「ゆる部活」の一方で「本気部活」もやっぱり必要…少子化時代の部活動のあり方 | ニコニコニュース
TOKYO MX(地上波9ch)朝の報道・情報生番組「堀潤モーニングFLAG」(毎週月~金曜7:00~)。「モニフラZ議会」のコーナーでは、少子化時代における“部活の在り方”についてZ世代とXY世代の論客が議論しました。
◆少子化による部活動の部員不足が全国で深刻に
昨年12月に開催された「全国高校ラグビー大会」の鳥取県予選では、当初3校がエントリーしていましたが、準決勝で対戦する2チームがどちらも出場人数が集まらず、予選で試合をせずに全国大会出場校が決定。こうした部活動の部員不足は全国で問題になっています。
まずはZ世代の主張として、株式会社ABABA代表の久保駿貴さんは「今後は地域のスポーツクラブと“共に”あるべき」と訴えます。部活動を地域に丸投げするわけではなく、ともに活動し「部活動という枠組みは残すべき」と言い、部員不足については、例えば複数の学校による合同チームを認めるなど、ルールを柔軟に変えていくことを望みます。
XY世代のコラムニスト・河崎環さんは久保さんの主張を「発想としてはいいと思う」と評しつつ、自身は子どもの数が多かった団塊ジュニア世代で、部活や受験も大競争時代を生きてきましたが、今は少子社会とあって「少子社会に合わせたリサイズが必要」と促します。そのうえで「リテラシーが鈍いというか、その辺りのことがちゃんとアップデートされていないのは大人」と今回の要因を示唆。
そして、部活の上位組織が子どもの数が多かった時代を今なお引きずっていることを憂慮し「地域の公立校、市、区、県、地方、全国と分ける発想自体、今の社会に合っていないのでは」と現状のシステムについて指摘します。とはいえ、部活は子どもの居場所として必要と言い、「上手く(その辺りのバランスを)両立する方法が考えられれば」と河崎さん。
キャスターの堀潤は、中学校時代の部活動が「今の自分を作ってくれたひとつの機会だった」と振り返ります。
当時、堀は転校したばかりでクラスに居場所がなく、その様子を見た担任の先生がいじめの危機を察し、先生自身が競技の経験がないにも関わらず「一緒に(ソフト)テニス部をやろう」と誘ってくれたことがとても嬉しかったと回顧。練習の成果が実り、市大会で2位になれたことが原体験となり、高校時代はさまざまな部活を兼部。とても自由な学校だったそうで「部活って何をやってもいいんだと思ったし、今の自分の感性を作ってくれた」と話し、「地域の人たちがそういった物語性をさらに強めてくれると思うと(部活動は)すごく賛成」と自身の見解を述べます。
Fridays For Future Tokyoオーガナイザーの黒部睦さんは、なぜ部活は必要なのかについて考えてみたところ「部活の良さは、(金銭面において)安く活動ができること」という思いに至ったそう。クラブチームなどに入ると月謝などある程度のお金がかかるものの、学校の部活の部費はそれよりも安価に抑えられることに触れ、久保さんの提案について「地域のスポーツや運動部だけではないので、文化などを学ぶ機会に対しても、教育機関にあるような補助金など資金面のサポートがされるようになれば」と望みます。
番組Twitterには「部活が内申点に加味されてしまう」という問題点を提起するツイートがあり、河崎さんは「今は高校受験の時点でそうした妙なシステムがあり、それが部活というものの体質が変わらないひとつの原因だと思う」と指摘。
◆最近の学生が入りたい部活は意外にも…
部活動の現状について、スマホアプリ「Simeji」の調査によると、入りたい部活ランキング1 位は「帰宅部」で、次いで「ダンス部」、「バレーボール部」でした。ただ、帰宅部1位の背景には、課外活動を頑張りたい、部活動以外でスポーツを頑張りたいという人もいるそう。
なお、学習指導要領で部活動は「生徒の自主的、自発的な参加により行われる」と明記されていますが、2017年のスポーツ庁の調査では公立中学校の3割が部活動への参加を強制。その割合は、都市部で約18%、非都市部では約45%とかなり多くなっています。
非都市部では約半数が強制という現状に「衝撃的な数字」と驚く久保さん。自身で、部活動の歴史を調べてみたところ、昔はクラブ活動の履修が義務付けられていて、週に1度、授業の一環と位置付けられていたそう。しかしその後、指導要領が変わり、放課後のクラブ活動も授業の一環として認められたと流れを説明。当時の名残が今もあり、指導要領では任意とあるものの、それを知らない先生が一部いたというデータもあったことに触れます。
そうしたなか、堀は「部活といえばスポーツだと思い込まされている風潮がある。サッカー部や野球部など、僕のなかでは(部活は)スクールカーストで言うと上位に位置する、活躍する人がいる場所のような感じで、転校生としては新規参入しづらい現場だった」と自身の経験をもとに語ります。
そして、「今の時代、やりたいことは多岐に渡っているから部活のバリエーションが増えればいい、好きなことをやっていい。帰宅部は、今までのスクールカーストで作られてきたものに入れない・入らないという選択肢の受け皿だったのかな」と見解を述べた上で、学生時代は帰宅部だった黒部さんに「帰宅部がどんな未来創出につながったのか?」と尋ねます。
すると黒部さんは「やりたいことをやっていたという感じ」と返答。学生時代から校外でSDGs活動を行い、そこに時間を割くために帰宅部を選択したと言い、そうした自身の経験も踏まえ「やりたいことが部活以外にあってもデメリットなくできる環境があれば部活があってもいいし、部活以外の選択をしてもいい」と“やりたいこと重視”とする考えを示します。
番組Twitterには「子どもを忙しくすることで非行を防ぐみたいなものはもうやめよう」、「(部活動が)いじめの温床になっていることも知っておいてほしい」、「地域が受け入れというが、超高齢化社会だけど、大丈夫か?」などさまざまな声が寄せられ、さらに当番組のTwitterスペースに参加していた視聴者からは「(部活動の見直しは)先生の働き方改革につながっていると思う。部活の強制という話もあったが、それは先生方にも言えることで、部活(の顧問など)をやりたい先生もいれば、やりたくない先生もいる。その辺りは上手く分けていく必要があると思う」という意見もありました。
◆新たな部活のあり方に!? “ゆる部活”とは?
杉並区にある富士見丘中学校では、こうした部活問題を解決すべく、新たな活動の形を実践しています。近年、生徒数の減少でチームスポーツが成り立たず、同中学では野球部やサッカー部などが相次いで廃部に。
そこで2017年にトレーニングスポーツクラブ、2022年にマルチスポーツクラブを創設し、単純にスポーツを楽しむ、いわゆる「ゆる部活」を開始。大会への出場はありませんが、ハンドボールやフットサルなど2ヵ月ごとに種目を変え、子どもたちは幅広いスポーツに触れています。
このゆる部活に関して、黒部さんは「部活という枠にとらわれず、地域の方や誰でも参加できる形もありなのかなと」と印象を語り、河崎さんは「部活なるものの見直しというところで、部活が優秀な子どもたちを吸い上げて全国に連れていく、ピラミッドを駆け上がっていくという発想ではなく、子どもたちの居場所であり、ウェルネスの場でもあると考えると、“ゆる部活”というあり方はなかなかイノベーティブだと思う」と高く評価。
一方で、なかには大会を目標に部活を頑張りたいという子どももいます。河崎さんはそうした構造も必要とした上で「ひとつの学校に(部活動が)全種目ある必要はないんじゃないか」と指摘。子どもの数が多かったときはよかったものの、少子化の今は手を広げているから人数が揃わないので、学校ごとに競技を振り分けるなど「少しずついろいろなことを引き算して考え直していくと、もう少し上手くいくと思う」と考えを述べます。
これに対し、堀はむしろ逆で、「自分たちで手を広げられる機会を増やしたらいい」と部活のスタートアップ化、立ち上げのハードルを下げることを提案。
「好きなスポーツや趣味を持つ人を集めてコミュニティ化し、運営も含めてやりたいときにできる空気を作ってあげれば。選択させられたり強制させられたりするのではなく、子どもがやりたいことを部活として支援してあげられる仕組みを大人が作るべき」と主張すると、河崎さんも「なるほど!」と納得。
最後に、今回の議論を受けて今後の部活はどうあるべきか、Z議会からの提言を久保さんが発表。それは「地域・学校・行政が連携し、多世代に渡る住民スポーツの場に」と「やる気や才能ある生徒の場所も必要」。
例えば、バレーボールをやりたくても3人しか集まらなければできないどころかやる気も削がれてしまうため、それを補うためにも地域のスポーツクラブなどとの連携が必要とし、才能のある子どもは他校の部活に入ることを認めるなど「才能のある人を放っておかない政策もあわせて必要」と訴えました。
<番組概要>
番組名:堀潤モーニングFLAG
放送日時:毎週月~金曜 7:00~8:00 「エムキャス」でも同時配信
キャスター:堀潤(ジャーナリスト)、田中陽南(TOKYO MX)
番組Webサイト:https://s.mxtv.jp/variety/morning_flag/
番組Twitter:@morning_flag