クルマに「必要以上」の性能求めるのはなぜ? 本当の "ちょうどいい" はどこにあるか | ニコニコニュース
英国人記者の視点:「十分なクルマ」とはどのようなものか
「小・少・軽・短・美」とは、スズキの行動理念であり、効率的で高品質なものづくりに対する同社の姿勢である。筆者(英国人)が最近試乗した新型スイフトにも深く関わっている。
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スイフトは全長3.8mと一般的な乗用車より小さく、車重も1トン未満と圧倒的に軽い。まさしく理念を体現したようなクルマだ。
スズキ・カーズUK(英国部門)のデール・ワイアット取締役は、「スズキは小型車を作るのが得意です」と言う。SUVがベストセラーになりがちな欧州市場では、スズキは比較的ニッチなブランドであるが、グローバルに見ればその存在感は大きい。
日本の軽自動車セグメントで年間40万台以上を販売しているほか、インドの子会社であるマルチ・スズキは現地生産でダントツであり、販売ランキングトップ10に常時6~7車種を擁している。
筆者は最近スイフトに試乗したが、その前の週にはさらに小型(全長2.28m、全幅1.29m、車両重量わずか450kg)の電動四輪車「サイレンスS04」に乗った。それもあって、小さなクルマについてよく考えるようになった。
実は先日、弊誌の読者からルノー・トゥイジーやシトロエン・アミのような小型車について「不十分なクルマ(not enough car)」だという意見を頂戴した。しかし、「十分なクルマ」とはどの程度の大きさで、「不十分なクルマ」とは一体どのようなものだろうか?
サイレンスS04はどちらに当てはまるだろうか? シートが2つあり、ちゃんとしたトランク、ちゃんとしたドア、ヒーター、エアコン、スピーカー、パワーウィンドウがあり、80km/h以上の速度で走ることができる。2個のバッテリーを外して新しいものに入れ替えれば、充電もすぐに終わる。
それで十分なはずだが、残念ながらそうではない。実際のところ、ここまで車体が小さいことの利点はほとんどない。古代ローマ人は2台の荷車がすれ違えるように幅6mほどの道路を作り、欧州では今もその概念から大きく離れていない。
そのため、すり抜けができるオートバイとは違って、2人乗りのS04は他のクルマより速く移動することもできない。また、スイフトのような従来の乗用車のように、すべての道に順応できるわけではない。
筆者にとっての「十分なクルマ」とは、国内のあらゆるタイプの道路に対応し、スピードリミッターに達することなく、楽しく巡航できるクルマでなければならない。つまり「十分」とは、サイズだけでなく性能も重要なのだ。
ケータハム・セブン170は、筆者にとって9割方は「十分」なクルマだ。雨の日や寒い日には困るだろう。それでも、現在の市販車の中で最も魅力的な1台だと思う。一般的に、「十分なクルマ」という考え方は、深い満足と楽しみを与えてくれるものだと思う。
奇妙な話だ。クルマ以外のことではそんなふうに感じないのに。もし自分の家で、セブンのように雨が降ると全身びしょびしょになったら、屋根職人に激怒するだろう。冬はリビングの暖房を「十分」以上にしておきたい。服は「十分」以上に持っている。今朝食べた2個のアップルパイは明らかに「十分」以上だった。「十分」以上のお金が欲しい。
生きていくのに必要なものだけを持つことを美徳とする哲学や宗教が多くあるにもかかわらず、わたし達人間は十分以上のものを求めるようにプログラムされているのかもしれない。
そうであれば、平均的なクルマの幅が2m近くあり、2トンもの重さがあり、快適性、性能、広さが必要以上にある理由も説明できるだろう。小さく軽快で、とても質素な小型車で十分だと思っても、車重2454kg、平均燃費8.5km/lのフォード・レンジャー・ラプター(高性能ピックアップトラック)を眺めてうっとりしてしまうのも合点がいく。
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