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漠然と「金持ちになりたい」ではダメ…高卒ニートだった「YouTuberヒカル」が説く成功のための定石
人気YouTuberヒカルさんはもともと高校卒業後、就職した工場を数カ月でやめニートをしていた。なぜYouTubeで成功を収められたのか。ヒカルさんは「当時の自分は『何になりたいか』すら定まっていなかった。それを明確にし、道筋を決めたことでYouTubeでも成功できた」という――。

※本稿は、ヒカル心配すんな。全部上手くいく。』(徳間書店)の一部を再編集したものです。

■高校卒業後数カ月で工場をやめてニート生活

僕は高校卒業後、地元兵庫県の田舎町にある工場に就職した。でもその職場の方針とソリがあわず数カ月でやめた。そこから自宅でいわゆるニート暮らし。毎日、ゲームに明け暮れた。自分が歯がゆかった。ゲームと格闘しながら、理想と現実のあいだでただ苛立っていた。

そんな僕を見かねた友達がこう言ってきた。

「兄貴の話をいっかい聞いてみないか? なんかアドバイスしてくれるかもしれないよ」

聞けば、その人は会社を経営しているらしい。暇を持て余していた僕に断る理由はなかった。そしてその出会いが僕の人生の決定的な転機になる。もちろんそのときそんなことは想像すらしていなかった。

数日後、約束したファミレスで待っていると、その人物はあらわれた。高級外車で乗りつけ、颯爽と降り立つさまには成功者のオーラがあった。田舎のファミレスには不釣り合いなオーラだった。年齢は見ため30手前。イケメンで、いかにも仕立てのよさそうなスーツを着ていた。

■ヒカルを変えた若手会社経営者の一言

彼はテーブルをはさんで腰かけると、やわらかな物腰で自己紹介をした。そこからしばらくは他愛もない世間話。彼の話しぶりは終始おだやかだった。

「で、きみはいくら稼ぎたいの?」

ふいにそう切り出された。僕は答えに迷った。金持ちになりたいとは思っていた。でも具体的な金額までは考えたことがなかった。

「月100万円あったら最高っすね」僕はとりあえずそう返した。

なるほど。きみはいまなにをしてるの?」

つい最近まで工場勤務をしていたが不満があってすぐやめたこと。いまは無職でなにもしていないこと。僕はありのままを正直に話した。

聞き終えた彼は小さくうなずいたあと口を開いた。

「工場か」無職のほうを指摘されると思ったがそうではなかった。「工場勤務で月100万も稼げるかな?」

もっともな意見だった。僕は苦笑いするしかない。で、彼はさらにこう続けた。

「きみがやってるのはプロ野球選手を目指しながら、だらだらとサッカーの練習をやっているのと一緒だよ」

なにも言い返せなかった。ガツンと金槌で殴られたような気分だった。僕はおもわず唇を噛んだ。彼の目から笑みが消えていた。

■なりたいものになれるのは、なろうとしたものだけ

僕は工場をやめて腐っていた。苛立っていた。腐って、苛立って、迷っているだけだった。

でもそのいまの現状はだれがつくったのか? 不満の矛先はだれに向けるべきなのか? 僕だ。僕自身だ。

金持ちになりたい。そのための努力を僕はしてきただろうか? 正しい努力をしてきただろうか? ノーだ。完全にノー。さっき口走った月100万円という目標には1ミリも近づいていなかった。

僕はどこにも向かっていない。ぼけっと突っ立っていて100万もなにもない。あたりまえだ。愚かだ。野球選手になりたいのか、サッカー選手になりたいのか、それすらまともに定まっていないじゃないか。

そのとき僕はようやく目が覚めた。愚かな自分をやっと見つめ直した。僕は心のなかでつぶやいた。なりたいものになれるのは、なろうとしたものだけだ。

■労働者のままではお金持ちにはなりにくい

ビジネスにおいて人の役割は4つに大別できる。このことも初めはその経営者の男性から教えてもらったことだ。その4つとは、①労働者、②個人事業主(自営業者)、③経営者、④資産家(投資家)。それぞれお金の稼ぎ方が違う。

①「労働者」とは、自分の時間をお金に換える人のことだ。つまり、自分の労働力を切り売りする。自分の時間、労働力の対価として金銭報酬を得るわけだ。会社員公務員アルバイトの人はこの「労働者」である。

労働者であることのメリットは、毎月あるていど決まった収入があること。

労働者であることのデメリットは、その労働のクオリティが報酬に加算されにくい点だ。基本的にクオリティは度外視される。労働にかかわる自分の時間そのものに対価がつく。ようするに、いくらがんばって目覚ましい成果(売上)をあげたところで、それがそのまま給与(金銭報酬)に転換されることはない。かりにその職場で出世しても事情はたいして変わらない。爆発的な収入増はほとんど期待できない。

つまり労働者として働いている以上、お金持ちにはなりにくい。

■個人事業主は頑張った分だけ稼げる

②「個人事業主(自営業者)」も自分の時間、自分の労働力をお金に換える。そこは「労働者」と同じだ。個人事業主であることのデメリットは、まずなによりも労働者に比べて収入が安定しない点だ。毎月決まった収入が保証されているわけではない。でもそのデメリットは、メリットと裏腹である。

個人事業主であることのメリットは、自分の仕事のクオリティが金銭報酬としてダイレクトに返ってくることだ。がんばって働いて成果(売上)をあげればあげるほど、それに比例して収入が増える。

約束された毎月の収入はないが、自分が稼ぐことのできる金額にリミットはない。個人事業主は収入不安定のリスクをはらむ代わりに、やり方次第でいくらでも稼げる。

③「経営者」とは「労働者」を使い、自分の手持ちのお金をスケールアップさせようとする人のことだ。自分が雇った従業員たちの時間や労働力を、シナジーとレバレッジを利かせながらお金に換えていく。

経営者であることのデメリットは、雇用を抱えることの負担だろう。つねに従業員に給与を支払い続ける責任を負う。オフィスを構えるのであれば、人件費に加えて、家賃、光熱費、機材のリース料といった月々のコスト(固定費)も発生する。業種によってはかなりの設備投資も必要になる。ようするにタフな資金繰りがずっと続く。

でもそのぶん、経営者であることのメリットはデカい。かりに1日8時間働く従業員を10人雇っていれば、経営者は1日80時間分の労働力を保持していることになる。つまり、短期で大きな金額を動かすことができる。大きな金額を動かし、大きなリターンが得られれば、自分のビジネスをさらにスケールアップさせることが可能だ。

成功すればその収入はとうぜん、「個人事業主」とは比べものにならないくらい大きくなる期待値を含んでいる。

■お金持ちになって行動の選択肢を増やしてみたい

④「資産家(投資家)」とは、お金をお金に換える人のことだ。お金でお金を増やす人のことだ。自分やだれかの労働力を差し出すのではなく、自分のお金を株式市場や企業に対する資本として経由させて増やす。つまりお金自体に働かせる。

株価が下がったり、出資した企業が業績不振におちいったりすれば損をする。そのリスクを取る見返り、リターンとして収入を得る。超富裕層(世帯の純金融資産保有額が5億円以上)、富裕層(同じく1億円以上5億円未満)といった、いわゆる大金持ちになるには、株式での資産運用が不可欠だと言われている。

工場に勤めていたときの僕は「労働者」だ。自分の時間、自分の労働力をそのまま切り売りしていた。となると月収100万円なんて絵に描いた餅だ。「労働者」ではお金持ちにはなれない。

もちろんお金がすべてじゃない。お金はあくまでも手段だ。夢や目標をかなえる手段にすぎない。でもお金は自由度を拡げてくれる。行動の選択肢を増やしてくれる。だから僕はまずたくさんのお金を手にしてみたかった。

その日、ファミレスでその経営者の話を聞いた前と後で、僕は別人になった。大げさに言っているのではない。見慣れたいつもの町並みが輝いて見えた。苛立ちも迷いも消えていた。僕に「経営者」は無理だ。元手がない。「資産家」も同様だ。僕は「個人事業主」として生きる。競争に勝ち、お金を稼ぎ、有名になる。そして世界を変えてやる。そう心に誓った。

■正面から勝負をしない

仕事で勝つための第一条件。それは「正面から勝負をしない」ことだ。

実績十分の強者がいるフィールドでは勝負しない。少なくともその強者と同じ手法は取らない。

ようするに差別化だ。どこでなにをやるか。どこでなにをやれば、あなたは強いのか。差別化なくして成功はない。まずなによりもそれを頭に入れてほしい。

僕は高校卒業後、地元の工場に就職。でも数カ月で退職。今後の進路に思いあぐねていたとき、ひとりの会社経営者と出会う。この出会いは僕にとって大きな転機だった。そこから約1年間、その人の会社に勤め、ビジネスを一から学んだ。これは自慢だが、そこでの僕の営業成績はいつも断トツトップだった。

そして独立。兄とともに事業を興した。そこでも1年間、脇目も振らずその仕事に打ち込みビジネスイロハを肌で知りつくした。で、結論。ビジネスは基本さえ押さえればだれでもうまくいく。あたりまえのことをあたりまえにやる。それもまた勝つための鉄則のひとつだ。

■金髪起業家として月収1000万円を達成

つぎに僕はその2年間で培ったビジネスの手法自体を商品として売りはじめた。「金髪起業家ヒカル」と名乗り、情報商材ビジネスに乗り出したのだ。するとあっという間に月収1000万円を突破。100万どころではない。その10倍だ。もちろんうれしかった。でもうれしさの半面、興ざめする自分もいた。

こんなもんか。こうもあっさり成功するのか。つまんないな。そう思った。このまま情報商材ビジネスを続ければお金に不自由することはないだろう。でも物足りない。ヒカルの名はその業界ではあるていどは知られるようになった。でもぜんぜん物足りない。僕はもっと有名になりたい。有名になって世界を変えたい。それこそいまこの記事を読んでくれているあなたに知ってもらえるような存在になりたかった。

■「日本にも必ずゲーム実況の大きなブームが来るはず」

自分がもっともっと大きくなるための場所はどこか。考えるまでもなかった。YouTubeだ。当時、YouTubeはすでに大きな影響力を持つ動画配信サービスとして社会に浸透しつつあった。人気ユーチューバーもたくさんひしめいていた。

でも勝算はじゅうぶんあった。YouTubeはまだまだ過渡期。インターフェースも、動画投稿者の収益システムも、動画のクオリティもこれからどんどん変化していくに違いない。僕はその変化にいち早く適応できるだろう。その自信と確信があった。

なぜなら僕は工場をやめてから2年半のあいだ、ほかのだれよりもいろんなことを熟慮してきたからだ。あらゆる物事を突き詰めて考え、そこからさらに突き詰める、そんな思考訓練を繰り返してきた。発想力、応用力、分析力。それはだれにも負けない。そしてトーク力だ。トーク力は僕のいちばんの武器だ。なにせ小学生のときからいままでずっと磨いてきたのだ。

そうした僕の強みをすべて投入すれば、YouTubeの世界に間違いなく風穴を開けられる。大活躍できる。

2013年6月、22歳の誕生日を迎えて間もなく、僕はYouTubeチャンネルHikaruGames」を開設。これが僕のユーチューバーとしての出発点である。「Hikaru Games」はその名のとおりゲーム実況チャンネルだ。知らない人もいるかもしれないが、僕はもともとゲーム実況ユーチューバーだ。

そのときゲーム実況に目をつけたのには理由がある。当時、世界最多のチャンネル登録者数を誇っていたのは、PewDiePie(ピューディパイ)というスウェーデンゲーム実況ユーチューバーだった(2013年時点でのチャンネル登録者数はおよそ1000万人)。そして彼がYouTubeをはじめたのが2010年である。

ITの世界では「欧米のトレンドが5~10年遅れで日本にやってくる」と言われる。そろそろだ。もうすぐ日本にもゲーム実況の大きなブームがやってくる。僕はそう見込んだのだ。

■「トーク力を駆使すれば余裕で勝てる」

2013年、僕はそのときの日本のゲーム実況動画を徹底的に調べた。どれもたいしておもしろくなかった。100万回再生をコンスタントに稼いでいるチャンネルもあったがつまらない。実況のそのしゃべりがいまいちで、エンターテインメントになっていないのだ。それでも再生回数は稼げている。その理由はひとつだった。「マリオシリーズなどの任天堂の人気ゲームチョイスしているからだ。

ようするに単純に有名なソフトを、発売直後に最速でプレイし、いち早く攻略してみせていたからにすぎない。ぶっちゃけ、これなら余裕で勝てると思った。

僕ならゲーム攻略にトーク力を吹き込める。それはこれ以上ない差別化だ。すでにたくさんのゲーム実況チャンネルが存在していたが、僕の勝ちは明らかだった。

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ヒカル YouTuber
1991年兵庫県生まれ。実業家。本名は、前田圭太まえだけいた2013年ゲーム実況チャンネルHikaru Games」を開設し、ユーチューバーデビュー2016年、現在のメインチャンネルとなる「ヒカルHikaru)」を開設。テンポの良いトークと異彩を放つ企画で、たちまち大ブレイクYouTubeチャンネル登録者数100万人/200万人到達の国内最速記録(当時)を打ち立てた。また、ユーチューバーグループNext Stageネクストステージ」を結成し、楽曲リリースファッションショー出演など、さまざまなパフォーマンスを披露。2019年にはアパレルブランドReZARDリザード」を創業。若者を中心に人気を博し、実業家としても手腕をふるう。現在、「ヒカルHikaru)」のチャンネル登録者数は480万人、総視聴回数は42億回を超える(いずれも2022年8月時点)。国内トップクラスユーチューバーとして活躍中。

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YouTuberのヒカル氏 - 写真提供=徳間書店

(出典 news.nicovideo.jp)

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