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「イチローも松井秀喜も上回る!」大谷翔平が新たなる日本の英雄に

イチローでも、松井秀喜でも、ダルビッシュ有でもなく…大谷翔平が「日本人史上最高のメジャーリーガー」と断言できるワケ | ニコニコニュース

大谷翔平はどうすれば「野球の神様」を超えられるのか? 比べてわかったベーブ・ルースとの差 から続く

 第5回ワールド・ベースボール・クラシックWBC)で大活躍した大谷翔平(28)。ここでは、そんな大谷が見ている別次元の野球像に迫った『ルポ 大谷翔平 日本メディアが知らない「リアル二刀流」の真実』(朝日新書)より一部を抜粋。他の日本人メジャーリーガーを比較して見えた、大谷の“凄さ”を紹介する。(全5回の4回目/5回目に続く)

◆◆◆

日本人選手との比較

 大谷の成績は他の日本人メジャーリーガーと比べると、どうなのか。

 まず打撃から見てみよう。プレーする時代が異なる選手を比べるので、ルースの時と同じように、wRC+を用いる。Baseball Referenceによると、メジャー1000打席以上を記録している日本出身選手(日本国籍でない人も含む)は11人で、通算での順位は以下の通りになる(表3-12)。

 プレーした年数や年齢の違いもあるが、大谷は群を抜いている。規定打席に達した最も良かった年のwRC+を比べても、大谷の152(2021年)は、松井秀喜1402004年)、イチロー1312004年)、青木宣親1122012年)、福留孝介1102009年)を上回る。ちなみに規定打席に達しなかった2018年の大谷のwRC+は149だった。

松井秀喜イチローとの差を生んだ大谷の「パワー

 2021年の大谷のwRC+は、メジャー全体で5位。松井秀喜が自身メジャー最多となる31本塁打を記録し、イチローが262安打でメジャー記録を塗り替えた2004年でも、それぞれ20位と30位だった。

 この差を生んでいるのは、なんと言っても大谷のパワーである。通算長打率・537は、メジャー史上で今のところ41位。40 位は、通算630本塁打ケン・グリフィー・ジュニアで、42位は通算586本塁打フランクロビンソンと、殿堂入りした史上屈指の強打者2人に囲まれている。

 大谷の打撃力は、イチロー松井秀喜を含めて、これまでの日本人選手とは比較にならないレベルなのだ。

健康で投げている時の大谷は、ダルビッシュや田中と遜色ない

 次に投球成績を見てみよう。大谷が通算で1シーズン分くらいのイニング数しか投げていないので難しいが、とりあえず60パーセント以上の登板が先発で、通算150イニング以上投げた投手の通算ERA+で順位をつけた。BaseballReferenceによると、条件に合う日本出身選手が14人いる(表3-13)。

 最も良かった年を見ると、次のような順位になる(表3-14)。

 規定投球回には到達していないが、大谷の2021年は141、2018年127と、歴代の日本のエースたちと張り合う数値だ。健康で投げている時の大谷は、ダルビッシュや田中と遜色ない。

 最後に、総合貢献度のWARを比較する。これは累計であるため、一般的には長くプレーすればするほど高くなる。Baseball Referenceによると、以下が日本出身選手の通算WAR上位10人である(表3-15)。

 通算1位はダントツイチローの60。メジャー史上でも191位である。投手ばかりが並ぶ中、ひときわ輝きを放っている。

大谷の活躍を「日本人選手」という枠で測るべきではない

 そして、こちらが投手と打者のシーズン最多WARの上位10傑である(表3-16)。投手としては岩隈が1位というのを意外に思った人もいるはずだ。2013年の岩隈はメジャー全体で8位、投手としては2位だった。データを見ていると、ただ試合を見ているだけでは気づきづらい選手の活躍が見えてきて面白い。

 2021年の大谷は投打を合わせると9・1で、2004年イチロー(9・2)に次いで2位である。でも、こういう見方もできる。打者・大谷と投手・大谷が別の人物だったら、それぞれ日本人の中ではトップ10入りするくらいの活躍をしたということだ。大谷を「ダルビッシュと松井とイチローを合わせたような選手」と形容するアメリカファンに何人も会ってきたが、数字もそれを示している。

 大谷の活躍を紹介する際に日本メディアがよく使う、「日本人初となる」「日本人ではXX人目」といった表現には、正直、違和感を感じる。これまでの説明で分かるように、大谷の活躍というのは「日本人選手」という枠で測るべき次元ではないのだ。大谷は投打のそれぞれで、メジャートップ選手と遜色ない活躍をして、二刀流というメジャー史上でも前例のない偉業を成し遂げている。日本人選手との比較で語るのは過小評価につながりかねない。

統計分析が進んでいなかった当時は、打率や安打数を重視していた

 また、これまでの比較を読んで、「イチローと松井を貶めている」と感じた人もいるかもしれないが、そんなつもりはもちろんない。

 イチローは、ステロイド全盛期に、他の選手と全く異なるスタイルプレーしてファンを魅了した。バットボールに当てる技術では、史上最高クラスだと評される。アメリカの野球ファンと話すと、今でもみんな興奮してイチロースピード感あふれるプレーを称賛する。米野球殿堂入りも間違いない。しかし、データが示す実際の打撃での貢献度という点では、当時の評価に比べると低いのは事実だ。出塁率長打率が、そこまで高くないからだ。

 もちろん、統計分析が進んでいなかった当時は、打率や安打数が重視されていたので、「イチローはそれに応えただけ。求められていれば出塁や長打が出るスタイルに変えたはず」という指摘も分かる。また、長打では秀でた数字ではなかったのに、トップクラスのWARを記録していたということは、いかにイチローの守備や走塁が素晴らしかったかを物語っている。FanGraphsによると、イチローの走塁での通算貢献度は、リッキー・ヘンダーソン、ティムレインズに続くメジャー史上3位である。

松井秀喜は今でもニューヨークファンから人気がある

 大谷と同じように、イチローも「他の日本人選手と比べて活躍した」のではなく、最多通算安打記録を持つピート・ローズに並ぶような、メジャーリーグ史に名を刻む選手として讃えられている。イチローを他の日本人選手と比べるのも、また過小評価につながるだろう。

 松井秀喜も、人気球団ヤンキースで中軸を打ち、ワールドシリーズなど大事な場面で活躍したことで、特にニューヨークファンからは今でも人気がある(ただし、日本で強調される「ヤンキースの4番」に、アメリカ人は同じような特別感は抱いていない。アメリカでは最高打者は「3番」というイメージが強い)。だが、アメリカに来た時には28歳で、大谷に比べると5年も遅かった。

 一般的に、野球選手がピークを迎えるのは、27~30歳だと言われる。なので、メジャーリーグを取材するものとしては、どうしても才能ある選手には早く海を渡って挑戦してもらいたいと思ってしまう。

「オオタニは化け物です」アジア人への差別・偏見が残るアメリカ…それでも大谷翔平がアメリカ人に“受け入れられる理由” へ続く

(志村 朋哉/Webオリジナル(外部転載))

大谷翔平 ©文藝春秋

(出典 news.nicovideo.jp)

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