なぜ外資系企業の社員は「絶対に定時」で帰れるのか…時間の使い方が劇的に変わる「7つの約束」 | ニコニコニュース
※本稿は、飯田剛弘『やることを8割減らすダンドリ術』(大和書房)の一部を再編集したものです。
■うまくいかないなら「がんばり方」を見直そう
がんばっているけれど、なかなか思うように進まず、締め切り前になると、いつもバタバタ。
やることがたまって、どこから手をつけていいのかわからなくなり、途方に暮れる。
先延ばしグセがたたって、気がつけば、自分の時間がほとんどない。
えいやっとばかりに山積みのタスクにいざ向き合えば、努力が無数の方向にバラバラになって、どこにも成果が見えてこない……。
ああ、もっとダンドリがうまかったらなあ!
こんな状況に陥ってはいませんか?
心当たりがあるあなた。もしかすると、これまでのがんばり方を見直してもいいタイミングなのかもしれません。
僕自身、あるとき、自分の「がんばり方」を思い切って見直したことで、時間の使い方や人生が、ガラリと変わった人間です。
それは、「すべて一人で完璧にやろうと、何でもかんでもがんばらない」という考え方に出合ったからです。「え? がんばらない?」と聞くとちょっと戸惑うかもしれませんが、それが僕の生活を一変させました。
■外資では「定時内」に成果を出すのが当たり前
大学卒業後に、はじめて入ったベンチャー企業では、僕は「とにかくがんばる」「週末もがんばる」みたいな感じで、仕事中毒になっていました。当時、がんばればがんばっただけ成果が出たこともあって、さらにがんばろうという気持ちになり、かなり長時間、仕事をしていました。
しかし、外資系企業に転職したときに、この「がんばる」だけでは、うまくいかないことを痛感しました。今となっては日系企業でも当たり前のことですが、僕が転職した外資系企業では、残業して結果を出すなんてもってのほか。「定時内」で成果を出す必要がありました。
今までの僕の「がんばる」は、「長時間、がんばって仕事をする」「気合と根性でがんばる」という意味だったので、外資系企業で必要とされる、限られた時間で成果を出すためのがんばり方ではなかったのです。今すぐ根本的に働き方や考え方を変えないと、自分の役割を果たせないということを悟りました。
また同時に、「自分のペースで進むことが大切だ」とも気づきました。他の人と比べて、無理に自分にプレッシャーをかけたり焦りを感じたりすることはない。むしろ、その焦りが、ミスや失敗を引き起こすことも多いのだ、と。
■「がんばらない」選択をすることが大切
そこで、「成果を出すために、どの仕事に集中すべきか?」「なぜ、それに取り組むのか?」という大切な質問に真剣に向き合い、考え始めました。
その結果、「効果が高い仕事に集中する」こと、また、「クリティカル(きわめて重要なこと)かどうかで判断し、やらないことを増やす」ことなどが、ダンドリの成功のカギだと理解しました。
ただ同時に、注意しなければいけないこともわかってきました。
それは、「がんばらない」という選択をすることも大切だということです。
通常、僕たちが「がんばる」って考えたとき、「あれもやらないといけない」「これもやらないといけない」と考え、かえってやることを増やそうとしてしまいがちです。
ただ、それらの作業は、相手が納得する成果を出すために、絶対に必要な活動とは限りません。つまり、「本来なら、あなたがやらなくてもいい仕事」を、自分で増やしている可能性があるのです。
これは逆にいえば、「がんばらない」を選ぶことで、「不必要な仕事の増加」を止めることができるということです。僕たちは、そんなちょっとしたことで、自分の時間を奪うものを、減らすことができるのです。
■自分や周囲、顧客にも“いいことずくめ”
強調してお伝えしたいのですが、「がんばらない」というマインドを持つこと、それはサボることではありません。限られた時間で、効果が高い仕事に集中し、よりよいパフォーマンスを引き出すためには、絶対必要なことなのです。
これにより、僕たちは「限られた時間の使い方」が改善され、毎日をより充実させることができます。自分にとっても、周囲にとっても、もちろんお客様にとっても、“いいことずくめ”なのです。
もし、周りからの期待に応えられないと不安を感じるときは、自分の気持ちや今の状況をきちんと言葉にして、相手に伝えましょう。
外資系企業で海外のメンバーと毎日仕事をしていた僕の経験から言うと、日本人は、このちょっとしたコミュニケーションが苦手な傾向があると思います。そのため、高い能力をお持ちでありながら、思うような成果を上げられていないケースが多いと感じます。これは、とてももったいないです。
拙著『やることを8割減らすダンドリ術』では、その「ちょっとしたこと」のポイントとコツをお伝えし、ダンドリのうまい、要領のいい人になっていくコツをご紹介しています。
■「絶対に必要なこと」以外はやらない
本当に大事なのは「クリティカルでなければ、とにかくやらない」という考え方です。ここでいう「クリティカル」とは、「きわめて重要」や「深刻」、「大きな影響を及ぼすこと」というくらいの意味合いです。
つまり、「絶対必要でなければ、とにかくやらない」という考え方のことです。
ダンドリ上手な人は、進め方がうまいだけではありません。自分が「やるべきこと」と、「やらなくてもいいこと」を見分けるのがうまいのです。自分のやりたいことや、やるべきことには全力を注ぎますが、それ以外のことには気をつかわないのです。
やらなければならないことを増やさないためにも、「やらないと深刻な問題になることや、あとから修正するのが難しいこと」だけに集中することをオススメします。
目指すべきは「8割やらない」ことです。
■効果的な2割に集中すると成果が出る
なぜ8割かというと、僕の経験から来ている数字なのですが、きちんとした根拠もあります。突然ですが、「パレートの法則」というものをご存じでしょうか。別名、「80対20のルール」とも呼ばれます。これは、全体の成果の80%が、全体の努力の20%から生まれるという考え方のことです。つまり、効果的な20%のタスクに集中すれば、効率よく全体の成果を出すことができるということです。
常に、「使った時間に見合うだけの効果があったのだろうか?」「かけたお金に見合う効果があったのだろうか?」といった具合に、「何をやると、より高い効果があるのか」を考えてから、効果が高いと思われることに集中することを意識してみましょう。
すると、「あれもこれもやらないといけない」という発想から「これだけはしっかりやろう」という考え方に変わってきます。たったそれだけでも、仕事にかける全体の時間は、それまでよりもグッと減ります。
■まずは「やらないことリスト」をつくろう
本当に、自分にとって捨てられない、大切なこだわり。それを探るためにできる、具体的な方法をお伝えします。
それが「やらないことリスト」をつくることです。
その日にやることを書き出す「やることリスト」や「To Doリスト」を普段から活用している方は多いと思います。それでも、こうしたリストを活用していても、思うようにやるべきことが終わらなかった。そんな経験は誰にでもあるかと思います。
それが不必要なストレスになり、やる気がなくなり、ため息が出たり、「やることリスト」すら見たくない……みたいなことって、よくあると思います。
これは、一概に、すべての人がそうとは言えませんが、でも、僕は多くのダンドリがうまくいかないとお悩みの方々の相談を伺ってきた経験から、確信を持っていることがあります。
多くの方の「ダンドリ下手」というお悩みの根源は、実は、やり方よりも、単純にやることが多すぎるからではないかということです。
基本的には、「クリティカルなこと」。すなわち、「やらないと大問題になること、直すことができないこと」だけをやることをオススメします。
しかし、それ以前に行える対策があります。それが、冒頭で述べた「やらないことリスト」づくり。
このリストをつくることで、自分がやらなければいけないと感じていることを減らすのです。すべてに全力で取り組む必要はないのです。
自分にとって「必要なモノ」だけが見えてくる「やらないことリスト」って何でしょうか。
それは、自分が「避けるつもりの行動」をリスト化したものです。
何をやらなくていいかを決めると、何をやるべきかが見えてきます。「やりたい!」と思っていたことが、実はそんなに重要でなかったり、時間の無駄だったことに気付くかもしれません。
これは部屋の掃除に似ています。不要なものを捨てると、部屋の印象だけでなく心まで軽くなり、今、自分にとって必要なものは何かということや、本当に大切なものが見えてきますよね。
どんなことに時間を使うべきかが、自分の中でハッキリします。
■「やらないことリスト」の作り方
自分がどのように時間を使っているかを洗い出し、そこから何を避けるべきかをリストアップすることが大切です。今まで当たり前のように行っていたことや、自分が負担に感じていたことも、「やらないことリスト」に含める対象にしなければなりません。以下に、押さえておきたいポイントを紹介します。
1 まず、「自分でやろうとしない」が大前提
まずは、「そもそも、やらなくていいこと」を洗い出します。次に考えるべきは、「他の人に頼めることはないか?」です。「頼める、頼めない」を考える前に、「他の人にお願いできたら、どんなメリットが自分にあるか」を具体的に想像し、リストに加えてみるのです。たとえば、他の人に頼んだことで得られる自分の時間を、どう使えるかを考えてみましょう。
2 「なぜ、やらなければならないのか」と自問自答する
「以前からやっていたから」とか「何となく」という理由でやり続けていることは、「やらないことリスト」の筆頭候補です。「その行為が、目標達成にどれほど貢献しているか」も合わせて、自分に問いかけてみましょう。自分自身と向き合い、ホンネで答えることが大切です。すると、本当に重要なことと、他人との約束事以外のことは、徐々に「やらないことリスト」に移っていきます。
たとえば、毎月購読していた雑誌。いつの間にか「雑誌を買わなくてはいけない」というルールが、自分の中でできてしまっているのかもしれません。しかし、ひょっとしたら、それが時間とお金のムダになり、肝心の雑誌が、以前ほど楽しみでなくなっていたことに気づくかもしれません。他にも、サブスクを契約していることが「動画を見なければ」というプレッシャーになっている……という話も、最近よく聞きます。
3 自分に対する正直さを持つ
自分が絶対にできないと思うことや、守れないことを無理に「やらないことリスト」に入れないでください。それは自分自身への不必要なプレッシャーになります。自分を理解し、優しく対話をすることが大切です。たとえば、仕事でSNSを使う人が、「プライベートでは、一切、SNSを使わない」という項目を「やらないことリスト」に追加しようとすると、その実行はかなり難しいかもしれません。最初から達成困難が見えている項目は、「やらないことリスト」には入れないほうが無難です。
4 具体的な行動を記載する
たとえば、「SNSを見ない」より、「この作業が終わるまでは、SNSを見ない」と具体的に決めるほうが、避けるべき行動をイメージしやすくなります。具体的な行動を決めることで、「無理なく続けられる」という心理的な安心感が生まれることもあります。
5 やらないことを視覚化する
避けるべき行動をメモしたりして、それを見える形にすることで、それを避ける意識がより強まります。それをデスクやPC、スマホの画面など、目につきやすい場所に貼っておきましょう。
6 「やらないことリスト」は定期的に見直し、更新する
時間が経つにつれて、優先事項が変わり、やらなくてもよくなることがあります。リストは自分の現状や環境、目標に合わせて、時には柔軟に更新することが大切です。
たとえば、新しい仕事を始めたとき、業界の最新のすべての情報を知りたいと思うかもしれません。でも、すべてのニュースを追っていると、他の重要な仕事に時間を使えなくなってしまうこともあるかもしれません。
そんなときは、「すべてのニュースを読む」を「やらないことリスト」に入れて、「自分の仕事に直接かかわる、重要な情報だけをチェックする」に切り替えてみましょう。
そうすれば、時間をもっと上手に使うことができます。
時間がたてば、自分達の状況や優先事項などは変わるものです。そのため「やらないことリスト」も時折、見直し、更新しましょう。
7 「やらない」習慣が身につくまでの時間は、ある程度かかると思っておく
初めて「やらないことリスト」をつくり、やらないということに実際にトライしてみると、不安や違和感を感じるかもしれません。ですが、これは当たり前のことです。
僕たちは、習慣の生き物です。時間をかけて変化するものだと理解し、まずは3日間続けてみてください。
それができたら、3週間、次に30日、3カ月と、「3」のつく目標を設定し、続けてみましょう。新たな習慣が身につき、効果を感じられると、初めの不安が満足感に変わってきます。
自分の時間を大切にするための「やらないことリスト」。はじめは戸惑うかもしれませんが、少しずつ習慣にしていくと、毎日の生活を自分でコントロールしているという実感がわいてくると思います。
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マーケティングコンサルタント
南オレゴン大学卒業後、インサイトテクノロジーに入社。データベースのプロフェッショナルとして、プログラミング、コンサルティング、米国での海外事業開発を経て、2004年からインド企業とのソフトウェア共同開発に従事。2009年、ヘッドハンティングされ、外資系製造企業FAROに入社。日本市場のマーケティングに従事。展示会など従来からある活動の改善から、Webマーケティングにも力を入れる。2020年、ビジネスファイターズ合同会社を設立。著書に『仕事は「段取りとスケジュール」で9割決まる!』(明日香出版社)、『令和上司のすすめ 「部下の力を引き出す」は最高の仕事』(日刊工業新聞社)など。
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