管理職のほとんどが「中高年男性」では変われない…日本人の「プレゼン下手」克服のために必要な3つの課題 | ニコニコニュース
※本稿は、竹内明日香『すべての子どもに「話す力」を』(英治出版)の一部を再編集したものです。
■「話す力」を育むために必要なこと
ここまでお伝えしてきた手法を駆使して目の前の子どもが話せるようになっていく様子を、私たちは確かに目撃してきました。8年間の取り組みの成果に手応えも感じています。
しかしそれでも、このままでは変化を起こせる範囲やスピードには限界があるとも感じています。なぜなら、教育現場だけの頑張りではどうにもならない、大きな構造上の問題も数多く存在するからです。
これまで多くの現場を回り、実際に先生方からも多くのお話をうかがい、さまざまな文献にも当たってきたなかで、日本の話す力を育むために乗り越えなければならない課題が4層にわたって存在するように感じています。
授業現場で子どもたちの話す力を育む環境を整えづらいのは、授業に立つ先生方だけのせいでは決してありません。そうならざるを得ない、上層(「学校経営」「教育政策」「社会・文化」)の課題があるからなのです。
■日本が抱える「4層のチャレンジ」
私はこの課題のことを「4層のチャレンジ」と呼びたいと思います。Challenge(チャレンジ)には、「課題」だけではなく「挑戦」という前向きな意味もあるからです。ぜひみなさんの多様な力を集結させて、一緒に挑んでいきたいと思っています。
ここからは、日本におけるこのチャレンジを上層の「社会・文化」から順番に見ていきます。
子どもたちが過ごす場所は学校だけではありません。教育現場と直接は関係ない家や外出先で聞こえてくる大人の会話からも、子どもたちは大きく影響を受けます。だからこそ、社会のあらゆる場所に子どもたちの話す力が後押しされる空気感や仕かけがあってほしいと思っています。
そのためには、次に紹介する3つの現状は日本に根深く存在するチャレンジだと感じています。
■日本人の独特なコミュニケーション文化
①話さなくても通じやすい環境
日本人は民族の多様性が少なく、お互いに常識を共有しやすいため、多くを話し合わなくても通じると信じられてきました。「暗黙の了解」「阿吽(あうん)の呼吸」「行間を読む」「以心伝心」「腹芸」「空気を読む」といった、固有のコミュニケーション文化[※1]がそれを物語っています。
また、日本人は自分の意見を言うのを控える傾向があることがわかっています。会話の様子を分析したある調査によると、日本人どうしの対話では自分の意見を述べる叙述文が米国人どうしの対話に比べて少なく、その代わりに「そうですよね?」と相手に同意を求めるような疑問形が多いそうです[※2]。つまり、自分の意向よりも相手の意向を慮(おもんぱか)る文化ということです。たとえ相手を否定する場合でも、相手が話し終わるまでは待って、いったん承知してから私見を述べることが多いのです。
これらの特徴は必ずしも悪いことではないと思います。このようなスタイルが評価される場面も多々あるはず。ですがその傾向が強すぎた場合、「話す力」という観点から見ればマイナス要素になる可能性もあります。海外では何も言わずに聞きとげる時点で「同意している」と勘違いされてしまうこともあるのです。
根づいているスタイルが一長一短であることを自覚し、ときには自分の考えを積極的に伝える姿勢も持ち合わせられるとよいのではと感じています。
■日本企業の管理職は「おっさんモノカルチャー」
図表1にある世界経済フォーラムの発表結果を見ると、G7各国のジェンダーギャップ指数の推移で日本は常に最下位にあり、ほとんど改善もされていないことがわかります。特に「経済」「政治」における順位が低く、「経済」の順位は156カ国117位(前回は115位)、「政治」の順位は147位(前回は144位)と悪化さえしています[※3]。
日本は主要各国と比べて在留外国人の比率が少なく、年功序列の組織も多いです。そのこともあってか、意思決定権者のほとんどは「中高年の男性」かつ「純日本人」という状況が続いています。日本GEの取締役やLIXILグループの副社長を務めた八木洋介氏は、ある講演会でこのような状況のことを「おっさんモノカルチャー」と痛烈に表現していました。
意思決定層に多様性が生まれ、コミュニケーションが盛んになることで、組織全体の「話す文化」も育っていくのでは、と想像しています。
大人の世界の話ではありますが、声を発さなくても通じやすいモノカルチャーな文化に慣れた大人が子どもと接すれば影響は及びますし、子どもたちがいつかこのような文化の組織に入っていけば、せっかく鍛えた話す力も損なわれていくのではと危惧しています。
■不正の背景に「言ったもん負け」の文化
②年長者に意見できないヒエラルキー構造
2021年に話題となった三菱電機の品質不正問題。創業100年の大企業に起こったこの問題に対し、従業員からは何かを指摘したら割をくう「言ったもん負け」の文化があるという証言が出ていたそうです[※4]。
率直に語り合える文化にとって重要な「心理的安全性」という概念を解説した『恐れのない組織「心理的安全性」が学習・イノベーション・成長をもたらす』では、東日本大震災における福島の原発事故の背景が語られています。そこではこの事故を「懸念の表明より周囲との同調を重視する沈黙の文化だからこそ起きたもの」だと位置づけており、国会事故調(東京電力福島原子力発電所事故調査委員会)の黒川清委員長が記した英語版の報告書の冒頭を、次のように引用しています。
■優秀な研究者の海外流出が止まらない理由
学界でも、年功序列のなかで若手が自由に研究できず、優秀な頭脳が海外に流出する状況が指摘されます。2021年にノーベル物理学賞を受賞した真鍋淑郎氏は、渡米を決断した理由は「本音を率直に話さない日本独特の習慣」が重荷となったことだと話しています。他方で米国では、「上司が寛大で、研究で何でもやりたいことができた」と言います[※6]。
旧体質の組織のなかには、職階や年功をもとにしたヒエラルキー構造が確立されていて、年長者に若手が意見するのは難しい風潮が残っています。議論が生まれず意思決定において率直に語り合えない文化は、会社組織や地域の町会だけでなく学校においても同様に感じます。年長者に黙って従うことや「議論することは悪」のような捉え方は、日本の隅々にまで蔓延(まんえん)していると私には思えます。
■話すこと自体が悪であるかのような意識
③話すことを禁じるコロナ禍
話をしにくい文化があることに加え、世代を超えて話す貴重な機会であった地域のお祭りや銭湯といった文化が減り、スマホの普及で人はますます話さなくなりました。このようななかで、2020年には話すことを妨げるダメ押しのような事態が起こりました。新型コロナウイルスの感染対策のために、あらゆる場所で「黙る」ことが強いられるようになったのです。この状況は学校現場も例外ではありません。
主体的・対話的で深い学び(通称アクティブ・ラーニング)が導入され、ペアワーク、グループワークが盛んになる予定だった学校でしたが、隣の席の子との会話や複数人数での対話は禁止、給食は「黙食」、休み時間も触れ合いなし。声を発する場面があっても、マスクによって表情がわからず、声もかき消されてしまい、コミュニケーションを図ることが非常に難しくなっています。
子どもたちは、話すこと自体がどこか悪であるかのような意識を持って学校生活を送っているように見えます。このニューノーマルがどこまで続くのか、これが学校内での話す力の育成にどの程度の影響を及ぼすのか、予断を許さない状況にあると感じます。
以上が、私が感じる「社会・文化」レベルのチャレンジです。この層にある課題は特に、教育以外のお仕事をされている方々にも意識して改善していける部分があるのではないでしょうか。
注
※1 日本を研究したエドワード・T・ホールは、このような特徴を「ハイ・コンテクスト」と称して、欧米のようにお互いが違いを前提に話し合って理解し合う「ロー・コンテクスト」型コミュニケーションと区別しました。
※2 井出祥子・藤井洋子編集・執筆『解放的語用論への挑戦文化・インターアクション・言語』くろしお出版、2014年
※3 World Economic Forum, GlobalGenderGapReport2021, 30 March 2021
※4 日本経済新聞「三菱電機『志のある現場主義』に進化を専門家に聞く三菱電機調査報告書私はこう見る(上)」2021年10月17日
※5 エイミー・C・エドモンドソン『恐れのない組織「心理的安全性」が学習・イノベーション・成長をもたらす』野津智子訳、英治出版、2021年
※6 日本経済新聞「ノーベル賞・真鍋氏『日本に戻りたくない』の教訓」2021年10月8日
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アルバ・エデュ代表理事、プレゼンアドバイザー
東京大学法学部卒業。日本興業銀行(現みずほ銀行)にて国際事業や審査に従事後、独立し海外投資家や日系企業の情報発信を支援して今日に至る。2014年、子どもの「話す力」の向上を目指すアルバ・エデュを設立し、13の自治体にカリキュラムを導入。受講者数は教員含め5万7000人を超え、認知・非認知能力の向上を実証。金沢市学校教育モデル構築会議委員、NRS社外取締役。二男一女の母。著書に『すべての子どもに「話す力」を 1人ひとりの未来をひらく「イイタイコト」の見つけ方』(英治出版)、監修書に『99%の小学生は気づいていない!? 思いを伝える「話す力」』(Z会)など。
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CMRY 噺家を作っても仕方無いんでねぇ・・・。政治家じゃねーんだからプレゼン下手なんか気にしなくていい。自分には何が見えていて、相手に何を伝えなければならないかを突き詰めれば、伝わらないなんてことは無いはずだ。あとこの著者のお前、モノカルチャーをどう定義してんだ? |
RT 最初の2つはともかく、感染対策を課題と言われても、だなぁ。基本的に日本の悪習慣として「言語化しない」ってのがあるのは事実だから大筋は否定出来んけど、それも二面性あって文化形成に寄与してきた面もある。とはいえ昨今の、なんでそうなのかに対してそういうもんだから以上の説明ができない先人はもうこの先通用しないのは確か |
T-Rex Hi 『飛沫感染ガー』とか『エアロゾル感染ガー』とか、必要以上にパニック醸成してたマスゴミだらけの「武漢コロナ禍」で子供をマスク無しで自由に会話させまくって、『学校パンデミック』多発してたら、3番目なんか書けなかっただろうに…(呆れ |
ゲスト 具体的な実数も出さずに「強弁w」しておいて、他人のプレゼン能力批判か… 「優秀な研究者の海外流出が止まらない」「ノーベル物理学賞の真鍋淑郎」 ←この人は気象学者だぞ。日本にいてもサンプルや需要がないから、竜巻や国土面積が豊富なアメリカに移住したんだ。それぐらい裏を取ってから記事を書けバーカ |
hoge 問題に対してコミュニケーション不足とか文化/習慣/教育のせいとかぼんやりした事言うのは馬鹿にでもできるんだよ。大事なのは意思決定や人事などで理由を論理的にし責任の帰属を明確にし透明な仕組みを作ること。 |
ゲスト 管理職には多様性な人材が必要だから女性や外国人を歓迎する、だが中高年の男性、お前はダメだ!…多様性って言いながら自分が嫌いな属性の人種は能力や適正など無視して排除w多様性って要は少数派を優位な立場にゴリ押しする為の差別ではw |