「大手電力会社vs.新電力」知らないと電気代を損する“電力会社の選び方
◆今後は新電力の方が安くなるケースも!?
電気料金の値上げを行った大手電力会社は、北海道電力、東北電力、東京電力、北陸電力、中国電力、四国電力、沖縄電力の7社。値上げ幅が最も小さい東京電力で平均15%、最も大きい北陸電力にいたっては平均40%も高くなる。
「電気料金はこれまで新電力のほうが高かったのですが、大手電力会社の多くが大幅値上げをすることで、今後は新電力のほうが安くなるケースも出そうです」と明かすのは、株式会社ブレイブの長井勇樹氏。
インターネットや電力・ガスなど生活を支えるインフラをまとめて比較・申し込めるサイト「クラシェルジュ」を運営する電気代節約のプロだ。
「地域の電力会社の契約者は多いので、6月以降の値上げはかなり痛い。そのうえ、政府の補助がなくなる予定の10月以降は、一般的な家庭(300kWh使用)で今よりも月2000円の値上げになり、ますます辛くなることが予想されます。
もちろん、新電力が便乗して値上げをしなければ、という前提条件付きですが、新電力に切り替えたほうがいいと言える状態は今後、増していくと思います」
◆狙い目は大手の新電力会社
「大手の新電力の中でも、6月以降に値上げを実施していないENEOSでんきがオススメ。また、東京ガスは10月検針分からの値上げを発表しましたが、こちらも狙い目です。東京ガスの電気は東京電力エリアのみの提供となりますが、両社の間で電気料金の差が大きく開いているので、東京ガスと契約したほうが今後も電気を安く利用できます」
とはいえ、すべての大手新電力が電気料金を据え置いているわけではないのでご注意を。
「たとえば、ソフトバンクでんきや楽天でんきは、電気料金を値上げしました。知らずに契約してしまうと、今よりも電気料金が高くなってしまうことも……。
値上げを実施している、または今後行うかどうかは、企業の公式サイトやプレスリリースをチェックすればわかります。新電力への切り替えを検討する際は、事前に確認するようにしてください」
◆新電力と契約するときの注意点
「新電力にもいろいろあるのですが、“市場連動型プラン”を採用した新電力は避けたほうがいいでしょう。これは、日本卸電力取引所の価格に連動して電気料金の単価が決まるプランのこと。
価格が低いときは電気を安く使えるメリットがありますが、昨今の情勢を踏まえると、大幅に急騰したときのデメリットのほうが大きい。そのため、市場連動型プランは推奨できません」
また、動画配信などのサブスクサービスとセットになったプランも注意が必要だ。
「一概には言えませんが、『〇〇の年会費を肩代わり!』などのセットプランは、そのぶん電気料金が割高なケースが多い。電気の使用量によっては、個別に契約したほうが安いケースもあるので安易な契約はオススメしません。
あと、新電力を比較検討する時は、ネット上の『〇〇電気は高い!』という口コミは鵜呑みにしないほうがいい。高いと感じるのは燃料費の影響で、その電力会社に限った話ではないことが多いですから。逆に電気料金を公表しながら細かく解説している口コミなら、ある程度信用できると思います」
新電力の切り替えを推奨する一方で、現段階では切り替えないほうがいいケースもあるという。
「関西、中部、九州エリアは、地域の大手電力会社が6月以降も値上げを実施しません。このエリアで暮らす方たちは、地域の電力会社を継続し続けたほうが現時点ではお得です」
この3つのエリアで、これまでに新電力に切り替えていた人は、地域の大手電力会社に戻すと電気料金を節約できるが、プランの選択は慎重が必要とのこと。
「新電力から大手電力に戻す際は、『従量電灯プラン』に戻さないと意味がありません。電気の自由化以降に登場した自由料金のプランを選んでしまうと、新電力と契約していたときと変わらないので注意してください」
新電力が登場してから早数年。様子見してきた方たちは、大手電力7社の値上げが実施されたタイミングで、乗り替えを検討してみては?
<取材・文/黒田知道>