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「焼肉きんぐ」が驚異の300店舗達成!ライバル店苦戦の中での成功の秘訣とは?

「焼肉きんぐ」300店舗達成の衝撃 ライバルは苦戦しているのになぜ? | ニコニコニュース

 焼肉チェーンの中でも近年著しく店舗数を増やしているのが「焼肉きんぐ」だ。ロードサイドに店舗を構える食べ放題焼肉店として知られる。業界トップである「牛角」の拡大が止まり、かつての人気店「安楽亭」も客足が離れているなか、焼肉きんぐだけは拡大を続けている。コロナ禍でも競合を差し置いて業績を伸ばしている。焼肉チェーン市場全体が緩やかに推移している状況下で、焼肉きんぐが成功している背景を考察してみた。

【画像】焼肉きんぐの名物料理(全7枚)

●運営は物語コーポレーション

 焼肉きんぐの運営元である「物語コーポレーション」(愛知県豊橋市)の沿革について見ていこう。1969年に「株式会社げんじ」として始まった同社は、80年代後半から90年代にかけて愛知県を中心に海鮮料理屋を展開していた。

 95年にオープンした「焼肉一番カルビ」を機に焼肉事業へと参入。しかし同チェーンヒットせず、2001年に開店した「丸源ラーメン」が当初の主事業となった。

 06年にはお好み焼き業態にも参入した。焼肉きんぐの1号店をオープンしたのは07年である。さまざまな業態の飲食店を展開していたが、特に丸源ラーメン焼肉きんぐの拡大が著しく、10年に同社は東証二部上場となった。11年には一部上場に鞍替えする。12年、新業態店として「寿司・しゃぶしゃぶ ゆず庵」をオープン。同社3番目の稼ぎ頭として台頭することになる。そして現在、焼肉きんぐ300店舗を突破、丸源ラーメンは約200店舗、ゆず庵は約100店舗となっている。

●あるようで無かった食べ放題焼肉店

 焼肉きんぐの店舗数推移を見ていくと07年に1号店をオープンさせた後、11年半ばには50店舗となり、14年6月期には100店舗を突破した。18年6月期には200店舗を超えている。コロナ禍でも店舗数は19年6月期末時点の223店舗から22年6月期末時点で286店舗(直営・175、FC・111)へと伸びている。

 同社の焼肉部門売上高(主に「焼肉きんぐ」の直営店売上高で構成)も同期間で301億円から390億円へと増加していることから、コロナ禍では単に店舗数を増やしただけでなく収益も伸びたことが分かる。

 東日本大震災以降、焼肉チェーン市場全体が緩やかに伸びているとはいえ、焼肉きんぐは破竹の勢いで拡大している。この間、牛角や安楽亭などの競合は軟調に推移した。

 焼肉きんぐが伸びた理由には、意外にも競合が食べ放題焼肉に力を入れてこなかった背景がある。特に物語コーポレーションが強みとするロードサイド立地で食べ放題焼肉という業態は少なく、焼肉きんぐは競合の少ない領域で店舗数を伸ばせた。

 ファミリー層をターゲットとした戦略も成功要因の一つである。肉類だけでなくサイドメニューも豊富で、フライドポテトやお子様カレーといった子ども向け商品も充実している。小学生料金は半額であり、一番人気の「きんぐコース」(3498円)の場合、夫婦2人・子ども2人で約1万円で済むのも、消費者にはリーズナブルに感じられるだろう。

 また、テーブルオーダー制を取っている点も乳幼児を連れた家族や高齢者にはウケたようだ。取りに行く面倒もなく、子どもから目を離す心配もないため安心して焼肉を楽しめる。実際、週末に店舗を訪れると家族連れでにぎわっている。

 コロナ禍でもこのテーブルオーダー制が有利に働いたようだ。他の客と密集することも無いため衛生面で不安を感じさせず、旅行や外出が憚(はばか)られる自粛期間中のささやかな楽しみとして焼肉きんぐに客が集まった。都市部ではなくロードサイドという店舗立地も伸びた要因の一つだろう。

 一方で同じく食べ放題焼肉として知られる「すたみな太郎」はビュッフェスタイルを取っており、衛生面で懸念されたためかコロナ禍では約140店舗のうち半分が閉店に追い込まれてしまった。

●焼肉ポリスが取り締まる

 店内では、従業員が専用のタスキをかけた「焼肉ポリス」として巡回している。焼肉ポリスは客の焼き方を取り締まるのが役割。間違った焼き方を注意してくれるほか、大きくて焼きづらい肉を切り分けてくれる。一人客や男性グループには厄介な感じも否めないが、ファミリー層には店員との接点の場として楽しめるのではないだろうか。

 その他、集客施策の一環として公式アプリ内で「焼肉ポリス手帳」なるコンテンツを配信している。来客回数に応じて会員ランクが上がっていくシステムで、実際の警察と同じように巡査から警視総監までの10階級に分かれている。特定のランクに到達するとオリジナルグッズをもらえるようだ。

 優良客を対象としたロイヤリティプログラムの一環として行われる会員ランクシステムは、飲食店だけでなく他の業態でも見られる。スタンプカードゴールや最上級ランクといった「目標」が近づくほど目標達成に向けたモチベーションが上がる消費者の心理傾向を「エンダウド・プログレス効果」と呼ぶ。

 試しに会員になってみて1つでもランクが上がれば、さらにその上を目指す心理が働くようだ。焼肉ポリス手帳のような会員ランクシステムはエンダウド・プログレス効果を促し、コアなファンを生み出すのに役立っているとみられる。

●初の都市型店舗も

 焼肉きんぐの今後について、物語コーポレーションが掲げている方針を調べてみた。現在主力のロードサイド店については出店を継続しつつも新たな出店方針として都市型店舗の開拓を進めるようだ。22年5月には東京・浅草に初の都市型ビルイン店舗をオープンしている。従来型店舗より酒類メニューを3割増やしていることから、飲み会・宴会需要を狙っているとみられる。

 また、インバウンドの回復も視野に入れているという。浅草店が成功すれば都市部での出店を強化するのであろう。実際に居酒屋チェーンの業績が回復しインバウンドも増えていることから都市型店舗は伸びる可能性がある。ただし、これまで得意としてきたロードサイド店よりも賃料は高く、客層もファミリー層とは異なる。新たにノウハウを蓄積する必要があるため一筋縄では行かないだろう。

●著者プロフィール:山口伸

化学メーカーの研究開発職/ライター。本業は理系だが趣味で経済関係の本や決算書を読み漁り、副業でお金関連のライターをしている。取得した資格は簿記、ファイナンシャルプランナー

食べ放題焼肉で有名な「焼肉きんぐ」

(出典 news.nicovideo.jp)

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