「大学くらい行っておいたほうがいい」といわれるワケ
文部科学省『学校基本調査(確定値)』によると、2021年度の大学進学率は54.9%で過去最高を記録。短期大学と専門学校を含む進学率は83.8%になります。
同級生の8割強が進学し、過半数が大学に進学するわけですから、特に目的がなくても「とりあえず大学にいっておくか」というのが、良くも悪くもいまどきの本流です。またしなくてもいい苦労はしないほうがいいと、大学進学を勧める親も多いでしょう。
厚生労働省『令和3年賃金構造基本統計調査』によると、同じ男性・正社員でも、高卒の平均給与(所定内給与額)は月30.5万円、年収は推定500万円(平均年齢44.4歳)。一方大卒は、月39.4万円、年収は推定647万円。学校卒から60歳まで働いた時の生涯給与は、高卒の場合、4年のアドバンテージがあっても、最終的に2,000万円を超える差があります。
2,000万円といったら「老後資金2,000万円不足問題」とよく聞くように、老後の安心をどうにかできる金額。これだけの差がつくなら、親としては子どもに大学進学を望むのも無理のない話です。
とはいえ、そこに立ちはだかるのは高額の学費。文部科学省『私立大学等の令和元年度入学者に係る学生納付金等調査』によると、私立大学の初年度納付金は文系で平均117万2,582円、理系で平均154万9,688円。順調に4年で卒業したら、私立大学文系で400万円、私立大学理系で550万円程度の費用が必要になります。
一方親は、給与は全然上がらないし、住宅ローンの支払いはあるし、自分たちの老後資金も考えないといけないし、最近は値上げ値上げで生活も大変だし……そこに何百万円もの学費がプラスされるわけですから、大変です。
そこで「すまんが、奨学金を申し込んでくれないか」と親から頼まれる場合もあるでしょう。独立行政法人日本学生支援機構『令和2年度学生生活調査』によると、大学(昼間部)の奨学金利用率は49.6%。半数の大学生は奨学金のおかげで進学できている、というのが現状です。
奨学金返済「月1万7,000円」…それだけでも負担は大きい
大学進学に欠かせない奨学金ですが、大きく、返済しなくてよい「給付型」、無利息で借りられる「貸与型第一種」、利息がつく「貸与型第二種」の3種類あります。またよく知られているのは日本学生支援機構の奨学金ですが、大学や専門学校が独自に実施しているものや、民間育英団体、地方公共団体が実施しているものなど、いろいろあります。
また奨学金の借入総額の平均は約300万円といわれ、月々の返済額は1万7,000円ほど。返済期間は15年~20年です。ストレートで大学を卒業したとしても、40歳前後でやっと返済が終わる計算です。
ただ「奨学金 返済」とネット検索すると、次に「きつい」とか「後悔」というキーワードが出てくるように、長期にわたる返済は、想像以上に大変です。独立行政法人日本学生支援機構『令和2年度奨学金の返還者に関する属性調査』によると、延滞者の41%が正社員/正職員。年収は300万円以下が7割と多いものの、「400万~500万円」が6.1%、「500万円超」が7.8%と、平均、またはそれ以上の給与を手にしながらも、奨学金返還に苦しい思いをしている人は意外にも多いのです。
総務省『2021年 家計調査』で世帯主34歳以下世帯(世帯人数3.31人)の家計についてみていくと、世帯主(男)の収入は月37.8万円。手取りは29万円ほどになります。住居費除く消費支出は21.5万円。残る7.5万円で住居費を工面しなければなりません。東京などの大都市で家族3人が住める賃貸となると、かなり厳しいものがあります。
共働きでないと家計はなりたたないでしょう。とはいえ配偶者の収入から奨学金の返金とはいかないでしょうから、片働きにせよ、共働きにせよ、月1.7万円の返済でもかなりの負担だといえます。
学歴なんて関係ないといいつつ、実際は学歴がものをいう日本社会。大学全入時代といわれるように、ますます大学進学が当たり前になります。そのようななか、奨学金を利用して大学に行かせることが本当に幸せなのか、子どもに後悔させないためにも、親としてもしっかりと考えたいものです。