出産で無痛分娩を希望したら、夫の“あまりに無神経な発言”に凍りついた
「2人目が欲しかったけど、絶対産まないと決心した」と話すのは、筆者の友人である洋子さん(仮名・46歳)。ただ、その理由はお金や子育ての負担ではなく、夫からの何気ない言葉だったそうです。
◆高齢出産で何より不安だったこと
現在、会社員の夫と小1の娘と都内に住む洋子さんは、40歳目前で妊娠・出産を経験。過去に流産していたこともあり、再び授かったことがわかったときには、夫婦で大喜びしたといいます。妊娠生活は順調で、病院の検診で異常を指摘されたこともなかったそうですが、高齢での出産は不安も大きかったと振り返ります。
「色々と心配なことはありましたが、最も不安だったのが、産後の体調です。私の実家は遠方にあり、親も高齢のため頼れません。夫の実家からは『いつでも頼って』と言われていたけど、義母も高齢で病気がちなので、気軽にお手伝いを頼めないし…。夫は育休を取ろうとしたけど、収入がけっこう減ってしまうことがわかり、結局は取らないことにしたんです。
となると、少なくとも夫が帰ってくる夜までは、私がワンオペで育児をすることになるじゃないですか。出産後、赤ちゃんをしっかりお世話できるだけの体力が戻るのか。それが何より気がかりでした」
高齢出産は体調が回復するまで時間がかかりそうだし、場合によっては産後うつになってしまうかもしれない…。心配事が頭の中をぐるぐるとまわる日々が続いたそうです。そうしたなか、あることをふと思い出した洋子さんは、夫と分娩方法について話し合うことにしたのです。
予定日が近づくなか、洋子さんの脳裏に浮かんだのは、イギリス王室のキャサリン妃出産のニュース。キャサリン妃は、2015年に第2子を出産後、約10時間で退院したことが話題になりました。洋子さんはそのとき、赤ちゃんを抱き笑顔で手をふる姿をテレビで見て、衝撃を受けたといいます。
「お腹のふくらみが少し残っている以外は、いつもと変わらない美しい姿で、壮絶な出産を経験した直後とはとても思えませんでした。公式な発表はなかったけれど、キャサリン妃がスピード退院できたのは、無痛分娩だったからではないかといわれていて、それを聞いて『なるほど!』と思ったんです」
欧米ではすでに主流となっているものの、日本ではまだあまり浸透していない無痛分娩。けれども、最近では極力痛みを抑えたいという女性も増えているようで、洋子さんの同僚も「分娩のときに麻酔を使った」と話していたそう。
「以前、会社で出産の話をしていたとき、その同僚が『産むときの痛みとか、産後の体調とか、想像していたほどつらくはなかった』と言っていて。やっぱり無痛分娩は母体の負担が軽いのかな~と。それなら、私もぜひ試してみたい!と夫に相談したのですが……」
夫からは思わぬ反応が返ってきたそうです。
◆夫の無神経すぎる言葉に凍り付く
「無痛分娩で産んでみたい」と自分の気持ちを伝えた洋子さん。けれども夫は、「う~ん」と考え込むだけで、何も言わなかったのだとか。
「もしかすると、出産予定の病院が無痛分娩を取り入れてないから、難色を示しているのかな?」と感じた洋子さんは、無痛分娩がダメなら帝王切開を検討していると伝えたそうです。
「帝王切開の方がラクだなんて全く思っていなかったし、実際に経験した友だちから話を聞いて、自然分娩とは違うリスクがあることも知っていました。ただ、母親や出産を経験した人たちから『2日間陣痛が続いた』『痛くて死にそうになった』などと散々聞かされて怖気づいてしまって。自然なお産に耐えられる自信がなかったし、分娩で消耗しきった後に、まともに育児ができるのか…。それが不安で仕方ありませんでした」
そんなふうに苦悩する洋子さんに対し、夫はこう言い放ったそうです。
「何言ってんだよ! 出産はお腹を痛めてこそ、だろ?」
◆「2人目は絶対産まない!」怒った妻の逆襲
自分がお腹を痛めて産むわけでもないのに、命がけで出産する妻に対し、よくもそんなことが言えるなと、人の家庭のことながら、話を聞いて激怒してしまった筆者。洋子さんはそんな私を見て苦笑いしながら、こう続けました。
「『無痛分娩でも帝王切開でも、それぞれリスクは伴うだろうから慎重に判断しよう』と言うならまだしも、夫の言い方だと自然分娩以外はまるで意味がないみたい。これは許せませんでした。
それに、自分の母親や義母から『お腹を痛めてこそ』と言われていたら、反発はしただろうけど、昔はそういう時代だったんだろうなと思えた。けど、義母は柔軟な考え方をする人で、『出産する本人が納得できる方法で産むことが一番大切』と言ってくれたんです。なのに、私より若い夫からそんな言葉を聞くことになるとは…」
そんな前時代的な考えを持つ彼女の夫も、最近ではちょっと変わってきたのだとか。
「今になって無痛分娩や帝王切開に理解を示すようになりました。しかも子育てがシンドかったら、シッターに来てもらえばいい、しばらく働かず家にいればいいとまで言うように。1人目が生まれる前には、絶対そんなことは言わなかったのに。なぜ変わったかというと、彼はどうしても2人目が欲しいから。私が『死ぬ気で子供を産む妻の意思を尊重しない夫の子供はもう産まない!』と完全拒否したから、焦ったみたいです」
◆ふだんは優しい超イクメン夫
ところで洋子さんの夫といえば、家庭を優先し、家事と育児を積極的に行う超イクメンとして、友人の間では有名です。
「彼がイクメンであることは間違いないし、基本的には優しい人なんですけどね。だから私の場合、子育てや家事の負担はそこまで重くないし、今の生活に不満があるわけではありません。
でも“あの一言”を聞いた瞬間、私のなかで何かがガラガラと崩れた感じがしたんです。まさに興ざめ。それがなければ、今頃2人目を抱っこしていたかもしれないのに……」
口は災いの元。不用意な発言が思わぬ結果を招いたり、大切な人との関係性を変えてしまったりすることもあるので、くれぐれも言葉には気を付けたいものです。
シリーズ―出産・子育てでの「許せない一言/行動」
<文/青山文>
【青山文】某放送局に勤務していたとき、いきなり思い立ってヨーロッパに語学留学。帰国後はウェブ業界に入り、現在は主に海外ニュースの記事を編集&執筆。ときどき話題の商品レビューや子育てにまつわる失敗談なども書いています。反抗期真っ盛りの小学生の息子と日々格闘中。