非常に複雑…相続税の計算方法。自分はいくら払うべきか?「早見表」で手早く予測!【税理士監修】 | ニコニコニュース
被相続人から財産を相続した際にかかるものが相続税です。「相続が発生した場合に自分には、どれくらい相続税がかかってくるのか」気になる方は多いのではないでしょうか。本稿では、税理士法人ブライト相続の天満亮氏監修のもと、手早く相続税の額を概算できる便利な早見表や、相続税の計算方法について解説します。
相続税は相続財産と法定相続人により決まる
相続税の金額は、相続財産の価格と法定相続人の人数によって決まります。まずは、相続財産と法定相続人の考え方を理解しておきましょう。
相続財産の考え方
相続財産とは、被相続人が亡くなった時点で保有していた財産のことで、遺産とも呼ばれます。
例えば、
・土地・家屋
・株式・投資信託
・貴金属宝石類
・預貯金・現金
などの金額を見積もれるすべての財産をいいます。日本国内にある財産はもちろん、日本国外にある財産も相続財産です。
ここで注意が必要なのは、相続税がかかる財産は実質的な総額を計算する必要があるという点。先ほど挙げた以外にも相続時精算課税を適用した財産を足したり、故人の債務や葬式費用を差し引いたりすることで、相続財産額を求めていきます。
図にすると、下記の通りです。
このように求めた金額が、法定相続人の純粋な相続財産の額です。税法上この金額は課税価格と呼ばれます。
法定相続人の考え方
法定相続人とは、民法によって規定された被相続人の財産を相続できる人のことです。具体的にいうと、亡くなった人の子、父母、兄弟など一定の血族が該当します。配偶者も法定相続人となりますが、事実婚や内縁関係の場合は、法定相続人にはなれません。
配偶者以外の法定相続人には優先順位があり、第1順位は被相続人の子、第2順位は父母、第3順位が兄弟です。上の順位の人がいる限り、下の順位の人は法定相続人になれないと決められています。また、異なる順位の人が同時に法定相続人になることはありません。
法定相続人を確定するためには、被相続人の戸籍を出生まで遡り調べます。遺産分割の内容を決める遺産分割協議は、法定相続人が1人でも欠ければ無効になってしまうためです。
基礎控除の計算方法
相続の基礎控除額は、次の計算によって算出します。
【3,000万円+600万円×法定相続人の数】
例えば、法定相続人が配偶者、子供2人の場合は、法定相続人は計3人となりますので、以下のような計算で基礎控除額を求めます。
相続税の税率
相続税の計算方法
相続税の計算方法について、順番に解説します。
まずは、課税遺産総額を計算します。計算式は次のとおりです。
【課税価格の合計額-遺産にかかる基礎控除額=課税遺産総額】
課税遺産総額が求められたら、続いて課税遺産相続額を法定相続分に応じて取得したものとして仮定し、各相続人の取得金額を算出します。あくまでも「法定相続分に応じて取得したものとして仮定」するに過ぎませんので、この計算の段階においては、まだ実際の遺産分割協議の内容(財産の分け方)は一切考慮しません。
次に法定相続人ごとの取得金額に税率をかけて相続税の金額を求めます。
【各相続人の取得金額×税率=相続税の金額】
このように相続税の計算は非常に複雑です。そこで便利なのが次にご紹介する相続税の早見表です。
相続税の早見表
概算にはなりますが、自分がいくら相続税を支払う必要があるのかを手早く知れる相続税の早見表は次の通りです。
①法定相続人が配偶者と子供の場合
※法定相続分で遺産分割をしたと仮定
※表は子供全員分を合わせた相続税額
※配偶者控除を適用した相続税額を表示
【早見表の見方】
遺産総額 1億円 法定相続人 配偶者と子供4人の場合、早見表内に記載されている相続税の金額は225万円です。この225万円は子供4人分の総額であるため、子供1人あたりの納税額は225万円を4人分で割る必要があります。
計算式は以下のとおりです。
225万円÷4≒56万円
よって、子供1人あたりの相続税額は約56万円となります。
なお、配偶者は配偶者控除の適用で相続税が0円ですが、この場合でも申告義務はありますので忘れずに申告してください。相続税の配偶者控除については後述します。
②法定相続人が子供のみの場合
※各子供が法定相続分で遺産分割をしたと仮定
【早見表の見方】
・遺産総額:1億円 法定相続人:子供4人の場合
早見表内に記載されている相続税額は490万円です。この490万円は子供4人分の総額であるため、子供1人あたりの納税額は490万円を4人分で割る必要があります。
計算式は以下のとおりです。
490万円÷4≒122万円
よって、子供1人あたりの相続税納税額は約122万円になります。
相続税の配偶者控除とは?
早見表の①で少しお伝えしたように、相続税では配偶者控除があります。正確には「配偶者の税額軽減」といい、相続によって財産を取得した配偶者の相続税額を軽減する特例です。具体的には、1億6,000万円か法定相続分のどちらか大きい金額までは、相続しても相続税がかからない仕組みになっています。
配偶者控除を使えば、多くの場合で配偶者に相続税がかかりません。しかし、これは両親のどちらかが被相続人となり、配偶者と子供が相続人となる一次相続でのみ使用できる特例です。
二次相続では控除がなくなるので税額が増える
配偶者控除は一次相続の場合しか使えず、二次相続では使用できません。早見表の見方①②をそれぞれご確認ください。
例えば相続財産が1億円のケースをご紹介していますが、①の場合は配偶者控除の適用があり、配偶者の相続税額は0円になります。子供1人あたりの相続税額は56万円です。一方、②の場合は法定相続人が子供のみとなるため配偶者控除の適用がなく、子供1人あたりの相続税額は122万円となります。同じ相続財産の1億円でも、相続税額が大きく変わってくるのです。
相続全体を見て相続内容を決めたほうがいい
一次相続のみを考えて相続内容を決めてしまうと、後に発生する二次相続の際に多額の相続税がかかってしまうケースがあります。相続においては、相続全体を見て内容を決めるのが賢明といえるでしょう。
相続税支払いの期日と支払い方法
相続税は、相続開始を知った日から10ヵ月以内に行うこととされています。
例えば、1月6日に被相続人が死亡したことを知った場合には、その年の11月6日が申告期限になるということです。
また、相続税は申告期限までに現金で一括納付するのが原則です。しかしながら、現金で一括納付できないという人のために、特別な納付方法として「延納」と「物納」があります。「延納」は何年かに分けて税金を支払っていく制度です。税務署に申告期限までに申請書を提出して、許可を受けた際に利用できます。
出典:国税庁「No.4205 相続税の申告と納税」
相続税支払いにおける注意点
相続税の支払いが必要な人が申告期限までに申告・納付をしなかった場合には、相続税のほかに加算税や延滞税などの税金がかかる場合がありますので注意が必要です。「自分には相続税の申告や納付が必要なのか」「相続税の申告はどのようにするのか」など、相続が発生した際には知っておきましょう。
相続税の計算は複雑ですので、手早く自分の相続税概算額を知れる早見表は非常に便利です。しかし、早見表はあくまでも予想額になります。相続税の申告が必要だとわかったら、専門家に相談してみてはいかがでしょうか。被相続人になる人が健康な状態であれば、生前贈与の対策を行うなどして早見表に記載されていた金額よりも相続税が減額できるかもしれません。相続税対策は、早めの行動をおすすめします。
天満 亮
税理士法人ブライト相続
税理士