びっくりドンキー、なぜ「おいしさ」で支持される? 専門家が指摘するハンバーグの“しかけ” | ニコニコニュース
飲食チェーンの人気ランキングや顧客満足度調査において、ハンバーグレストラン「びっくりドンキー」の強さが際立っている。
【画像】知ってる? びっくりドンキーのホテルみたいな「990円」朝食(全6枚)
日本生産性本部 サービス産業生産性協議会が8月に発表した2023年度JCSI(日本版顧客満足度指数)の第1回調査によると、大手飲食チェーンにおける顧客満足度1位は「サイゼリヤ」(79.6)で、2位「びっくりドンキー」(77.9)、3位「モスバーガー」(76.5)だった(回答者数2万6187人)。びっくりドンキーは同調査で毎年上位にランクインしている。
LINEリサーチが22年6月に発表した「一番好きなファミリーレストラン」調査では、1位が「サイゼリヤ」(18.6%)で、2位が「びっくりドンキー」(12.2%)、3位が「ガスト/ステーキガスト」(11.0%)だった(回答者数5254人)。
同調査では、各ファミレスを好きな理由も聞いている。トップ4にランクインしているサイゼリヤ、ガスト/ステーキガスト、ジョイフルが好きな理由1位はいずれも「値段が安いから」だ。一方、びっくりドンキーを好きな理由1位は「料理がおいしいから」(63.5%)となっている。
サイゼリヤとガストは全国に1000店以上あるので、幅広い年代・地域の人を対象にしたアンケート調査では、店舗数が多いチェーンが上位にランクインしやすい。そんな中、全国に約350店舗を展開するびっくりドンキーは善戦しているといえる。なぜ、ここまでびっくりドンキーは支持されているのか。小売り・サービス業のコンサルティングを30年以上にわたり続けているムガマエ社で代表を務める岩崎剛幸氏に話を聞いた。
●ハンバーグのおいしさ
岩崎氏によると、びっくりドンキーの強さは「ハンバーグのおいしさ」にあるという。
現在流行している厚めのハンバーグと比較すると、びっくりドンキーのハンバーグは薄くて広いという特徴がある(同チェーンがもともとハンバーガーレストランだったことと関係がある)。ほどよい柔らかさで、はしでもつかんで食べやすい。肉のサイズも150グラムから用意しているので「肉をそれほど食べたいというわけではない」人も気軽に注文できる。高齢者でも無理なく食べられるので、家族一緒に利用しやすいという特徴がある。
ハンバーグにかけるオリジナルソースは、ひき肉のうまみを感じられるようにしたしょうゆベースのソースだ。そして、トッピングとしてチーズなどを選択可能としており、セットで注文するとみそ汁がついてくる。これらはごはんとの相性が良い。
「見た目はアメリカンだが、日本人の舌に合うハンバーグを研究している」(岩崎氏)
こうした背景があり「ハンバーグがおいしい」というイメージが利用客に定着。ランキングでは好きな理由として「おいしいから」が上位にくるとの分析だ。
●注文しやすいメニュー
びっくりドンキーの常連に支持されているメニューにワンプレートの「ディッシュ」がある。木製の器に、ごはん、ハンバーグ、サラダを盛り付けたもので「レギュラーバーグディッシュ」(150グラムで810円、東京エリアの価格)などがある。
岩崎氏は、びっくりドンキー=ディッシュというイメージが定着しており、「ワンプレートでカジュアルに食べられる」という提案をファンが支持していると指摘する。ディッシュはお子様ランチ的な特徴もあることから、子どもや高齢者でも食べやすく、多くの人が注文しやすいメニューになっている。
●独特な内装やメニュー表
びっくりドンキーの特徴として、木製の大きなメニュー表が挙げられる。観音開きで開くタイプとなっており、かなりの重厚感がある。サイズは縦が約65センチ、横が約40センチだ(出所:J-CASTニュース「『びっくりドンキー』巨大メニュー廃止進む タッチパネルに変わり『寂しい』」)。利用客がテーブルに座ってからメニュー表を開いて注文するものを決めるまでのプロセスには独自の“わくわく感”がある。
びっくりドンキーの客単価はランチやディナーで1000円を超える。もともと客単価が高いので、質にこだわった商品をしっかり見せようとすると、特別感を演出するしかけが必要となる。大きなメニュー表はそんな役割を果たしている。
人手不足対策として外食チェーンではタブレットの設置が進んでおり、一部のびっくりドンキー店舗でも同様の動きがある。今後、数が減っていくかもしれないが、大きなメニュー表は同チェーンのブランドイメージ形成に大きく貢献してきたといえる。
びっくりドンキーには、小屋風の外観や内装が特徴の店舗も多い。全体的に木のぬくもりが感じられるようになっており、これまで紹介した大きなメニュー表や、木のプレートとの親和性もある。こうしたあたたかみが店舗の価値を上げ、居心地の良さにつながっている。
以上が岩崎氏の分析だ。
びっくりドンキーは近年、朝食メニューを強化している。提供するメニューの値段は300円台から900円台と幅広い(東京エリアのケース)。通常より小さいサイズのハンバーグメニューや、独自の卵かけごはんを提供している。強みのハンバーグを軸に、新しい挑戦を続けているようだ。