界は“ブラック産業”と呼ばれることもある。そういった部分もゼロではない」と認めつつ、「業界全体で、労働環境の改善、アニメーターの社員化などを進めている」と訴える。ただ、全員が社員になるわけではなく、フリーランスの活躍は欠かせない。

アンケート回答者の年収を年代別で見ると、20代の8割が年収300万円未満と、若手ほど低収入なことも判明。インボイス制度により、業界を支えるフリー、特に、収入の低い若手が廃業せざるを得なくなる可能性があると、危機感を強める。

アニメ制作会社など企業も、インボイスにより経理関係の事務作業が増え、課税と免税のクリエイター間で仕事の振り分けが必要になるなど、影響が大きい。

プロメア」「キルラキル」などの人気作で知られるアニメ制作会社TRIGGERの大塚雅彦代表は、インボイス問題について「フリーランスの問題ととらえられていることが多いが、免税事業者への仕入れ控除ができなくなるなど、事業者にも問題が出る。『一部の人の問題』だと思われているが、社会全体に関わる問題だと知ってほしい」と述べる。

●声優の27%が「廃業するかもしれない」

声優も、3割近くが廃業の危機を感じている。「VOICTION」共同代表で声優の岡本麻弥さんによると、全国に1万人いるという声優のほとんどが個人事業主で、96%が免税事業者。76%が年収300万円以下だと話す。

インボイスで「廃業するかもしれない」と答えた人は27%と、4人に1人以上が廃業の危機を感じている。また、全体の98%がインボイスに反対を表明している。

岡本さんは、「声優が政治の声をあげるのは嫌がられる」と思いつつも、あえて声をあげる。「インボイス制度は政治の話ではなく、来年我が身に降りかかる生活の話。このままでは業界が衰退してしまう。税の本質は格差の是正のはずなのに、税金を納めたら生活ができなくなるのはおかしい」

企業の理解も進んでいないという。「声優の8割が、インボイスについて事務所などから説明されていなかった。残りの2割は『インボイスに登録しないと今後の契約は約束できない』などと言われていた。だが実際は、『役に合わなかった』『縁がなかった』などと言われて契約を切られるだろう。そうなれば、何も分からずに業界から去るしかなくなる」

また、「消費税は、事業者が消費者から預かった預り金。免税事業者は、“益税”はネコババせずに納税せよ」といった批判を受けることもあるが、これは「誤解だ」と話す。消費税は、あくまで商品やサービスに対する対価の一部であり、預かり金ではないという判決が、1990年に東京地裁で確定しており、“益税”という言葉自体が「分断を招く」言葉になってしまっている、と述べる。

●演劇人も2割が「インボイスで廃業を検討」

演劇業界も実情は同じだ。俳優や劇作家、照明・美術など演劇に関わる人を対象に10~11月に行ったアンケートでは、72%が個人事業主であり、うち7割が演劇以外の仕事(アルバイト)もしていると、インボイス制度を考える演劇人の会の丸尾聡さん(劇作家・演出家・俳優)が説明する。

インボイス制度が導入されたら、廃業する可能性がある」と答えた人は約2割。声優やアニメ業界と同じだ。「コロナ禍文化庁が募集した『文化芸術活動の継続支援事業』に申し込んだフリーランスは8万人。うち2割の1万6000人が廃業したら、この国の文化はどうなる? 憲法で保障される文化的な生活は守られるのか?」

コロナ禍以降、演劇界は大きな犠牲を強いられてきた。度重なる公演中止・延期……今も客足は完全には戻らず、いつ公演が中止されるか分からないストレスの中、「なぜ、今インボイスなのか?」という声は大きい。「ギャラは上がらず、物価高の中、業界を直撃するインボイスが始まろうとしている。このままだと日本の文化芸術の未来は先細る」

4団体は記者会見の後、インボイス問題を検討する超党派議員のヒアリングに参加。今後も、他の団体も巻き込みながらインボイス反対の声をあげ、議員への説明など、ロビー活動を続けていく。

STOP!インボイス

(出典 news.nicovideo.jp)

<このニュースへのネットの反応>

>新たな課税じゃなくて、優遇制度を一部廃止するってだけの話だからなあ。同じ土俵に立たされることを「いじめ」って言うのは違和感あるわ。いじめ って言い方は別としてこの制度は結構やばい 優遇されてるのは消費者も同じなんよ 今まで税がかからなかった物にも税がかかるから普通に物価が1~2割上昇する それってインフレであって貯金が2割無くなるようなもんなんよ

インボイスはむしろ消費税導入の大前提で、それをしないなら消費税を導入してはいけなかった。めんどくさいことを理由に免税を求めるのは筋違い。それで滅びるならそんな業界は滅んでいい。なお、消費税反対が世論にならなかったのは事実だね。そういう選挙結果が出続けているから。文句はないだろ。

税金という物は余裕がない人からは取るべきではないですよね。

政府の制度設計がまずかったのでしょう。こうしたらこうなるっていう対応が出来てない。

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