イチローも大谷翔平もこれをやっているから成功した…一流選手が「頭の中でつぶやいているひとり言の中身」 | ニコニコニュース
※本稿は、加藤俊徳『なぜうまくいく人は「ひとり言」が多いのか?』(クロスメディア・パブリッシング)の一部を再編集したものです。
■すべての答えは自分の脳の中に眠っている
禅の言葉に「回光返照(えこうへんしょう)」という言葉があります。
回光とは光を戻すという意味です。そして光とは仏性のこと。返照とは光を当てて照らすということです。
つまり仏性はもともと自分の中にあるのだから、自分に戻って自分自身を照らしてみなさいということです。
禅ではすべての大切なこと、すなわち仏性は本来自分の中にあると説きます。
ですから、外側に真理を求めるのではなく、自らの内側に真理を求めなさいということです。
この考え方は、まさに私の脳に対する考え方と同じです。
じつは脳には、さまざまな知恵や力が眠っていて、それを掘り出してくるだけで、問題も悩みも解決できると考えています。自ら認識している以上に、あなたの脳は賢者なのです。
ところが、得てして人は、自分の内なる光に気がつかず、外側に答えを求めてしまいます。
必死になって情報を求め、そこに答えがないかどうかを探そうとします。
とくに現代のような超情報化社会になると、さまざまな情報が溢れていますから、ついついそれに流されてしまいます。
世の中の情報をうのみにすると、不安に苛まれがちです。
老後資金は2000万円以上ないといけない、これからは投資をしないと生き残れない、子どもはとにかくいい大学に入れないと将来苦労する……。
人々の不安をことさらに煽り、それによって利益を得ようと考える人たちがいます。それに乗せられて、いろんな商品や情報を購入してしまうのです。
外側に光を求めているうちは、いつまでたっても不安はなくなりません。
誰かに新たな不安の種をまかれてしまうと、それがすぐに大きく育ってしまいます。
今のような時代こそ、私たちは内なる光を探し出し、それによって自分自身を照らさなければなりません。
自分の中の光とは、あなた自身の脳みそだということです。
ひとり言はまさに自分の中の光を探し、それと向き合うための手段なのです。
■やたらと情報を取り入れるのではなく、絞り込む
最近とくに感じるのは、情報の偏りです。
とくに新聞やテレビなどのマスメディアの情報が、どうも信用できません。
新型コロナの感染が広がった頃から、そう感じる人が増えているのではないでしょうか? それがロシアとウクライナの戦争、イスラエルとハマスの衝突のような事態になると、余計にそう思います。
ロシアが悪であり、ウクライナがすべて正しいかどうかはわかりません。イスラエルとハマスに関しても、どちらか一方を、簡単には断罪できない歴史的な蓄積があります。
ところが、流れてくる報道は一方に偏っているように感じるのは、私だけでしょうか?
マスメディアがあてにならないなら、ネットで情報を探せばいいかというと、これはこれで玉石混交です。
にわかには信じがたいような、陰謀論なども飛び交っています。
先ほどの話ではないですが、外に情報を求めていると、何が真実かよくわからなくなります。何が真実で、何が嘘なのか? 与えられる情報だけでは、なかなか真実がわからないのです。
私自身は自分のつながりの中で、本当に信頼できる人からの直接の情報を一番大事に考えています。やたらと情報を取り入れるのではなく、絞り込むという作業です。
自分が信頼している人からの情報や意見を参考にし、そのうえで、その人がどうやって情報を得ているかを聞き、参考にします。
そして、やはり最後は自分の頭で考えることが大切です。自分の中の基準に従って、自分で考え、判断するのです。
自分の頭で考えるということは、自分の頭の中で自問自答を繰り返すことでもあります。すると、ここでもひとり言が大きな力を発揮してくれるのです。
■他人のひとり言にも真実がある
自分のひとり言に敏感になると、不思議と他人のひとり言にも敏感になります。
ひとり言は無意識のことが多いですから、意外な本音や真実がちょっとした言葉に表れていることがあります。
ビジネスパーソンなら、ぜひ周りの人たちのつぶやきに注意してみるべきでしょう。
会社であれば上司や同僚、部下といった組織の中での彼らのつぶやきに耳を傾ける。社外であれば、お客さんやクライアントのひとり言に注意を向けるのです。
それがヒントになり、コミュニケーションがスムーズにでき、仕事がうまくいくこともあるでしょう。
新製品や企画の発想のきっかけにもなったりします。
ひとり言には、ふとした拍子に口から出た言葉もあれば、その人がよく漏らす口癖のようなものもあります。
「どうすればいいっていうの?」
「きついですねー」
彼らの口癖をキャッチし、その後の彼らの行動や言動に注意を払ってみて下さい。
すると、どういう場面で、どういう精神状態のときに、どんな口癖を漏らすかがわかってきます。
面白いのは、言葉の「表現」と、隠し持つ「本心」はけっこう裏腹で、じつは逆のときも多いということです。
「やってられないよ」と言いつつ、じつはやる気満々のときに決まって反対のことを言う人もいます。
「頑張るしかないか」と言いつつ、本当は一番テンションが下がっているときの言葉だったりします。
そういう特徴がわかれば、相手の本心を見極めることができるのです。
他人のひとり言の分析が、今度は自分のひとり言の分析にも役立つようになるでしょう。
自分のひとり言がよくわかるようになれば、またさらに他人のつぶやきをキャッチする能力が高まります。
そういう相乗効果が生まれてくると思います。
■自分との対話こそが一番豊かなコミュニケーション
世の中で成果を上げ、活躍している人ほど、「自分との対話」が上手にできる人だと考えます。
それはビジネスの世界であれ、職人や芸術家の世界であれ、あるいはスポーツの分野でも同じでしょう。
なぜなら、これまで述べてきたように、自分の中に答えと真実があるわけですから、当然と言えば当然のことなのです。
イチロー選手は、自分の調子がいいときのバッティングフォームを覚えていて、つねに今の自分がそのときとズレていないかをチェックしていたそうです。
肩の位置が下がっていないか、手の位置、顔の向け方、足の開き方……。
細かくチェックして、少しでもズレがあると、その都度修正する。
だからこそ、あれだけ年間を通じてヒットを打つことができたわけです。
おそらく大谷選手も、自分なりのピッチングとバッティングフォームの型をしっかりと記憶し、自分で自分をチェックしているでしょう。
一流選手が一流として活躍できる背景には、つねに自分との対話があるわけです。
彼らは声にこそ出さずとも、頭の中でひとり言をつぶやいていたはずです。
芸術家などは、まさにその典型といえます。
真の芸術家は、それこそ「外」に答えを求めません。自分の「中」にある美的感覚と創造性を頼りに、まったく新しい表現を求めるわけです。そのオリジナリティは、自分との対話の中からしか生まれないものなのです。
私はシュールレアリズムの絵が好きですが、現実を超えた超現実、非現実の世界を描こうとする芸術家は、まさに表現者としての先駆者であり、パイオニアです。
彼らはときに、自分の深い内面へと入り込んでいきます。そこは無意識の深層であり、言葉を超えた世界です。
アーティストは「自分との対話」――つまり、ひとり言の達人でもあるといえるでしょう。
私のような科学者も、これまで発見されていない未知の法則や理論、技術を創り出すという意味では、同じだと考えます。
やはり自分とのコミュニケーションの中で、新しい気づきや発見が生まれます。
もっとも豊かなコミュニケーションは、「自己との対話」ではないか、と私は思っています。
■誰もが自分の脳と会話し、脳を進化させることができる
重要なことは、このような創造的な作業は、一部の限られた人たちだけのものではないということです。
なぜなら、人間であれば誰しもが脳を持ち、自分自身と対話すること=「つぶやき」ができるからです。
それによって、より創造的な生き方ができるのです。
そう言うと、「いやぁ、私なんてとてもそんなクリエイティブな思考はできないよ」とか、「私は決して頭のいい方じゃないから……」と否定する声が聞こえてきそうです。
ただし、それがとんでもない間違いであるということが、私の脳研究で証明されました。
私はこれまで1万人以上の人の脳を、MRI脳画像を使って分析してきました。
画像を使って、クリニックを訪れる人たちを診断・治療してきました。
そこから得られたのが、以下の3つの結論です。
②脳の形は日々変化する
③脳は使えば使うほど成長する
この中で、もっとも皆さんに訴えたいのは、③の「脳は使えば使うほど成長する」という結論です。
かつて、人間の脳は3歳になるとほとんど成長が止まり、大人になるともう脳は成長しないと考えられていました。
これはとんでもない間違いです。
たしかに、3歳までに脳細胞自体は揃うのですが、脳が機能するのはそれらが複雑にネットワークを築き、情報を交換し合うことができてからです。
その意味では基本的なネットワークができるのは、30歳前後であり、さらにそれから応用力として、脳全体を使う力が伸びていくのです。
とくに判断力を司る「超前頭野」は、40代以降にその旬を迎えます。しかもこの部分は、100歳を過ぎても成長を続けることがわかっているのです。
----------
脳内科医
昭和大学客員教授。医学博士。加藤プラチナクリニック院長。株式会社「脳の学校」代表。MRI脳画像診断・発達脳科学の専門家で、脳を機能別領域に分類した脳番地トレーニングや脳科学音読法の提唱者。1991年に、現在世界700カ所以上の施設で使われる脳活動計測「fNIRS(エフニルス)」法を発見。1995年から2001年まで米ミネソタ大学放射線科でアルツハイマー病やMRI脳画像の研究に従事。ADHD、コミュニケーション障害など発達障害と関係する「海馬回旋遅滞症」を発見。著書に『1万人の脳を見た名医が教える すごい左利き』(ダイヤモンド社)、『アタマがみるみるシャープになる!! 脳の強化書』(あさ出版)、『一生頭がよくなり続ける すごい脳の使い方』(サンマーク出版)など多数。
----------