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藤田朋子57歳、父の最期を振り返り「生きていれば、必ずそういう時期が来る」

藤田朋子・57歳、父の最期を振り返り「生きていれば、必ずそういう時期が来る」 | ニコニコニュース

 東日本大震災で家族全員を失い、深い贖罪の意識と喪失感に苛まれていた主人公が、職場の介護施設での出会いを通して成長していく姿を描く映画、『こわれること いきること』が現在公開中です。

藤田朋子さん

 高齢化社会にも光を当て、人の生き方や人生の終焉で願うこととは何かを観る者に改めて問いかける“人間の尊厳”に迫る命のヒューマンドラマに、俳優の藤田朋子さんが出演しています。

 藤田さんは、主演の吉田伶香さん演じる遥の恩師で、認知症を患い、夫婦で施設に入居する由美子役を好演しています。どういう想いで本作に取り組み、由美子役を演じたのか。話を聞きました。

◆“福島県への想い”もありオファーを受ける
――本作のオファーを受けた際、どのような印象を抱きましたか?

藤田朋子(以下、藤田):母が福島県喜多方市の出身なこともあり、震災直後から「ごしごし福島基金」という団体に参加して除染のお手伝い等をしてきました。そういったご縁もあって、福島の震災も扱う作品ならば、自分の役柄どうこうではなく、ぜひやらせていただきたいと思いました。

――なるほど、かなりパーソナルな意味での接点もあったのですね。

藤田:そうですね。実は、わたしが演じた役はもっと年齢が上の方が演じたほうがいいのではないかと感じ、「私は童顔なので認知症を患うような年齢に見えないですし、介護施設に入るような年齢でもないですが、本当にわたしでいいのでしょうか?」と、何回か監督とやり取りさせていただきましたが、「大丈夫です」というお返事を頂き、それならば、とお受けすることにしました。

◆役作りへの思い

『こわれること いきること』より© 三英堂商事/アイ・エム・ティ

――いくつものメッセージが込められた物語だと思いますが、ご自身ではどう受け止めていますか?

藤田:両親を失った主人公の遥が失望の中から希望を見出し生きていこうとする作品であることと、福島だけでなく、日本人全体が抱えている高齢者の方々をとりまく課題、日本の介護の仕組みなどが描かれていて、とても複雑で深い話だと思いました。

――決して遠い話、他人事ではないですよね。

藤田:そうですね。みんな生きていれば、必ずそういう時期が来るものですよね。私の父も亡くなる前には認知症を発症しましたので、身近に感じました。監督は介護の現場に携わる方々の仕事の大切さや、生きていくことの素晴らしさを伝えたかったのだと思います。

――由美子役は、どのように作り上げていったのでしょうか?

藤田:彼女は回想シーンを除いて、すでに認知症が発症しています。監督からの特別な指示はなかったので、同じ病気の症状の方の ドキュメンタリー映画を探して、その方を参考に所作、表情を取り入れたつもりです。

◆遥の痛みを皆さんに感じてもらえたら

――演技の表現としては、難しいものでしたか?

藤田:そうですね。そもそも病気の描写として正しい答えがないので、手探りなところはありましたけど、監督のOKをいただければ大丈夫なのだろうということで、毎日撮影していました。

――改めて完成した作品を観てどうでしたか?

藤田:私が撮影に立ち会わなかった場面を拝見して初めてわかることもありました。ご覧になる方それぞれが身近に感じるキャラクターを通してご覧になって、遥の心の痛みを一緒に感じて頂けたらなと思いながら観ていました。

 テーマは軽い映画ではないですが、監督の仰る通り、最後には希望を心に描いて頂ける作品だと思います。

◆夫と自主ライブを開催
――ところでSNSなどを拝見していて、充実した日々を送られている印象ですが、今一番ハマッていること、一番時間を使いたいと思うことは何でしょうか?

藤田定期的に自主ライブをしています。事務所にオフをもらって、夫(アコーディオン奏者の桑山哲也さん)と年に2本くらい歌ってます。

 そして今年は俳優の小林綾子さんとユニットを組んで朗読劇を始めました。次回は8月25日(金)です。たくさんの方々に協力して頂ける事になって、あれよあれよと言う間に第1回目が実現しました。

――きっかけは何だったのでしょうか?

藤田:実は演技のプロじゃない初心者の方が通うような演技のワークショップに通ったりするんですが、それがとても楽しいんです。あるとき綾子さんにその話をしたら、彼女も行ってみたい言うのでて、一緒に参加して演技をしました。

 みんなで同じテキストを演じるので、自分がいつもやらないような役柄にも出会うわけなんですよね。それが本当に楽しかったんです。それで春に知り合いのシャンソニエから「何かやらないか」と打診されてすぐに彼女と何か出来ないかなと相談して決めました。

 お互い「イメージ」などは関係なく気の向くまま作品を選ぶんですが、試し読みをする時間が楽しくて。

◆朗読劇は「大草原にも、宇宙にも行ける」

――朗読劇は、どういうところに醍醐味を感じますか?

藤田:朗読劇って、通常の演劇表現と違って、ビジュアルの部分はあんまり関係ないんです。50代になっても小学生の役ができるし、小さな空間にいるのに大草原にもいられる。宇宙にも行けるんです。

 声と表情だけで伝える無限の表現世界。第一回公演の感想にもその醍醐味にハマって下さった嬉しいコメントもありました。ふたりでシリーズ化したいなというのが今の野望です(笑)

――それこそ“人の生き方”に関わって来るような、人生のテーマでもあるわけですね。

藤田:お仕事って、楽しいと思って始めたはずなのに「やらなきゃいけない」という気持ちになったりすること、ありませんか?

 朗読劇に協力してくれた方々は、普段は演技をしたり、音声をやったり、写真を撮ったり、イラストを描いたり……を「生業(なりわい)」にしている人たちです。

 でもこのプロジェクトに関しては仕事としてではなく「やりたいことだけを楽しんでやる!」をコンセプトに集まって下さった。次回も今から楽しみです。

<取材・文/トキタタカシ

【トキタタカシ】映画とディズニーを主に追うライター。「映画生活(現ぴあ映画生活)」初代編集長を経てフリーに。故・水野晴郎氏の反戦娯楽作『シベリア超特急』シリーズに造詣が深い。主な出演作に『シベリア超特急5』(05)、『トランスフォーマー/リベンジ』(09)(特典映像「ベイさんとの1日」)などがある。現地取材の際、インスタグラムにて写真レポートを行うことも。

藤田朋子さん

(出典 news.nicovideo.jp)

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