ピックアップ記事

過熱する中学受験「中高一貫校1000万円の教育投資」で偏差値はいくらあがる? 井川意高×藤沢数希 | ニコニコニュース

全国の中学受験は終了、大学受験もピークを迎え、国公立大学の二次試験が近づいてきた。受験生とその親御さんにとっては勝負の季節だ。少子化が進むなかでも、受験競争は過熱する一方。現代の教育産業に鋭く切り込んだ『コスパで考える学歴攻略法』(新潮新書)の著者である藤沢数希氏と、東大法学部卒で大王製紙会長と輝かしい経歴を持ちながら“106億円をカジノで失った男”として知られる井川意高氏が対談。前編では、近年過熱する中高一貫校への中学受験について語ってもらった。

◆井川意高、中学受験で筑駒と麻布に合格

――昨今、東大などの難関大学に合格するためには、小学生のときからSAPIXなどの中学受験塾で勉強をして有名中高一貫校に入るのが高学歴になるための王道ルートだという風潮があるように感じます。井川さんは中学受験で日本最難関の筑波大学附属駒場中学に進学し、その後、東大文一に現役合格しました。

井川小学校では成績が良く、小学4年生のとき、東京に家族旅行に行ったついでに代々木ゼミナールの模擬試験を受けさせられましてね。特別に受験勉強していたわけではなかったのですが、たまたま得意な問題ばかり出て全国2位になっちゃったんですよ。それで親父の教育熱に火がついて、そこからは優秀な社員を家庭教師につけては毎日数時間、受験勉強させられていました。それで、筑駒(つくこま)と麻布に合格しました。

藤沢:東大「合格者数」1位はずっと開成高校なんですけど、開成は学生数が多いから「合格率」で見れば筑駒が日本トップなんですね。東京の筑駒と関西の灘が日本の最難関を競っている2校です。本来、高校の実力は「合格率」、もっと言えば「現役合格率」のほうが実力を表すのにふさわしいと思って、僕の本では、東大と京大の2022年2月入試での現役合格率を様々な資料から計算しました。灘はこれで見ると5位だけど、京大医学部に現役でたくさん合格しているんで、やはり日本の最難関は筑駒と灘なんですよね。その中でも、東京一極集中のせいか、最近は筑駒が優勢になってきていると思います。東京トップの筑駒の定員は120人なので、3000人も合格する東大に入るより難しいですね。

◆学年ビリから東大文一に現役合格

井川:でも、筑駒に入ってからはそんなに勉強しなくなっちゃってね。筑駒は校則があってないようなもので、制服や髪型の規制もないし、出席すら自由。大学と同じように7割以上出席していればOKで、期末試験で70点以上取れれば単位がもらえる仕組みでした。だから、出席日数を計算して、午後の授業を休んではパチンコに行ったり、麻雀をしていたら、すぐに学年でビリっけつになりましたよ。

藤沢:それでお父さんが怒って、ゴルフクラブで殴られながら勉強したと『熔ける』(幻冬舎)に書いてありましたね。

井川:そうそう(笑)。それからは親父がゴルフクラブ片手に、つきっきりで勉強を見ることになって。それもあって、高校3年生のときには駿台の夏記特別模試で総合全国20位ぐらいまで行ったかな。おかげで東大文一にも合格したと思っていますよ。

藤沢:話は戻りますけど、井川さんの最初の本の『熔ける』なんですが、正直、僕はギャンブルのほうは特に面白いと思わなかったんですよね。バカラなんて数学的にどうなるか最初から決まっていて、期待値がマイナスだから長いことやったらそれに収束してカジノ運営側が勝つだけで、別にやらなくても結論がわかってる。実際にその通りになっただけなんですよね。

でも、父と息子である井川さんの家庭の教育の話は、僕にとってはめちゃくちゃ面白かったんです。そして、お父さんの期待に応えて、井川さんは大学も最難関の東大文一に現役合格しちゃうんですよね。いまは官僚の人気がなくなっていますが、当時は東大法学部に進める文一が東大の中で頭ひとつ抜けた、東大の中でも最難関だったんですよね。

井川:親父は慶應だったんですが、東大合格は大喜びしてくれましたね。合格祝いにBMW 635CSiを買ってくれて、当時の値段で1000万円ぐらいでしたね。

藤沢:東大時代にもいろいろ遊んでいたようですね(笑)

井川:いま思うと、筑駒ではなく麻布に行って、高校時代からちゃんと遊んでおけば、ひょっとしたらこうはならなかったかもしれない、と。

藤沢:麻布も基本的に校則がなかったり、勉強も生徒の自主性にある程度委ねたりしていますね。受験対策は塾に行ったり、各自が勝手にやるイメージです。

井川:麻布は校則がない代わりに、「鉄下駄、授業中の出前、賭け麻雀禁止」っていう暗黙のルールがあるっていうのは、本当らしいですね(笑)

◆中学受験を煽るのは受験産業が儲けるため? 実はコスパのいい公立からの下剋上

藤沢:最近は受験対策まで学校でやってくれる中高一貫校が人気になってきていて、かつての御三家の武蔵は第二外国語を勉強させたり東大入試に役に立たないこともいろいろやっていて自由な校風で人気だったんですが、駒場東邦なんかが受験範囲を早く終わらせて高校3年生でたくさん入試問題の演習をするというオーソドックスな受験対策のカリキュラムで東大合格者数を伸ばした。そういう学校のほうが保護者にウケているようです。

神奈川聖光学院なんかも学校のカリキュラムがいいみたいで、最近の東大合格実績がすごいです。関西では奈良県の西大和学園なんかがすごく伸びてきています。中高一貫校の共学トップはこの西大和と千葉の渋谷教育学園幕張ですね。あとは、堀江(貴文)さんの母校の久留米大学附設ですね。

井川:いまでは「開成・麻布・駒場東邦」が“新御三家”らしいですね。

――一方で、藤沢さんは「無理して中学受験をさせるくらいなら、公立中学でもいい」と本に書いていました。

藤沢:昨今、中学受験が過熱していますが、文部科学省の学校基本調査によると、実は私立中学に通っているのは全体の8%程度でほとんど公立なんですね。調べたら、地方の旧帝国大学の合格者数の割合はそれとほぼ同じです。東大だけは有名私立一貫校の割合が突出して高まりますが、それでも東大でも半分は公立高校出身です。そう考えると、受験産業が煽るほど、中学受験に効果があるかは疑わしい。公立の教師は問題があるとかいろいろ言われていますが、勉強面に関しては昔と比べて公立の学校の質が上がっているように思います。

僕が子供のころの公立小学校には変な狂った先生がいろいろいたけど、僕が勉強を見ていた身内の子供はみんな公立小学校なんですが、なんか先生がみんなまともな人たちばかりで、無料でこんな教育が受けられるなんて日本はすごいな、と思いました。

井川:教師の質でいうと、当時の筑駒はヤバかったですよ。日本史の教師は自分が専門だからって高校1年生のときに明治六年の政変からはじまって、卒業するときもまだ明治十四年の政変だった(笑)。物理の教師も中学2年生のときにいきなり大学で習うような加速度円運動の公式とかを出してきて、「どうだ、難しいだろう」とか言って。おかげで物理が嫌いになりましたよ。

藤沢:それは筑駒のいい意味で狂った部分ですよね(笑)。でも、最近は、そういう変な教師は、良くも悪くもいなくなっていますね。公立でも私立でも。筑駒は国立ですが。

1000万円の教育費、偏差値はどれだけ上がる?

――私立の中高一貫校に行くには、金銭的な問題もつきまといます。藤沢さんによれば、私立の学校は6年間で授業料が約600万円、プラスそこに入るための中学受験塾で300万円、受験料などを合わせると(公立に行った場合と比べて)1000万円近い追加の教育資金が求められるという。

井川:筑駒は国立だから授業料が安かったですね。当時、中学は授業料がなくて教材費だけだったし、高校でも半期1万1000円。貧乏だけど優秀だから筑駒に来たという人も多かったですね。

藤沢1000万円の重みは各家庭で違いますけど、それが負担だと感じるなら、中学受験をしないことで浮かせた教育資金で短期留学などに回して英語の勉強をがんばって、公立中学から高校受験をしたほうがコストパフォーマンスはいいでしょうね。

井川:でも、小学生の頃からしっかり勉強していたほうが、その分、アドバンテージがあるんじゃないですか?

藤沢:それが、必ずしもそうとは言い切れないんですよ。僕は職業柄か、この1000万円で偏差値が期待値としてはどれぐらい上がるのかいろいろ調べたんですよ。欲しいデータが手に入らなくて確定的なことは言えないんですが、中学受験と私立中高一貫校の教育効果って、いろいろ断片的なエビデンスで見ていくと、せいぜい偏差値+1~+3ぐらいかな、といったところです。つまり、期待値としては、大学がワンランク上がるかもしれないくらいです。

井川なるほど

◆先取り学習の受験勉強はタイパが悪い

藤沢:現代の受験の必勝法は先取り学習で、とにかく早く受験範囲を終わらせて、入試問題レベルの演習をなるべくたくさんする、ということなんです。でも、これは実は一番効率が悪いともいえて、たとえば中学生がちょっと勉強したら連立方程式なんかわかりますが、小学生に理解させるにはそれよりずっと長い時間がかかる。だから、先取りよりも、受験直前の1年だけ猛勉強して一気に帳尻を合わせたほうが、費やす総勉強時間で見れば、圧倒的にタイムパフォーマンスは良くなります。まあ、もちろん間に合わないことも多いですけど。

井川:それまで全然勉強してなかったのに、高校3年生の1年間で猛烈に詰め込んだら早慶に合格できたなんてのもよく聞きますね。

藤沢:そうですね。ただ、やっぱり東大レベルになるとなかなかそうはいかないですね。英語・数学・国語に理系なら理科2科目、文系なら社会2科目で、しかもすべてで論述が必要な記述式の試験なんですよね。

井川:たしかに周りにいた東大生を見ても、地頭がいいのはもちろん、努力の土台ができている人間が多かったように感じます。いざとなったらスパートがかけられる。それが中学受験によって培われたものなのかはわかりませんが。

藤沢:そういう意味で東大がすごいのは、ボトム層でも全員が最低限、あの難しい入試をクリアしているから相当レベルが高いということですね。文系でもちゃんと数学ができる。だからこそ僕は不思議なんです。東大卒の井川さんがなんでカジノにハマったのか。期待値がマイナスゲームは、やればやるほど負けるということが決まっているのに……。

井川:痛いとこ突きますね。ただ、一つだけ反論させてもらうと、最近のカジノ理論ではそういう「大数の法則」ではなく「ゆらぎ理論」というのがあります。大数の法則で必ずマイナスになるなら、たった2~3日カジノプレイしただけで20億円近い金額のチップを積めるはずがないですから。運のゆらぎが上向いた時にどう乗っていくか。まあ、勝っている時にやめられるかどうかは、また別の話ですけどね(笑)

井川意高
1964年京都府生まれ。東京大学法学部卒業後、1987年大王製紙に入社。2007年6月、大王製紙代表取締役社長に就任、2011年6~9月に同会長を務める。社長・会長を務めていた2010年から2011年にかけて、シンガポールマカオにおけるカジノでの使用目的で子会社から総額約1068000万円を借り入れていた事実が発覚、2011年11月会社法違反(特別背任)の容疑で東京地検特捜部に逮捕される。懲役4年の実刑判決が確定し、2013年10月から2016年12月まで3年2カ月間服役した。著書に累計15万部のベストセラーとなった『熔ける 大王製紙前会長 井川意高の懺悔録』(双葉社、のちに幻冬舎文庫)や『熔ける 再び そして会社も失った』 (幻冬舎単行本)のほか、堀江貴文氏との共著『東大から刑務所へ』(幻冬舎新書)がある。
ツイッター@mototaka728

藤沢数希
外資系金融機関を経て、作家。メルマガ「金融日記」管理人。最新刊『コスパで考える学歴攻略法』(新潮社)が発売中。ほかに『外資系金融の終わり──年収5000万円トレーダーの悩ましき日々』(ダイヤモンド社)、『損する結婚 儲かる離婚』(新潮社)など著書多数。
ツイッター@kazu_fujisawa

(写真左から)井川意高氏、藤沢数希氏

(出典 news.nicovideo.jp)

ピックアップ記事

Twitterでフォローしよう

おすすめの記事