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タワマン暮らしの自称・勝ち組パワーカップル「不幸にしか見えない」と心配するワケ

森永卓郎がタワマン暮らしの“自称・勝ち組パワーカップル”を「不幸にしか見えない」と心配するワケ | ニコニコニュース

富裕層の代名詞ともいえる「タワマン暮らし」。しかし、エネルギーを大量消費するその暮らしぶりはリスクが大きいと、経済アナリストの森永卓郎氏はいいます。しかし、政府はそんな富裕層のライフスタイルを根本的に転換させようとは考えていないようです。いったいなぜなのでしょうか。テレビラジオなど多くのメディアで活躍する森永氏が、著書『増税地獄 増負担時代を生き抜く経済学』(角川新書)より解説します。

タワマンは“エネルギーの無駄遣い”

ある経済学者が試算したら、超富裕層は庶民の1万倍のエネルギーを浪費しているそうだ。もちろん、超富裕層とは、プライベートジェットを下駄替わりに乗り回している人たちのことなのだが、そこまで行かなくても普通のいわゆる勝ち組も、エネルギーを大量消費して、地球環境を破壊している。

タワマンは家に帰るだけでエレベーター100メートルほど持ち上げなければならない。それだけでとんでもない電気を使っている。

水道も自然には出ない。無理矢理ポンプで水を押し上げなければならないのだ。冷暖房は集中管理されていて、放っておいても床まで暖房してしまう。洗濯物は干してはいけないルールになっているので、すべて電気乾燥機で乾かす。

タワマンはとてつもなくエネルギー無駄遣いをしているのだ。そんな住宅を増やしていったら、地球環境が壊れるに決まっている。私はそう思う。

終の棲家に最適な「トカイナカ」暮らし

そこで私が勧めているのが、"トカイナカ暮らし"だ。ただ、わが家の周辺にも、いまは住宅がたくさん建てられているので薪ストーブは難しい。しかし、それも少し都心から離れれば可能だ。ノンフィクション作家の神山典士(こうやまのりお) さんがソーシャルシェアハウス「トカイナカハウス」を運営している、埼玉県ときがわ町(まち)まで行けばできるのではないかと思っている。

私が住んでいる埼玉県所沢(ところざわ)市には、ひと通りの都市機能があって、〝トカイナカ暮らし〟にはちょうどよかったのだが、少し都市化しすぎてしまった。今や所沢(ところざわ)駅の周辺には、タワマンがたくさん建っている。

トカイナカ暮らしを初めて知った人のためにあらためて紹介しておこう。

私は定年後の住まいの選択肢として、

①大都市に住み続ける

②田舎に移住する

③都会と田舎の中間のトカイナカに住む

という3つのパターンがあると考えている

トカイナカの定義は、まだ厳密に定まっていないが、都心から直線距離で40キロから60キロ程度の地域だと考えている。言い換えれば、列車で都心から1時間前後で到達できる地域となる。東京圏で言えば、圏央道首都圏中央連絡自動車道)周辺の地域だ。

トカイナカには田園風景が広がり、田舎に近い自然環境が得られる。それでいて都心に通勤する人も多くて、一定の人口密度があるから、都市機能もそれなりに備わっており利便性は高い。

人間関係も田舎ほど濃密ではないものの、都心ほど空疎でもない。あらゆる意味で都会と田舎の中間だから、両者のいいとこどりができる場所と言える。

所沢もトカイナカ暮らしに適した場所だったが、最近は都市化が進んでしまい、少し状況が変わってきた。先日も不動産会社がわが家に挨拶(あいさつ)に来て、「この辺は、まったく土地の値段上がっていませんけど、所沢駅の周辺だけはバブルになっていますよ」と言っていた。

つまり、所沢駅周辺にも自分は富裕層だと勘違いした、自称エリートサラリーマンたちがやってきているということだろう。彼らがガンガン稼いで税金と社会保険料を支払ってくれるのはよいのだが、その暮らしで本当にいいのか、心配になる。

私からすれば、不幸にしか見えない。「年をとってから、この人たちはどうするんだろう」と考えてしまう。

リスクだらけの「タワマン暮らし」を国が止めないワケ

タワマンに住むようなパワーカップルは、できるだけ上層階を買いたがる。そこから下界を見下ろして、「俺ら勝ち組だぜ」と自分に酔っているわけだが、夫婦ともに35年ローンを組んでいたりする。

夫婦どちらかがリストラにあえば、すぐに破綻(はたん)するし、タワマンの資産価値が暴落する可能性もある。現実に韓国や中国ではひどいことになっている。不動産バブルが崩壊して売るにも売れない。しかも金利が上がってきているので、住宅ローンが返せなくなってきている。

トカイナカで自産自消の生活をすることは、災害時にも安心だ。流通が止まって食品が買えなくなっても、わが家は畑からジャガイモサトイモを掘ってくれば何とかなる。政府は30年以内に7割の確率で首都直下地震が発生すると言っているが、リスクはそれだけではない。東京北部に線状降水帯が停滞して荒川(あらかわ)が決壊すれば、東京23区の3分の1が浸水する。

私の事務所東京都中央(ちゅうおう)区の八丁堀(はっちょうぼり)にあるが、浸水深2メートル80センチになるとされている。1階の天井付近まで水没することになる。

それでも政府は国民のライフスタイルを根本的に転換させようとは考えていない。資本主義の奴隷として国民を位置付けているからにほかならない。そのほうが都合はいいのだ。税金は庶民に押し付けて富裕層はほとんど払わない国にしようとしているのだ。

森永 卓郎

経済アナリスト

獨協大学経済学部 教授

(※写真はイメージです/PIXTA)

(出典 news.nicovideo.jp)

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