カツラのなにがいけないの?東大医学部卒の精神科医が「容姿の若見せ」を肯定する合理的な理由 | ニコニコニュース
カツラや植毛、美容整形など、容姿を改善する方法はさまざまです。しかし日本では、これら「自分を若く見せるための手段」に対して、ネチネチ陰で噂をするような人が少なくありません。こうした日本の風潮について、『60代からの見た目の壁』(株式会社エクスナレッジ)の著者で医師の和田秀樹氏が考察します。
カツラをバカにする日本
男性なら、若く見せるためにカツラをつけたり、植毛するのもよいと昔からいっています。
でも日本ではカツラのことを「ズラ」と呼んで、こっそりかぶっている人を揶揄するような風潮があります。
他の国の事情は知りませんが、日本には若く見せるための手段としてカツラを使うのは反則だという文化があるようです。でも前述の「整形疑惑」と同じで、「ズラ疑惑」をネチネチと陰で噂するようなことはもうやめるべきではないでしょうか。
数年前まで、朝の情報番組のMCを務めていた人気フリーアナウンサーのズラ疑惑をご存じの方がいると思います。
彼の髪がカツラなのかどうかはわかりませんが、仮に本当にカツラだったとしても、黒々とした髪のおかげで実年齢よりも若く見えていたのは事実でしょう。ズラ疑惑を喧伝する人たちは、カツラにして若く見せることのどこが悪いと考えているのでしょうか?
カツラをさげすむ文化があることで、「カツラをしてみようか」と検討しているのに、この同調圧力に負けて、第一歩を踏み出せない男性が多いのではないかと思います。
カツラをしなければしないで、今度は「ハゲ」と陰口を叩かれます。少ない髪を解消する手段があるのに、これでは八方塞がりです。
植毛といって、段階的に髪の量を増やしていき、誰にも気付かれないうちにフサフサの髪にするサービスもあります。こういうサービスがあるのは、急に髪が増えたら怪しまれるという心理があるからでしょうか。
わざわざそんなことをしなくても、堂々と一気に髪を増やせばよいと私は思います。カツラの頭を見て、驚く人がいたら、「いやあ、カツラにしたんだよ」とでもいえばよいだけの話です。
誰もがカツラをして堂々としていたら、カツラをさげすむ文化もなくなると思います。カツラや植毛で、見た目が若くなれば、意欲の低下も防げて、異性にモテるかもしれません。
なお、ハゲを目立たなくするために、帽子をかぶる人もいます。どんな帽子を選ぶかにもよりますが、ハゲるくらいの年齢の男性が帽子をかぶると、逆に老けて見えることが多いような気がします。
見た目をよくする2種類の医療
見た目をよくする医療には大きく分けて2種類あります。
1つは顔などに大ケガした人たちの傷を治すような形成外科。大ケガして顔の半分くらいが損傷した人でも、形成外科手術によって、きれいな顔に戻すことができます。
顔だけでなく、乳がんの手術で失った乳房を再建するのも形成外科で行われています。女性が乳房を失うのは心理的ショックが大きいので、形成外科手術によって乳房を復元させるわけです。これも言ってみれば見た目をよくする医療の1つです。
もう1つは、いわゆる美容外科(美容整形外科とも呼ばれる)です。厳密にいうと形成外科の一分野なのですが、これは容姿を整えることが目的です。一重まぶたを二重まぶたにしたり、鼻を高くしたり、顔のたるみを取るといったプチ整形から、顔の輪郭を変えるような手術までさまざまあります。簡単にいってしまえば、見た目を美しくするための医療です。
美容外科の歴史はけっこう古く、私が子どものころから、大手美容外科のテレビCMが放映されていたものです。ですから、1960年代ぐらいには立派にビジネスとして成り立っていたのだと思います。
でも私が医学生の頃、大学病院の医局には、美容外科はありませんでした。大学で行われているのは、ケガをした人などのための形成外科だけで、美容外科という分野は、正直なところ他の分野に比べて下に見られていました。美容外科を志すような医者は、お金儲けが目的だと揶揄されてもいました。
逆にいうと、60年代からテレビCMで宣伝していたような美容外科は、大学では教えてくれないので、自分たちで新しい分野を切り開いたパイオニアともいえます。
そして、美容外科を志す若い医者たちは、このような美容外科のパイオニアの元で修行して、腕が上がったら開業するというようにして、この分野は広がりを見せてきたと思っています。
そんな時代を経て、90年代には、大学医学部にも美容外科の医局が少しずつつくられるようになってきました。今では私が卒業した東京大学医学部にもあります。
和田 秀樹 医師