売れないクルマを売るための特効薬!? 最近車名が「クロス」だらけなワケ | ニコニコニュース
この記事をまとめると
■最近「クロス」や「クロスオーバー」と名付けられる車名が多い
■「クロスオーバー」という単語は元々音楽の世界で使われていた用語と言われる
最近耳にする「クロス」とつくクルマは何が「クロス」なのか
最近は車名に「クロス」の付く車種が増えた。
いずれもSUV風で、「クロス」はクロスオーバーの略称だ。さまざまな価値観が交錯することで、1970年代のクロスオーバーといえば、音楽のカテゴリーを示す言葉だった。ジャズとロックを交錯させたのがクロスオーバーで、のちにフュージョンという呼称に変わっている。
クロスオーバーは交錯という意味だから、定義は曖昧だ。既存の乗用車をベースに、フロントマスクやフェンダーを少し野性的にカッコ良く変更して大径タイヤを履かせると「クロスオーバー」になる。「クロスオーバー」をそのまま車名に使う車種には、クラウンクロスオーバー、ノートオーテッククロスオーバー、フレアクロスオーバー、ミニクロスオーバー、生産を終えたスカイラインクロスオーバーなどがある。
「クロス」はさらに多く、カローラクロス、ヤリスクロス、クロストレック、クロスビー、エクリプスクロス、eKクロス、eKクロススペース、フィットやフリードのクロスター、タントのファンクロスという具合に膨大だ。
つまり、「クロス」を付けると、なんとなく最先端のカテゴリーに属する車種のように思えてくる。
こういう例はグレード名については古くから見られ、1960年代には豪華指向のデラックス、1960年代から1980年代にはスポーツ指向のGTが流行して、今でも使われている。クロスもGTも、車種やグレードの雰囲気をイメージさせやすい。
メルセデス・ベンツやBMWなどの欧州車は、昔から車種をSクラス、3シリーズという具合に数字などで表記してきた。クロスは使われにくいが、BMWのSUVは、X3とかX5などXシリーズとしている。このXは、SUVを示すクロスだ。
今販売されている「クロス」がつくクルマは?
「クロス」が付く代表は、カテゴリーが中間的な車種になる。クラウンクロスオーバーは、ボディの後部に独立したトランクスペースを備えるセダンで、いわばセダンスタイルのSUVだ。これはクロスオーバーの典型で、SUVの外観と、セダンの高いボディ剛性や後席の静粛性を融合させた。
クロストレックは、先代型までは国内の名称がXVだった。これもインプレッサスポーツに、外装パーツを加えて最低地上高(路面とボディのもっとも低い部分との間隔)を200mmまで高めたクルマだった。中間的な印象が強く、クロスオーバーの表記がピッタリだ。
タントファンクロスも同様で、基本的な機能はタントと同じだが、主に外装パーツの装着によりファンクロスを名乗る。ちなみにタントがファンクロスを加えた背景には、タントの販売低迷があった。先代タントは、軽自動車ではN-BOXの次に多く売られたが(2014年はN-BOXを抜いて1位になっている)、現行型は2019年に登場したのに設計の古いスペーシアも抜けない。2020年と2021年の軽自動車販売は、N-BOXとスペーシアに次ぐ3位だった。
そこで2022年にファンクロスを設定すると堅調に売れ、タントは2位に浮上している。かつてはインプレッサも、XVの追加で売れ行きを保ったことがある。つまり、「クロス」は困った時の特効薬でもあるのだ。