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「子どもは叱るべき」「叱ってはダメ」の最終結論…子どもの行動を変えるために、大人が知っておくべきこと

「子どもは叱るべき」「叱ってはダメ」の最終結論…子どもの行動を変えるために、大人が知っておくべきこと | ニコニコニュース

言うことを聞かない子どもの行動を変えるには、どうすればいいのか。児童精神科看護師のこど看さんは「強く叱って動かしていると、子どもは『やらされている』と感じて無力感を持ってしまう。重要なのは、行動を変えてほしい理由を落ち着いて伝えることだ」という――。(第2回/全3回)

※本稿は、こど看『児童精神科の看護師が伝える 子どもの傷つきやすいこころの守りかた』(KADOKAWA)の一部を再編集したものです。

■過度な期待が子どもへの怒りを湧かせる

どうして子どもに対して怒りが湧くのでしょうか? 私の経験上、子どもに対して「裏切られ感」を持った瞬間に怒りが出現しやすいと感じています。

「自分はこれだけやっているのに、どうしてこの子は応えてくれないの」というような「裏切られ感」は、自分が持つ「子どもに対する期待」と「子どもが起こした結果」の差が大きくなったときに出現する感情です。つまり、子どもへの期待が大きければ大きいほど、「裏切られ感」が生まれやすく、それが子どもへの怒りにつながるのです。

できれば子どもに怒りたくないのはみなさんも同じだと思いますので、怒りにつながる「裏切られ感」の出現を予防する方法をひとつ紹介します。それは、自分の感情に注目し、自分と対話するという方法です。

■期待しないことは難しくても自分の感情に気づくことはできる

例えば、子どもが部屋を片づけない状況に対して怒りが出てきそうになったとき、「あー、結構イライラしてるねー。まあまあ、ちょっと考えてみよう。毎日片づけるのって大人でもめんどいじゃん? でもさ、ほら見てみなよ。あの子お菓子の空袋はゴミ箱に捨てられてるみたいだからさ、そこは褒めてあげてもいいんじゃない?」といった具合に、自分の感情に注目して、自分が自分に語りかけるイメージで対話をします。

すると、「怒りの種(子どもへの過度な期待)を持っていたのは自分で、それをまいていたのも自分だったのかも?」と、怒りの正体である裏切られ感にそれとなく気づくことができます。

子どもに一切期待しないのはとてつもなく難しいですが、自分が持つ子どもへの大きな期待に気づくことはそこまで難しくありません。この方法は自分の怒りに気づくトレーニングにもなりますので、ぜひともお試しください。

■叱ることで子どもを動かしていると何が起きるか

子どもを叱ったほうがいい派」と「子どもを叱らないほうがいい派」の議論をたまに見るのですが、私は「叱ってもあんまり意味がない派」です。

これは「絶対に叱っちゃダメ! 叱らないほうが効果的!」と考えているわけではありません。子どもが道路に飛び出したときなど、安全を守るためには叱ることも必要です。一方で、子どもに危険が迫っていない場面では、基本的に「叱ってもあんまり意味がないな……」と考えながら子どもと接するようにしています。

例えば、宿題をせずにずーっとスマホを触っている子に、「スマホやめて宿題しなさい!」と強く叱ったとします。おそらく、その子はスマホをやめて宿題をすることでしょう。「じゃあ叱るって効果あるじゃん!」と思われるかもしれませんが、ここからが本題です。

宿題をせずスマホを見ていた子が、強く叱られたことによって宿題に取り組んだ結果になりました。しかし、この行動は、子どもの内側からの「宿題をやろう」という思いをベースとした自発的な行動ではなく、外側から「宿題をやりなさい」と叱られたことによって引き起こされたものです。つまり、「宿題をしている」ではなく、「宿題をさせられている」という思いで、宿題に取り組んでいるということです。この状況が毎回続くと、「宿題はやらされるもの」という認識が強くなり、宿題に対して強い拒否感を持つ可能性が高くなります。

子どもの行動を大人の「叱る」という行動で半ば強制的に変化させ続けると、子どもの「させられ感」を育ててしまい、自分の力で自分の行動をコントロールしているという実感が損なわれてしまいます。

■「言うことを聞いてくれた」が成功体験になってしまう

そしてもうひとつ気を付けなければいけないことがあります。それは、「叱ることがその子のためになる」と叱る側が思い込んでしまうことです。先ほどの子は、叱ることでスマホをやめて宿題を始めたので、叱った側は「言うことを聞いてくれた」と感じるでしょう。この「言うことを聞いてくれた」という感覚は、「叱ると子どもが変わった」という成功体験になり得ます。この成功体験が積み重なると、「叱ることは有効だ」という信念を強め、また次も叱るという行動をしたくなります。

しかし、子どももだんだんと叱られることに慣れてくるので、以前のように「スマホやめて宿題しなさい!」という強い言葉だけでは歯が立たなくなってきます。すると今度は、叱る側が「もっと強く叱らなければ」という思いになり、口調や言葉がさらに強いものとなって、自分は「叱っている」つもりでも、客観的に見たら「怒鳴っている」状況になりかねません。さらには、子どもが言葉でもなかなか言うことを聞かないようになってくると、ついには手が出てしまうことにまで発展する可能性も否定できません。

「叱る」という行為は、あくまで「子どもに行動を変えてほしい」という大人からのお願いです。落ち着いた口調で、どうしてその行動を変えてほしいのか、その行動がどのようにその子の今後に影響するのかを穏やかに伝えてほしいのです。

■子どもは自分で自分をコントロールする力を持っている

こういった話をすると、「まずは言うことを聞かせることが大切だ」「子どもに好き勝手させるのか」というご意見をいただくことがあります。しかし、子どもの力を信じているのであれば、まずは「さとす」という方法をとるべきではないでしょうか。子どもは自分で自分をコントロールする力をたしかに持っていますし、その力を今まさに伸ばしている真っ最中です。

だからこそ、「あなたには自分の行動を自分の力で変化させる力があると思うんだ。だから今、あなたがしている行動を変えてほしいんだ」という大人からの願いを、穏やかに伝え、さとしてほしいのです。

子どもに危機が迫っている場面では叱る必要があります。しかし、子どもが言うことを聞かないと感じた場面で、毎回叱る必要があるのでしょうか? そして、毎回叱ってくる人の言うことを子どもは聞きたいと思うでしょうか?

できれば、「いつも叱ってる人」ではなく、「ほとんど叱らない人」になり、いざ子どもを叱る場面では、「いつもは叱らないこの人が叱ってるってことは相当マズいことしちゃったんだな……」と思ってもらえる存在になれたらいいですよね。

■忘れ物を責めるのはデメリットのほうが大きい

一度も忘れ物をしたことがない人はこの世に存在しないはずなのに、学校や支援の現場では、子どもの忘れ物に対して厳しすぎると私は感じています。「どうして忘れたんだ!」と詰め寄ったり、「次は絶対に忘れないように!」とその場で約束をさせたり。

私はこのような、「忘れ物はよくないこと」という意識を持って子どもとかかわることをおすすめしません。

もちろん、忘れ物が多すぎるとその子が学習に参加する機会を失ってしまうなど不利益が生じるので、子どものためを思って「忘れ物はよくない」と言ってしまう大人の気持ちも十分に理解できます。しかし、「一切の忘れ物を許さない」という姿勢は、子どもに「忘れ物は悪」という意識を刷り込み、忘れ物をするたびに「忘れ物をした自分がいけないんだ」と、自分自身を責めさせ、自己評価を下げさせてしまうことが考えられます。

■重要なのは、忘れない仕組みをどうやってつくるか

「忘れ物をしない」よりも大切なことは、「忘れ物をしたときにどうするか」「忘れない仕組みをどうやってつくるか」ではないでしょうか? 「忘れ物は誰にでもあって当然」という考えを前提として、「忘れ物をしたときにどうしたら困らないか」を子どもと一緒に考えたり、忘れ物をしたとしても、子どもが安心してさまざまな活動に参加できる環境を整えるほうが大切だと思うのです。

私たち大人は、つい「子どもが将来困らないように」と思い、子ども時代から忘れ物をしないように強く指導してしまうのかもしれません。でも、よく思い出してみてください。みなさん、忘れ物をしたことが一度もないですか? 私は今朝、プラスチックごみを出し忘れました。忘れ物をするのは子どもだけじゃないんです。忘れ物は誰だってします。私も、あなたも。

■子どもが言うことを聞きたくなる伝え方

子どもに何度同じことを言っても行動してくれず、イライラしてしまうことってありますよね。そんなときは、「子どもが理解しやすい伝え方」をしているか、客観的に考えてみてください。例えば、子どもが「夜8時にお風呂に入る」という約束を守らないとき、次のように振り返ってみます。

子どもが怖がるような強い口調で伝えてない?」
 ↓
イライラして大きな声で話すと子どもは耳も心も閉ざしてしまい、話を聞く態勢に入れません。子どもが怖がらないように、穏やかな口調で話してみましょう。

子どもが別のことに集中しているときに声をかけてない?」
 ↓
「ちょっとだけ話を聞いてほしいんだけど、こっち向けるかな?」と伝え、子どもがこちらを向いたときにお願いを伝えてみましょう。

子どもが状況を理解できる具体的な言葉を使ってる?」
 ↓
「もう時間だから入りなさい」では、子どもはなんの時間なのかわからないかもしれません。具体的な言葉を使って「8時になったから、お風呂の時間だよ」と伝えてみましょう。

こんなふうに子どもが理解しやすい伝え方を繰り返し考えて工夫すると、子どもが理解しやすい伝え方を身につけることができるため、子どもへのイライラが減り、結果として子どもへの「何度言ったらわかるんだ!」も減っていきやすいです。

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こど看(こどかん)
精神科認定看護師
精神科単科の病院の児童思春期精神科病棟に10年以上勤める。現在も看護師として病棟勤務しながら、「子どもとのかかわりを豊かにするための考え方」をSNS等で精力的に発信中。メンタルYouTuberの会所属。一児の父。

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※写真はイメージです - 写真=iStock.com/takasuu

(出典 news.nicovideo.jp)

ゲスト

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悩んだら野生の動物の子育て映像を観てください。それが自然な子育てです。

橘ギャレン

橘ギャレン

論を知っておくのはいいけど、最終的に基づくべきは「その子」(状況等含む)じゃないかね。

RT

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どーしてこう、ケースバイケースとか性格と思想に合わせてとか限度だとかを抜きに理屈だけで極論の結果出そうとするかな。

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