「高学歴なのに、なぜか仕事の役に立たない人」に共通する特徴。コミュ力は学べない | ニコニコニュース
◆「頭が切れるが役に立たない」は何者か
元Microsoft社員・ジョエル・スポルスキ氏の著書『Joel on Software』内での発言を掲載したツイートが話題になっている。そこには「博士号を持ち、大企業に勤務している人は実用的ではない」と指摘して、そういう人を「頭が切れるが役に立たない」と一蹴するものだった。
確かに学歴の高さや勤務先の企業のランクに惹かれて採用したものの、期待していたような活躍はできないケースはあるかもしれない。実際、同ツイートには「こういう人は周りにいすぎて笑う」というツイートも寄せらている。
そもそも、“頭が切れるが役に立たない人”とはどういう人なのか、また“頭が切れるが役に立たない人”にならないためにどうすれば良いのかだろか。『一生仕事に困らない[最強の自分]の作り方』(コスミック出版)の著者で、これまでにさまざまな組織に携わってきた田 美智子(でん・みちこ)氏に話を聞いた。
◆企業側の問題が大きい
まずジョエル・スポルスキ氏の指摘の妥当性を聞くと、「博士号を取るくらいの人なら、知的好奇心や学習欲、知性、学力、執念など多くの能力があると思います。にもかかわらず、大企業において活躍できていないということは、企業側が人材の能力を適切に見極めることができておらず、適正配置を行えていない可能性があると思います」と分析。
次にジョエル・スポルスキ氏が指摘する“頭が切れるが役に立たない”という人物像を掘り下げる。
「能力がないわけではなく、特筆した才能や専門的な知識などを持ちつつも、それをどこで発揮したら成果に結びつけることができるのかを自分でも認識できていない可能性もあります。自分が合わないと感じていれば、『どこの部署ならできるか』と考えて、『あの部署なら合いそうだな』と導き出し、上長や人事に配置転換を要請するのではないでしょうか。
ただ、それを言い出すことのできない消極的なタイプである可能性もあります。元来の内気な性格のケースもありますが、自分の能力を信じることができなくなり、自己効力感が下がっている状態かもしれません。また、スキル的には問題がなくても、コミュニケーション能力に課題があるため、管理側と噛み合っていない場合もあります」
◆もたらすデメリットは
頭が切れるけど役に立たない人が職場にもたらすデメリットはあるのか。
「自分の得意とする専門分野では、誰よりも知識や知見があるという傲慢さが無意識のうちに出てしまい、本人はそのつもりはなくてもどうしても自慢をしているかのように雄弁に語ってしまったりすることはあるかもしれません。それによってチームメンバーに対してマウンティングしてしまい、チームビルディングに亀裂を入れかねません」と回答。
「また、特定の狭いコミュニティの中で研究などを長くしてきた結果、多様性への理解が乏しく、性別や年代、ルーツが異なる人に対して失礼な質問をしてしまったりすることも過去に見てきました。私の関係していた人も同僚に対して『あなたは精神病ではないですか?』と突然本人に聞いたり、女性に対して容姿の優劣の話をしたり、『この年代はこうだ』と決めつけたりなど、コミュニケーションに違和感を覚えるケースは珍しくなかったです」
◆学校教育の問題も
企業側が適材適所に配置できていないことが、“頭が切れるが役に立たない人”を生んでしまう大きな要因なのかもしれないが、他にも要因はありそうだ。
「日本の学校教育ではコミュニケーションを学ぶ機会は少ないです。特に正解を求める教育が中心なので、日常で何かをするにもすぐに正解や答えを求めがちです。欧米などを中心として海外では自分の感情や考えを伝えたりすることが当たり前で、学習するうえでも相手の意見を聞き尊重するコミュニケーションが基本です。ずっとロジカルに正解を求められる教育を受けてきたことで自分が感じていることを言葉にして表現することや、自分の表現によって相手に影響を与える力は日本人は相対的に弱いのかもしれません」
適切なコミュニケーション能力を学べなかったことが大きいようだ。
◆役に立たない人材にならないためには
ちなみに役に立つ人材とはどういった特徴があるのか。田氏は「課題を解決する能力のある人、新たなアイデアや企画を立てて実行する人、コミュニケーション能力の高い人、気遣いができて笑顔で職場の雰囲気を良くする人などが挙げられます」という。
「気遣いができて笑顔で職場の雰囲気を良くする人に関しては、周囲のやる気を出させてくれる存在です。仮に当人自身が成果を出していなくても、職場においては役に立つ人と思ってもらえる存在となり、それ自体が成果となるでしょう。つまりはこれらに当てはまらない人は役に立たない人材になっている可能性が高いです」
とはいえ、知らず知らずのうちに自分自身が役に立たない人材になっている可能性もある。「役に立っていない人材になっていないか?」「組織に貢献できているのか?」を客観的に見つめ直すためには必要なこととして、「まずは上司や同僚、後輩など周りの人に対して『今の自分がどう見えているのか』を率直に聞いてみることです」と提案。
「私も自分がどう見られているのかのアンケートはこれまでに何度も行ってきました。正直、やる前は『そんなのみんな本当のことなんて言ってくれないでしょう』と思っていましたが、『自分をもっと成長させたいと思っていて、これから悪いところは変えていきたいと思っているから率直に教えて欲しい』と意図と目的を伝えて聞いたところ、改善ポイントをたくさん教えてもらいました。
もちろん自分では全然思ってもないこともあったので正直ショックを受ける回答もありました。ですが、それでも『相手が自分のために時間を使って言いにくいことを伝えてくれたのは一つの愛だ』と思って受け入れました。とても勇気がいりますが、自分のことを客観的に自分だけで理解しようとすることは無理です。他者からどう見えているのか、それを知ることが自分を知る第一歩となるでしょう」
◆採用人事が持つべき視点
最後に田氏は、役に立つ人材なのかを見極める方法を採用人事に寄り添った目線で説明した。
「出身大学や専攻やスキルだけではなく、人間性の部分が重要となります。例えば、何に自分の価値を感じているのか、何が好きなのか、どういう時に幸せを感じるのか、過去に人にしてあげて自分自身が良かったと思ったエピソードなどを聞く。どのような行動をとってその時何を感じたのかを掘り出すことが重要です。頭の中で考えていることだけでなく、実際にどういう行動をしたのかというところがとても大切。考えるだけなら誰でもできますが、動くことができる人は少数です。そこを徹底的にヒアリングしましょう」
役に立たないとされている人も環境が変われば輝くことはできる。まずは自分が今働いている部署が自分に合っているのか考えてみると良いかもしれない。
取材・文/望月悠木
【望月悠木】
フリーライター。主に政治経済、社会問題に関する記事の執筆を手がける。今、知るべき情報を多くの人に届けるため、日々活動を続けている。Twitter:@mochizukiyuuki