楽天改悪? 実際は楽天モバイルユーザーがお得に | ニコニコニュース
楽天グループは11月1日、SPU(スーパーポイントプログラム)の特典内容を12月1日より変更すると発表した。これを受けて、ネット上では「改悪だ」とちょっとした炎上騒ぎに発展。ライバル会社であるKDDIの髙橋誠社長も「他社のサービスなのであまり言えないが、ネットを見ているとポジティブな反応ではなかったようだ」とコメントするほどだった。
楽天グループは全体で見れば堅調に稼いでおり、成長を描けているのだが、唯一、楽天モバイルが「お荷物」となってしまっている。同社が全国に展開した基地局に対する設備投資費がかさんでおり、赤字体質を脱却できていない。今後、楽天グループで1兆円を超える社債の償還が迫るなど火の車であることは変わりない。
これまで楽天グループとしては、一部のユーザーに対してポイントを付与しすぎていた傾向があったようで、今回の特典改定で、そのあたりを軌道修正。少しでも赤字体質を改善したいのだろう。
では、実際のところ、本当に「改悪」なのか。
今回の改定はザックリ言えば「楽天モバイル強化」といえる内容だ。
そもそもSPUとは楽天グループ内の様々なサービスを複数、利用することで、ポイント付与率がアップするというものだ。「楽天経済圏」として、ユーザーが楽天グループが提供する様々なサービスを利用することで、ポイントがザクザク貯まるというのが魅力であった。
今回の改定により楽天モバイルのユーザーであれば、毎日、5倍のポイントが付与されるようになる。これまでの楽天モバイルユーザーはダイヤモンド会員なら4倍、それ以外なら3倍となったような会員のランク付けに応じた倍率であったが、これが「楽天モバイルユーザーなら等しく、全員毎日5倍」に変わったのだ。
また、楽天モバイルのキャリア決済においては0.5倍から2倍に変更、固定インターネット回線の楽天ひかりや、ホームルーターのRakuten Turboに関しては1倍から2倍に強化されている。
ただ、ネット上で「改悪」だと叫ばれているのが、ポイント付与の上限だ。
楽天モバイルではこれまで獲得上限ポイントが7000ポイントだったのが、2000ポイントに下がっている。キャリア決済も5000ポイントが1000ポイント、楽天ひかりとRakuten Turboも5000ポイントから1000ポイントに減額だ。
楽天プレミアムカードに至ってはこれまで1万5000ポイントの獲得上限が、5000ポイントまでに減らされている。また、ポイント以外でも楽天プレミアムカードは海外や国内の空港においてラウンジが無料で使える「プライオリティ・パス」を提供しており、これがこれまで使い放題だったのが、2025年以降は年間5回まで無料という回数制限がついてしまった。
楽天カードでは、さすがに改悪で申し訳ないと思ったのか、年会費の返金を受け付ける体制も整えたほどだった。
「とにかく楽天モバイルを契約してお得になってね」というメッセージ
今回の特典内容の変更は楽天グループの狙いとしては「とにかく楽天モバイルを契約してお得になってね」という明確なメッセージが込められている。
実際、ポイントの担当者によれば「今回の特典改定で、8割以上のユーザーは獲得ポイント数が増加するか、変わらない」としている。楽天カードや楽天銀行などのユーザーに一部、影響はあるようだが、むしろ、楽天モバイルユーザーは8割以上が獲得ポイントが増えるようになっているようだ。
楽天経済圏の「コア」ともいうべきSPUを楽天モバイルを中心に据えてきたというのは、やはり楽天モバイルの顧客獲得に手応えを感じてきたということだろう。
契約者数は500万を超え、KDDIとのローミング契約を見直し、自社エリア外でもデータを使い放題にした「最強プラン」開始以降も、毎月20万近い新規契約を維持できているようだ。
KDDIとのローミング契約を打ち切ることも可能となる「プラチナバンドの割り当て」も実現し、楽天モバイルのネガティブ要素はかなり払拭された印象がある。
やはり、楽天モバイルを契約し、定着して使うようになると、他の楽天グループのサービスも使うようになり、結果として楽天経済圏にどっぷりと使っていくユーザーが増えているようだ。
最近では、楽天モバイルを紹介すると1人につき7000円相当のポイント、紹介された側も初めての申し込みで6000円相当のポイントがもらえるキャンペーンにより、家族や学生、外国人の間で楽天モバイルの契約が増えているという。
家族まるごと契約し、毎月、数百円安くなるより、一気に7000円分のポイントをもらった方がお得と考える家族が多いようだ。
「契約してみるか」ユーザーの背中押す施策と言えるかも
冷静に考えてみると「楽天改悪だ」と叫んで、楽天経済圏を飛び出したとしても、これまでの楽天のようにポイントをザクザク付与してくれる経済圏は皆無に等しい。
「海外ラウンジが5回しか無料にならないとはけしからん」と声高に叫んでいる人は、実際、年間5回以上、海外ラウンジを利用している人なのか。
そもそも、そんなに毎年頻繁に海外に渡航しているような人は、どこかの航空会社の上級会員であることがほとんどであり、アライアンスのラウンジに出入りできるはずだ。筆者も年間10回近く海外取材に行っているが、そのほとんどがアライアンスのラウンジを使っており、プライオリティ・パスのお世話になるのは年に1〜2回といった程度だ。確かに格安航空会社をメインに利用している人や、乗り継ぎでラウンジを利用すれば往復で4回分、消費してしまうので影響がある人もいるかもしれない。
楽天グループはこれまで、楽天市場での送料を改革したことで出店者が反発したり、楽天モバイルでもゼロ円プランを廃止したことで、大炎上したことがあった。
ただ、そうした危機、反発に対しても三木谷浩史会長はどこ吹く風で乗り切った経緯がある。今回のSPUの改定は、いまだに楽天経済圏にいるが楽天モバイルを契約していないドコモ、au、ソフトバンク、MVNOユーザーにとって「いよいよ、契約してみるか」という背中を押す施策と言えるかもしれない。