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私たち、絶好調じゃない?年収1,500万円の「子のない夫婦」…余裕のローン返済が一転「タワマン生活終了」の自業自得 | ニコニコニュース

「一生に一度の買い物だから」を言い訳に、マイホームは予算以上になりがち。経済的に余裕のある人たちであればなおさらです。しかし、余裕だと思っていた住宅ローン返済が、ちょっとした想定外で苦しくなることもまたよくある話。FP1級の川淵ゆかり氏が、あるパワーカップルを例に適切なローンプランを考えていきます。

貯蓄は後回しの贅沢パワーカップルがタワマン購入

夫婦ともに高年収の世帯を「パワーカップル」といい、一般的に二人とも年収が700万円以上だったり、世帯年収が1,000万円を超えたりするような夫婦のことを指します。

Aさん夫婦も夫が年収1,000万円、妻が年収500万円、世帯年収が1,500万円のパワーカップルでした。ご主人様は輸入アパレルでの卸売業の営業課長、奥さんはジュエリーメーカーで働くジュエリーデザイナーです。仕事柄、二人ともおしゃれで着るものも食べるものも贅沢です。

子どももいないから40歳を過ぎてから資産形成に励めばいいのよ」という考えで、貯蓄にはあまり関心がないようなご夫婦でした。

そして、今から4年ほど前、結婚10周年を記念して、二人はマンションを購入することにしたといいます。Aさんが37歳、Aさんの奥さんが35歳の時でした。

二人とも経済的に余裕があり、給料も右肩上がりの時期でしたので、「せっかくだからタワマンを買いましょうよ!」という奥さんの希望で、タワマンを購入することになりました。タワマンは、眺望がいいのはもちろん、共用施設やサービスも充実していて、資産価値も高いため、広い範囲の年代で人気です。

Aさん夫婦はさっそく都内の物件を探し始めましたが、心配事がひとつだけありました。

「貯蓄はそれほどないけど審査は通るかな?」

不安を抱えながら金融機関の担当者に相談したAさん夫婦でしたが、年収に比べて貯蓄は少なくてもローン等の借金はない夫婦でしたので、担当者は「1億2,000万円までお貸しできますよ」との回答にAさん夫婦はすっかり気を良くしたといいます。そのため、借入額を1億円とし、最上階ではないものの当初考えていた部屋よりもグレードの高い部屋を購入することを決めました。

「私たちの人生、絶好調じゃない?」

Aさん夫婦のローンプラン

●住宅ローン借入額:1億円

●返済期:35年

●変動金利型1%(団体信用保険料込み)

ボーナス返済無し

●毎月返済額:282,285

返済額は現在の家賃の約2倍に跳ね上がってしまいましたが、「まぁ、なんとかなるんじゃないの?」と楽観的に決めたといいます。

節約が必要と分かりつつ…生活費が節約できない

Aさん夫婦は憧れのタワマン生活を手に入れました。契約当初は「大きな買い物をしたんだから少しは節約していこうね」と話し合ったのですが、なかなか生活レベルは簡単には下げることはできません。それどころか、友だちを呼んでホームパーティーを開いたり、タワマンの近くにある高級スーパーが気に入ったため高級品の購入が増えてしまったりと、逆に支出は増えてしまったといいます。

タワマンに住むことで、周りの住人との競争意識もあるのでしょう。ワンランク上のモノやサービスにどうしても目が行ってしまい、ついつい購入してしまうのですが、二人の収入を合算すれば十分対応できるので、楽観的な考えのままだったといいます。

コロナ禍の影響で収入は大幅減

贅沢が抑えられないAさん夫婦ですが、タワマンに住んで1年ほど経ったころです。新型コロナウイルス感染症が広がり始め、営業で都内を飛び回っていたAさん新型コロナウイルス感染症に感染してしまいます。Aさんは重症化してしまい、ICUで人工心肺装置(ECMO)につながれ生死の境をさまよった、といいます。

Aさんなんとか生還したのですが、その後も呼吸困難や脱毛などの後遺症に悩まされつづけ、明るかったAさんからは笑顔が消えてしまいました。長い入院や自宅療養の後もとても営業などできる状態ではなく、社内での事務処理業務に異動させられてしまったとか。

しかしコロナ禍の影響はAさんだけでなく、Aさんの会社にまで暗い影を落としました。海外からブランド衣料などを輸入していた会社ですが売上げは激減。新型コロナ感染症が5類感染症に移行した後も仕入金額や光熱費の値上げ、人件費のアップに悩まされている状態です。

Aさんの会社では経営悪化でボーナスは縮小。さらにAさんは外勤から内勤への異動で収入は半減したといいます。会社はとうとう早期退職の募集も始めましたが、精神的ダメージと体調不良も続いているAさんは転職など考えられるはずもなく、収入減のまま現在に至ります。

奥さんは新型コロナウイルス感染症には感染しなかったものの、金をはじめとする原材料の高騰は、勤務するジュエリーメーカーの経営にも影響を与えています。

今年、Aさんは41歳、奥さんは39歳になり、二人が言っていたそろそろ資産形成を始めないといけない年齢になりましたが、住宅ローンの返済が重荷となっていてそれどころではありません。

「この3年間、なんとか踏ん張ってきましたが、住宅ローンは滞納ギリギリの月もあり、もうそろそろ限界です。主人の年齢を考えると年収も以前の金額まで戻るとも考えられませんので、マンションは売却を考えています」と、Aさんの奥さんは言います。

Aさん夫婦の住宅ローンの失敗要因

Aさん夫婦は貯蓄がほとんどありませんが、住宅ローンを最後まで払い続けるためには、「頭金」の準備も必要ですし、新築マンションの場合は価格の3~5%の諸費用も必要です。そして、万が一に備えるために半年~1年程度の「生活予備費」も残しておかないといけません。これらの金額の準備もなく、いきなり住まいを購入してしまうのは非常に危険です。

さらに金融機関側の「貸せる金額」が「返せる金額」とも限りません。最大限の金額ではなかったとはいえ、1億円も借りてしまうのはやはり無謀です。借りるときは返せる金額だったとして、返済期間中は何が起きるかわかりませんし、年齢が進むにつれて収入ダウンは必ずあると考えて借入金額や住まいの購入金額を算出する必要があります。

借入期間にも問題があります。当然のように35年返済で契約されていますが、35年後にはAさんの年齢は72歳、奥さんは70歳になっています。よく「繰り上げ返済すればいい」と考える人もいますが、予想外の収入ダウンや物価の値上がりで、思ったよりも繰り上げ返済が進まない人たちも増えています。

それまでの家賃と同じくらいの返済金額に抑えておけば、住宅ローンに悩まされることもなかったでしょう。家賃の金額を基準に借入金額を算出すると次のようになります。

●住宅ローン借入額:4,400万円

●返済期間:28年(65歳完済)

●変動金利型:1%(団体信用保険料込み)

ボーナス返済:無し 

●毎月返済額:150,194円

これを基準に、将来も余裕で返済できそうだ、と判断するのであれば借入額は増やしてもいいでしょうし、将来の返済が難しくなる、と判断するのであれば借入金額をさらに減らす、という考えで住まいの購入金額を決めていきましょう。

子のない夫婦…理想の住宅ローンとは

よく「家は一生に一度の買い物」と言われるため、これが最初で最後と思い、ついつい予算が大きくなってしまうケースは多いものです。しかし、筆者は「住まいは一生に一度の買い物ではありませんよ」とアドバイスしています。

人生100年時代と言われ、長生きできるようになったので、住宅ローンが完済する頃には住まいも傷み、大幅なリフォームが必要になります。Aさんのようにお子さんのいないご夫婦であれば、配偶者の死亡で一人暮らしになることを考えなければなりませんし、老人ホームへの入所を考えるなら、さらに大きなお金がかかります。空き家問題の深刻化に伴い、空き家は増加。それに伴い住宅の売却価格は下がるとも予想され、住んでいた家の売却資金で老人ホームの入所資金が作れる保証もありません。

さらに、円安による原材料の値上げや労働力不足による人件費アップは今後も続いていくと考えられますので、将来、リフォームが必要な時期や老人ホームの入居する時期にかかる費用も大きな金額になっているはずです。

また、老後に頼れるお子さんがいないとなると、入院や介護施設に入所の際に必要とされる身元保証人がいないことで、身元保証会社にお願いする際のまとまったお金も必要です。住宅ローンは借りてしまった後に迷ったり悩んだりする人が多いもの。人生に大きな影響を与える住宅ローン。ぜひ、借りる前に将来のことをしっかり考えて決めるようにしてください。

(※写真はイメージです/PIXTA)

(出典 news.nicovideo.jp)

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