「自尊心が傷つき、地獄の日々」38歳女性が略奪愛で手に入れた“夢のセレブ生活”の現実
◆バーで知り合った男性を略奪婚
笹本翔子さん(仮名・38歳)は、バーで知り合ったイケメン経営者Mさん(42歳)に妻子があると知りながら猛アプローチ。Mさんの好きなタイプについてリサーチし、理想の女性を演じること1年弱。いわゆる略奪愛で、夢のセレブ生活を手に入れた。
「知り合った場所もバーだったし、最初は不倫関係を続けて欲しいものを買えるだけ買ってもらおうというぐらいの感じだったのですが、Mはやさしくてイケメンで、お金もバンバン使ってくれたため、すぐに自分のものにしたいと思うようになりました」
そんな卑しい気持ちで奥さんからMさんを略奪した翔子さんでしたが、再婚して豪遊できたのは、たったの5年。「50歳を目前にMの髪は薄くなり、中年太りでお腹がでっぷりと出てきました。そして容姿が崩れていくとともに、経営も傾いていったのです」と話す。
◆クレカを勝手に使って散財
「Mと知り合ったバーは、私とMの行きつけの店だったので、オーナーから状況を聞くたび溜め息が出ました。でも、そのオーナーにはお説教もされています。『Mが落ちぶれたのは、翔子ちゃんにお金を使い過ぎたからだ』と。でも、そんなの私に言われても困ります」
翔子さんにとっては、オーナーの言葉もMさんが落ちぶれてしまったことも、まったく受け入れられないことだった。だからこそ、翔子さんの散財は止まらない。Mさんのクレジットカードを借りて、あれこれコッソリ浪費をしていた。
「Mからは事前に『会社の資金が枯渇してヤバイから買い物を控えてほしい』『自宅マンションや別荘は売ることになるかもしれない』と言われ続けていました。でも実感もなかったので、いままでどおりお金を使っていたのです」
◆「自尊心が傷つけられ、地獄のような日々」
それからしばらくして、豪華な自宅マンションや別荘はすべて借金のカタにとられてしまう。そして、築年数20年超えのアパートへ引っ越すことに。2DKのリフォーム済でキレイな室内だったが、翔子さんは年季の入った外観が気に入らない。
「貧相なアパートだと思いました。本当に失礼な話にはなりますが、このときにはMの見た目も受け付けなくなってきていたので、こんなところで暮らすぐらいなら離婚したほうがマシだとも思い、パートの面接に行ってみることにしたのです」
すぐに採用されるだろうと思っていたが、スーパーから飲食店、ベッドメイクに清掃係と、いくつ受けても受からない。それどころか、面接官に態度や髪型、メイクなどを注意されるという不本意なことばかり。「自尊心が傷つけられ、地獄のような日々だった」と翔子さん。
◆「で、何ができるの?」と厳しく聞かれた
「たかがパートと見下していただけに、屈辱的でした。しかもある面接では、学歴もなく働いた経験もない私をジロジロと見ながら『……で、何ができるの?』と厳しく聞かれたこともあります。その後も面接に落ち続け、さすがに自分の人生を振り返りました」
現実の壁にぶち当たった翔子さんは、セレブ生活に憧ればかりを抱き、ロクに自分を高めてこなかったことを深く後悔したという。いまの状況をひとまわり以上年下の友人たちに話すと、「別に、次のターゲットを探せばいいじゃん」と軽く言われて終わり。
「真剣に私の相談に乗ってくれる人すら、残っていなかったのです。考えてみれば、玉の輿婚を目指すと意気込んでいた20代の頃は、まわりにもそういう子がたくさんいました。いまで言うパパ活や不倫を繰り返し、貢いでもらっては贅沢な暮らしをしていたのです」
◆まずは自分で生きていける力を養って
けれどいつの間にか周りも落ち着いて、気がついたときには同じ年ぐらいの友人はいなくなっていたのだとか。さすがの翔子さんも、だんだんと自分の状況を把握。「これを機に自分を見つめ直さないと、本当にヤバイ」と一念発起することに。
「Mに頼ったり利用したりしていたことも反省し、謝罪。するとMは私を責めるどころか、『僕のほうこそ、幸せにしてあげられなくてごめん』と逆に謝ってくれました。そしてこれまでのことをさらに深く反省したのですが、どうしてもいっしょに暮らす気にはなれずでした」
離婚して実家へ戻り、自立できるよう職安に通って、まずはパート採用を目指している翔子さん。お金を貯めて資格を取り、いずれは就職しようと考えているそうだが、両親ともに「もう少し早く気づくべきだったね」「いまから就職できるの?」と呆れ顔だという。
逆玉やセレブ婚に憧れを持つことが生きる糧になっているという人もいるかもしれない。けれど、そういった夢が叶わない場合や1人になってしまうこともあるだろう。まずは他人のお金を頼りにせず、自分だけで生きていける力を養ってみてはいかがだろうか。
<TEXT/山内良子>
【山内良子】
フリーライター。ライフ系や節約、歴史や日本文化を中心に、取材や経営者向けの記事も執筆。おいしいものや楽しいこと、旅行が大好き! 金融会社での勤務経験や接客改善業務での経験を活かした記事も得意