ピックアップ記事

両親と「終活」や「相続」の話をしたい、親の年金収入額を知りたいときに「言ってはいけないNGワード」《ファイナンシャルプランナーが解説》

親の介護・見送り・相続や夫婦の年金・住まい、子どもの将来まで、頭の痛い問題が山積みになる定年前後。加えて、昨今の物価高や不透明な年金、複雑化する相続制度に悩まされている人も多いだろう。

ここでは、FP(ファイナンシャルプランナー)として活躍する経済エッセイストの井戸美枝氏が、老親のトラブル事例と解決法、年金の増やし方などを綴った著書『親の終活 夫婦の老活 インフレに負けない「安心家計術」』(朝日新書)より一部を抜粋。「親の就活」への備え方について紹介する。(全2回の1回目/2回目に続く)

◆◆◆

「親の困りごと」を段階的にクリアする

新型コロナが長引き、この間、帰省できずに親やきょうだいと、なかなか顔を合わせられなかった人も多かったと思います。

年末年始やお盆などの大型連休で久しぶりに家族が集まるときに、終活や相続の話を一気に進めたくなってしまいますが、久しぶりに会う親たちに向かって「終活」「相続」というワードは禁句です。「自分たちが死ねばいいと思っているのか」と不快な気持ちにさせてしまうこともあります。

やる気持ちを抑えて「コロナが落ち着いたらやってみたいこと」「旅行に行きたいところはないか」といった話をしながら、親の話にゆっくりと耳を傾けてみましょう。

今、どんな持病を抱えていて、どこのクリニックがかかりつけ医なのか。まずは、親の体調面を気遣いながら、話を進めると親の状況を把握できるようになります。

一度の帰省ですべてを聞き出そうとしないで、何回も実家に顔を出しながら、「親の困りごと」をひとつずつクリアしていきましょう。

例えば、新型コロナに感染したときなど、病気で倒れたらきょうだいの誰が「キーパーソン」になるのか。

私の場合、父が倒れたときは母がまだ元気でしたので、父の身の回りの世話や入院時の手続きなどは母が行いました。父が他界して、母が入院するときは、誰が入院時の手続きをして主治医の話を聞くのか。今はきょうだい間で、SNSなどでつながっておくことができますので、普段からトークルームで「連絡網」を作っておくと、“もしも”のときでも連携して対応できます。

の入院時に必要なことを知る

私の経験上、親が入院したときのために、以下の準備が必要です。

• 健康保険証、お薬手帳、かかりつけ医の診察券、マイナンバーカードなどをまとめておき、持ち出せるようにしておく。

• 病院に入院したときのため「緊急連絡先」「保証人」(住民票が異なる親族が2人)を決めておく。

主治医から治療方針、経過、退院の目安などの説明を受ける人を決めておく。

• 入院が決まったらすぐに「入院保証金」を支払うケースがあるので、お金はどうするのか、入院費の支払いについて親から聞いておく。

• 民間の医療保険に入っていないか(入院給付金や一時金の手続きはどうやって行うのか)事前にチェックする。

急に入院するとき、「健康保険証」と「お薬手帳」を持参していないと、応急処置がスムーズにいかなくなることがあり得ます。実際に、心臓病や高血圧糖尿病の持病がある高齢女性が、皮膚科の診察を受けようと、予約してから病院に行ったとき、「お薬手帳」を忘れたために、診察できなかったと聞いたことがあります。

普段から親とコミュニケーションをとっていないと、“もしも”のときに受診できない、あるいは子どもたちがお金を立て替えることになりかねないので注意しましょう。

「入院」をきっかけに、今後の生活、将来的にどんな介護を受けたいのか、終末期はどうしたいのか、といった話を聞きながら、お金のことを切り出すと、うまくいくかもしれません。

入院費などの支払いは親に代わって子どもが行うことを想定して、メインバンクキャッシュカードの暗証番号を聞いておきたいですね。このほかにも、事前に確認しておかないと後で大変な事態に陥るお金の話は、次のようなことが考えられます。

メインバンク以外に口座開設していないか

金融機関が破綻した場合に、預金保険機構が元本1000万円までとその利息の払い戻しを保証する仕組みを「ペイオフ」と言います。元本が1000万円超あり、また万が一のときに資産が減ると思い、それに対応するため、いくつもの銀行口座を開設している人がいます。

休眠預金等活用法に基づき、2009年1月1日以降の取引から10年以上、取引のない預金等(休眠預金等)は、民間公益活動に活用されます。1万円以上の預金があると、金融機関から通知が来ますが、対応はその金融機関によって異なります。子どもが親に代わって口座の解約はもとより、出入金をするのは「委任状」「身分証明書」等が必要になりますので、親が元気なうちに、銀行口座は、メインバンク以外は解約しておいてもらいましょう。「やり方がわからない」というのであれば、解約に必要なものは何か金融機関に事前に聞いておき、親と同行することも考えましょう。

子どもにも言えない経済的な悩みはあるか

実家に帰省しても、親がどんな経済状況なのかはまったく知らないという人がほとんどではないでしょうか。

母と同居していたある女性の話で、母親の入院中に、自宅に「督促状」が届き、開封したらキャッシングの返済期限が来ていたことがわかり、女性がかなりの金額を立て替えたという例もあります。

女性は朝、仕事に出かけてしまうと、普段母がどんな生活をしているのか把握できず、同居していても「キャッシングしていたことはわからなかった」と言っていました。年に数回しか会わない親子であれば、親の経済状態はさらにわからないことでしょう。

年金収入で生活できるか“さりげなく”聞く

昨今は、水道光熱費、食料品、生活必需品など、生活に不可欠なあらゆるモノの値段が上がり続けています。親の1カ月の生活費を知りたいと思ったら、いきなり「1カ月の生活費はいくら?」などと切り出さないで、身近な話題を振ってみることをお勧めします。

例えば、

「先月の電気代が急に上がっているけれど、うちは大丈夫?」

大丈夫? と心配してみるのがポイントです。

「全然平気」という親はほとんどいないはずです。大半は「もう大変」と言うでしょうから、そこで1カ月の生活費が年金収入の範囲内で収まっているのか、確認をしましょう。

家計が赤字で、貯蓄から取り崩していたら、入院や介護などの“もしも”のときに、お金が足りなくなって、子どもが立て替える、ということにもなりかねません。また、月々の支出がオーバーした分を仕送りする必要も出てくるかもしれません。そうなったとき、ひとりで全部背負わないで、きょうだいと話し合って負担を分担するようにしましょう。今は便利なキャッシュレス決済があり、その機能を使って送金・入金が簡単にできます。どんどん活用しましょう。

スーパーコンビニの総菜ですませていないか注意

また、普段の買い物はどうしているのか聞いてみる方法もあります。

高齢になって自炊が億劫になってくると、出来合いのおかずに頼るようになります。便利でおいしいかもしれませんが、日常的に利用する場合は、食費が高くつくので家計的にはおすすめできません。また、味付けが濃いめなので高血圧症糖尿病などの持病がある人は悪化させてしまう可能性もあります。

高齢になって食事の支度や後片付け、家のなかの掃除やゴミ出しなど、身の回りのことが不自由になったらどう支援したらいいのか、同時に考えておく必要があります。(#2に続く)

介護費用の平均額は約580万円! 少しでもお金の負担を減らしたい人が「知っておくべき3つの制度」《ファイナンシャルプランナーが解説》 へ続く

(井戸 美枝/Webオリジナル(外部転載))

写真はイメージです ©iStock.com

(出典 news.nicovideo.jp)

ピックアップ記事

Twitterでフォローしよう

おすすめの記事