年収650万円・平均的な大卒サラリーマンの子…「やった!大学合格」と歓喜もすぐに知る「絶望的未来」 | ニコニコニュース
1月13日、14日の2日間に渡って行われる「2024年度大学共通テスト」。約50万人の受験生、「合格」を目指して奮闘しているところですが、「祝!合格」となっても、喜んでばかりはいられない現実が待っています。みていきましょう。
受験生の親…子の「合格」を喜んでばかりはいられない
いよいよ大学受験シーズン、本番といったところ。今年の大学共通テストには49万1,914人が志願しました。大学入試センター試験だった1992年以来の50万人割れと話題になりましたが、現役生大学(学部)の進学率は56.8%、短期大学や通信教育部等も入れると、進学率は60.7%。大学進学を目指す高校生の割合は、今後も大きくなっていくといわれています。
受験生をもつ親としても、とにかく落ち着かない日々が続きます。そして無事「合格」を手にしたときには、親子で喜びを爆発させることでしょう。ただ親としては急に現実に引き戻されるかもしれません。
――我が子もいよいよ大学……お金、結構かかるよなぁ
文部科学省『国立大学等の授業料その他の費用に関する省令』『私立大学等の令和3年度入学者に係る学生納付金等調査』によると、初年度納付額は国立大学で80万円強。私立大学になると、文系学部で120万円弱、理系学部で150万円強。順調に4年間で卒業できたとしたら、国立大学で240万円強、私立文系で400万円強、私立理系で550万円強。確かに、結構、お金がかかります。喜んでばかりいられません。
【大学初年度納付額】
(内訳)入学金:28万2,000円、授業料:53万5,800円
◆私立大学(文系学部):118万8,991円
(内訳)入学金:22万5,651万円、授業料:81万5,069万円、施設設備費:14万8,272万円
(内訳)入学金:25万1,029円、授業料:113万6,074円、施設設備費:17万9,159万円
◆私立大学(医歯系学部):489万0,539円
(内訳)入学金:107万6,278万円、授業料:288万2,894円、施設設備費:93万1,367円
厚生労働省『令和4年賃金構造基本統計調査』によると、大卒サラリーマン(正社員、平均年齢42.4歳)の平均給与は、月収で40.0万円、賞与などを含めた年収で658.4万円。そこから毎年100万円前後のお金が出ていくわけですから、確かにキツイものがあります。さらに親元を離れて下宿となると……思わず涙目になってしまいそうな現実です。
大学生の半数が利用する「奨学金」…その先に待ち受ける「あまりに大変な未来」
世間では「子3人以上世帯の大学無償化」などと話題になっていますが、すでに大学生になろうかという子をもつ親は、たいてい蚊帳の外。子の誕生以来、徐々に増えていった教育費は、大学入学でいよいよ最大の山場を迎えます。ここを乗り越えられるかどうか、正念場です。
一方、そんな親の苦労を子は知らない……かといえばそんなことはなく、多くの大学生は親の苦労、家計の現状を知ることになります。日本学生支援機構『令和2年度 学生生活調査』によると、大学(昼間部)で奨学金の受給者は49.6%。不採用や希望したが申請しなかったというケースも含めると、57.8%と6割に迫ります。なぜ奨学金を利用するのか……理由は単純、家計が苦しいから。
そんな奨学金の利用状況について、労働者福祉中央協議会『奨学金や教育費負担に関するアンケート』をみていくと、借入額の平均は300万円強、月々の返済額は1.5万円ほど。そんな生活が15年ほど続く……浮かび上がってくるのは、そんな奨学金利用者の平均像です。奨学金という借金から解放されるのは、大学を卒業し、40歳になろうかとしているタイミング。完済まで、実に長い道のりです。
【奨学金の利用状況】
◆利用していた奨学金
有利子:61.4%、無利子:49.4%、給付:2.0%
◆借入額
◆毎月の返済額
平均値…1万5,226円、中央値…1万3,833万円
◆返済期間
平均値:14.5年、中央値…14.4年
奨学金の返済は、ライフイベントにも影響を与えることも。さまざまなライフイベントに対し、奨学金の返済が影響した(「大いに影響している」「やや影響している」の合計)という回答をみていくと、結婚や出産、子育て、住宅取得でおよそ3割。就職等で5割弱、貯蓄にいたっては6割強が「奨学金の返済のせいで……」という経験をしています。
【「奨学金の返済が影響した」割合】
結婚…37.5%
出産…31.1%
子育て…31.8%
持ち家取得…32.8%
仕事や就職先の選択…46.1%
貯蓄…65.6%
1人暮らしの決断…46.0%
――やった! 第一志望、合格!
そう歓喜したところで、親の収入だけでは大学には通えないという事実に直面。奨学金という借金を、20歳になる前に背負わされることになります。そしてその先に待ち受けるのは、結婚も出産もマイホーム購入も諦めなければならない未来かもしれない。絶望的な未来を知り、思わず憂鬱な気分になってしまう……大学進学を素直に喜ぶことができない、これが現実です。
奨学金の返還をサポート…2024年度「奨学金制度の改正」
一方で、2024年度、奨学金制度が改正。貸与型奨学金の返還において、月々の返還額を減らす条件が緩和されます。そもそも貸与型奨学金の返還には毎月の返還額が一定の「定額返還方式」と、所得に応じて返還額が決まる「所得連動方式」があります。
「定額返還方式」において、返還が苦しいときに利用できる「減額返還制度」は、これまで本人年収325万円以下が条件でした。2024年度からは400万円以下に引き上げられます。さらに子どもがいる場合には、人数に応じて上限年収が引き上げられます。「所得連動方式」であれば、返還額算定のための所得計算に子ども1人につき33万円の所得控除が上乗せ。子育て中の返還額を少なく抑えることができます。
返済不要の給付奨学金の利用条件も緩和されるなど、奨学金制度は今後も改正が見込まれます。今回のように大学等の卒業生を対象とした改正もあるでしょう。自身の教育をサポートしてくれる奨学金は賢く利用するのが鉄則。最新の情報をチェックしておくことも重要です。
[参考資料]