今回、実朝(柿澤勇人)の宋船建造のエピソードが描かれ、八田知家(市原)が造船の責任者を務めた。「この仕事を最後に隠居しようと思っている」という言葉通り、この回が最後の出番となった。八田が上半身裸になる場面もあり、SNSでは「筋肉すごい」「八田殿と義村の筋肉比べの回」「八田殿に続き、平六も脱いで筋肉祭」といった声が上がった。
――自らの引退を決める知家について。
自分ではない誰かの思想で未来を決めるのではなく、己の道を自分で決めていくというのが八田らしいなと思いました。どの時代も、時代につくられてしまう人間が多いと思うんです。その中で、時代につくられるのか、時代をつくるのかと言うと、知家は「自ら時代をつくってやろう」と。存在意義を、精いっぱい旗を振りながら「俺はここで生きているんだ」というのを、必死に汗をかいて。それが決して押しつけではなく、誰かに認めてほしいわけでもないと思うんです。自分を納得させるために自分で自分の生き方を選ぶ、自分の主君は自分である、という思いでずっと演じていました。
――船を海に浮かべることができなかったことについて。
ロマンなんですよ。やっぱりなんでもロマンです。こういう時代劇であっても当時のことを知っている人間はいないんです。「日本人はこうであってほしい」という、ある意味ロマンが含まれていまして、それがまたNHK大河ドラマなりのロマンを描かせていただいているわけで、その中の八田知家というのは、それもまた八田知家が思うロマンですので。「こうなりたい」「こうしたい」という思いももちろん大事なんですけど、そこに向かっていく思いが一番、自分を強くしてくれるんです。形ではなく目には見えないプロセスを一番大切にする知家としては、失敗だとか、できなかったということは思ってはいないのではないでしょうか。まだまだこれからやり続ければ、途中で終わったということはないですし、諦めなければいつかは成功すると思いますので、そんな思いでやっていました。
――八田知家として過ごした時間について。
人生で一番悩みました。難しかったです。この役は本当に難しかったです。ただ、この八田知家という役を通じて、今回この『鎌倉殿の13人』、こんなに愛をもらえるとは思っていなかったです。本当に死ぬほどうれしいです。何にも変えられない財産をいただきましたので、本当にすてきな、貴重な経験をさせていただいて心から感謝しています。