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大物タレントが「空気の読めないSNS投稿」をしてしまう理由。“神格化されたキャラ”を押し通す難しさ | ニコニコニュース

9月7日ジャニーズ事務所が一連の性加害問題で最初の記者会見を開いてからおよそ2か月経ちますが、その後の余波は大きく、一連の事態をめぐり所属タレントや元所属タレントSNSに投稿した内容が物議を醸しました。

本人にとっては揺るぎない自分の信念を示そうとしたり、気の利いたジョークのつもりで気軽につぶやいた投稿だったようですが、“空気の読めない”内容だとして多くの批判を集める事態を招いてしまいました。

今回は、SNSリスクコンサルタントの筆者:井ノ口樹(いのくちたつき)が、「芸能人SNS投稿が炎上してしまう理由」について考察します。

◆「適切な距離感」を保たないと…

以前の昭和のアイドル、特にジャニーズタレントの場合は、ファンにとって手の届かない、いわば“神格化された存在”というイメージコンセプトを保ってきました。

これまで事務所が、タレントに写真を撮らせたり、サインを書くといったファンとの直接的な接触や個人SNSアカウントの開設を厳しく制限してきたのは、タレントに自由に投稿をさせることで素のキャラクターが露呈してしまうことや、スキャンダルの発覚を防ぐことが目的でした。

ファンにとっては、サインや写真撮影を断られることに寂しさを感じるかもしれませんが、これらの行為は、異性交遊や反社とのかかわりなど根も葉もない噂を立てられるきっかけにもなりかねないため、特にアイドルとして売り出しているタレントにとっては非常にリスクを伴う行動になります。

リスクマネジメントの観点ではタレントへのこれらの行動制限は理にかなうものではあるのですが、数々の蛮行が白日の下に晒された今となっては、もはや壮大な皮肉と言わざるを得ません。

SNS投稿で浮かび上がる本来の人間性

時代の変遷につれ、AKBのような「実際に会いに行ける」距離の近い身近な存在というコンセプトアイドルが多くの支持を集めるようになり、従来のあるべきアイドル像も変化してきました。

そのような時代の流れの中で、ジャニーズ事務所タレントSNSアカウント運用を認めるようになったと思われますが、当然ながらSNS投稿が自身のファン層だけでなく多くの世間の目に晒されるようになった結果、タレント価値観や世界観が世間に受け入れられなかったことが、今回の炎上を招いてしまうこととなりました。

また、タレントとしてのキャラクターではなく、思わぬところで人間としての本質が露呈するような投稿をしてしまうと、その内容によっては今後の活動に支障をきたす可能性があります。

SNSアカウントタレント個人名義であっても、実際の管理をマネージャー事務所が行っていれば、炎上はある程度防げるかもしれませんが、個人アカウントを持っていれば、何か大きな問題が起こった時に必然的に本人としての意思表明が求められるようになることも、リスクを増やす要因となるでしょう。

コンプライアンスだけでなく、男女の貞操や社会的マナーといったあるべき倫理観、行動規範の順守を厳しく求められるようになった現在では、過去の神格化された自身の価値観をそのままさらけ出すことは、熱狂的な一部のファン層には支持されたとしても、その内容が世間から受け入れられなかった場合、批判の標的とされてしまうことになるのです。

◆炎上を厭わない確信犯的な投稿も増加

初対面の相手に「政治、宗教、プロ野球」の話を振るのは控えたほうが良いと聞いたことはありませんか。これらには確固たる正解がなく、対立を生む火種となってしまう話題は避けるべきと考えられていたのです。

現在の芸能界においても、特に政治や宗教関連の話題が積極的に取り上げられる機会はほとんどありません。

例えば情報番組にコメンテーターとして出演している芸能人がそれらに関連するコメントを求められたとしても、その場の思いつきで発言しているわけではなく、自身の発言が物議を醸すことが無いように、あらかじめ話題の内容を知らされたうえで綿密に打合せをしたうえで収録に臨んでいます。

ただ、最近の傾向として、あえて世間とは逆張りの投稿をしたり、相手を敵視し感情的に罵ったり、陰謀論に傾倒したり、政治的主張を声高に掲げる有名人も増えつつあります。

投稿した本人が意図しないところで炎上させてしまうケースもありますが、エンタメを提供する芸能人や有名YouTuberが、敢えて憎悪や対立を生みだすような投稿を意図的に繰り返しているケースも見られます。

◆「芸能人という環境」の特殊さ

多様な価値観が混在する世の中で、人気商売である芸能界で仕事を続けていくには、敵を作るのは得策ではなく、世論やスポンサーへの配慮など、ある意味“八方美人”でいることを強いられます。

そのような環境の下で、世間体を顧みずに言いたいことを自由に発言したり、自身の考える絶対的な“正義”をはっきり主張したくなる衝動に駆られ、感情的にSNSに投稿してしまうこともあるかもしれません。

しかしながらそれらの主張が極論であったり、世間が理解しがたい内容であれば、当然ながら炎上の要因となってしまう可能性が高いでしょう。

SNSを上手く使いこなすコツは…

これは芸能人だけでなく一般のSNSユーザーにも共通していえることなのですが、SNS運用が上手い人は、基本的には敵を作らず、自身の言動が世間からどのような評価をされるのかあらかじめ予想したうえで、極論に走らずあらゆる層に配慮した投稿を行います。

有名人の場合は、どのような投稿を行ったとしても、いわゆるアンチ層から誹謗中傷や“クソリプ”を集めることもありますが、それらには一切反応せず、常にポジティブな話題でユーザーを笑顔にするよう心がけている人はイメージアップに繋がります。

自らの考えを主張するためではなく、いわゆる“ファンサ”や、ファンのすそ野を広げるためのツールとしてSNSを利用しているのです。

逆に、不平や不満、愚痴、悪口など他者を見下したり攻撃するようなネガティブな投稿はもちろん、これまで俺様キャラを貫いてきた芸能人が、自身の価値観や考え方に固執し、思ったことをそのまま感情的に投稿したり、時代の変遷に合わせて価値観アップデートが出来なければ、当然ながら投稿が炎上してしまうリスクは高まります。

SNS運用の難しさが露呈した騒動か

今回のジャニーズの一連の騒動では、全盛期当時の価値観に囚われ周辺への配慮に欠ける自分本位の投稿は、現在の世間の価値観とのギャップが大きく、かつて一世を風靡した大物芸能人の影響力をもってしても、多くの批判を集める結果となってしまいました。

しかしながら芸能人の場合は、炎上リスクを減らすためとはいえ、バランスの取れた“無難な”投稿は、キャラとしての個性を潰してしまうことにも繋がりかねない難しさもあるでしょう。

投稿や主張の内容が、あくまでキャラとして世間に受け入れられるのか、それとも人間としての本質と捉えられ批判に晒されるのか、その見極めは困難ではありますが、社会に大きな影響力を持つ者として、それらをより慎重に判断することが求められます。

TEXT/井ノ口樹(いのくちたつき)>

【井ノ口樹(いのくちたつき)】
在京テレビ局関連会社、一般企業広報、人材教育コンサル会社を経てネットコンテンツ管理業務に従事。これまで数多くの問題投稿に向き合ってきた経験とメディアやコンサル業界で培った見識を活かし、ネットリテラシー向上を目的とした講演や評論活動を行う。一般社会人や中高生、教育関係者、芸能関係者等に特化した独自の研修プログラムを提供している。温泉ソムリエ、温泉入浴指導員、アンガーマネジメントファシリテーター、国内A級ライセンス資格を所有。

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(出典 news.nicovideo.jp)

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声優もそうだよな。中田譲治とか緒方恵美はXをやっちゃいけないタイプの人間だったわ

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