ジョージア州決選投票もZ世代次第か
米国のジョー・バイデン大統領は11月9日、中間選挙についてこう「総括」した。
「私はこの国の若者たちに特に感謝したい。彼らは2年前と同じように歴史的な数の投票をした」
バイデン氏の念頭にあったのは、1996年以降に生まれた「Z世代」6860万人。総人口の20.6%を占める。そのうち有権者は18~24歳の2400万人だ。
76%が中間選挙では「必ず投票する」と答えている。むろんSNSを操り、国内外の動きは知り尽くしている。
情報リテラシーが高く、高学歴(18歳以上の57%が大学卒あるいは在学中)の多い票田だ。
(日本のZ世代は、投票意向は74.1%だが、「必ず投票する」と答えた人は42.8%と米国のZ世代とはかなり差がある)
(https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000158.000033586.html)
特に新型コロナウイルス感染症によるパンデミックの中で10代を過ごしてきただけに公衆衛生や医療対策には敏感だ。
それに相次ぐ銃乱射事件が小中学校や高校で頻繁に起こっている。
身をもって乱射事件を身を体験した世代だけに、銃規制への取り組みは半端ではない。真剣味は他の世代とは比較にならない。
さらに人工中絶問題や地球温暖化は、自分たちの「今」と「将来」に関わる重要課題だ。
「人工中絶は違法だ」と判断した最高裁判決を支持し、「地球温暖化は嘘だ」と言い切るトランピズムにはついていけない。
案の定、Z世代の77%はドナルド・トランプ前大統領の政治スタンスが嫌いだ。トランプ支持は32%と、世代別では最低だ。
こうしたことから、「スウィング・ステート」*1に住むZ世代有権者は、選挙結果を大きく左右する要因になると見られていた。そしてその通りの結果が出た。
(https://thefulcrum.us/Elections/Voting/young-people-voting)
*1= 今回決選投票になったジョージア州をはじめアリゾナ、ネバダ、フロリダ、ノース・カロライナ、オハイオ、ペンシルベニア、ウィスコンシン各州を「スウィング・ステート」と呼ぶ。選挙のたびに勝つ政党がくるくる変わる。
決着がつかないジョージア州は12月6日に決選投票になった。Z世代の票が勝敗のカギを握ることは間違いない。
民主党からは銃規制活動家の「オバマ2世」
そのZ世代は、今回、ただ指をくわえて見てはいなかった。Z世代から2人の候補が民主・共和両党から下院選に打って出た。
そして明暗がはっきり出た。
一人はフロリダ州第10区から出た民主党候補でアフロ・キューバ系のマックスウェル・アレハンドロ・フロスト氏(25)。
2012年、コネチカット州ニュータウンで起こった銃乱射事件をきっかけに銃規制強化・廃絶活動に飛び込んだ。
フロスト氏の父親はキューバ系ハイチ人、母親はレバノン系プエルトリコ人。母親とともにキューバから米本土に移住したが、生活は苦しく、フロスト氏は生まれると同時にカンザス州出身のミュージシャンの養子になった。
フロスト氏は養父の影響を受けて一時音楽学校に進むが、その後、フロリダ州のバレンシア公立大学に進む(中途退学のようだ)。
在学中からコミュニティ活動を続けて、現職は銃規制推進団体「マーチ・フォア・アワ・ライブズ」組織委員長。
選挙では銃規制、地球温暖化阻止、人工中絶の合法化、外交では母方の影響を受けてパレスチナ独立を支持するとともにイスラエルとの共存を訴えてきた。
民主党リベラル派のバーニー・サンダース、エリザベス・ウォーレン各上院議員の選挙運動にはせ参じ、2012年、バラク・オバマ氏の大統領選挙キャンペーンにも参加した。
「主義主張や生きざまもまさにオバマがモデル。オバマ2世的存在だ」(地元紙記者)
オバマ氏の2期目の大統領就任式ではジャズ・グループのメンバーとしてドラムを叩いた。
今回下院選に出馬したのは、現職のバル・デミングズ下院議員が上院選に立候補したため。予備選ではZ世代や黒人団体の熱狂的な応援を得て、共和党候補に大差をつけて勝利した。
共和党は「トランプ子飼い」の金髪美女
一方、共和党からは、ニューハンプシャー州第1区から出馬したカロリーネ・レビット氏(25)。
トランプ大統領の副報道官を務めた「トランプ好みの金髪美人」(ホワイトハウス詰め記者)だ。
レビット氏は、ニューハンプシャー州の創立133年のカトリック校、セント・アンセルム大学卒。在学中から地元テレビ局のプロデューサーをするなどジャーナリズム指向で、卒業時にトランプ大統領のスピーチライターに抜擢され、その後副報道官を務めた。
2021年1月からは共和党のエリース・スティファニック下院議員(ニューヨーク州選出)の広報部長をしていた。
同下院議員は、トランプ氏に対する弾劾決議案に賛成して党内ナンバー3の党議員総会長を解任されたリズ・チェイニー氏の後釜になった大物議員だ。
ニューハンプシャー州第1区は、民主党のクリス・パパス議員が2期務める「スウィング選挙区」。トランプ氏はそこに「子飼い」のレビット氏をぶつけた。
レビット氏はワシントン・ポストとのインタビューでこう語っていた。
「Z世代は ほとんどがリベラルだと言われているが、この世代は正しいと思ったことをはっきりと言う世代だ」
「私が立候補するのは、Z世代の保守主義を世間にはっきりと認識させるためだ。若い健全保守主義の存在を示したい」
「バイデン氏やナンシー・ペロシ下院議長やパパス候補の経済政策や移民政策が今の混乱を巻き起こしている。それを是正するためには健全保守主義が不可欠だ。20年の大統領選挙はフェイク選挙だ」
(https://www.washingtonpost.com/politics/2022/11/03/karoline-leavitt-republican-gen-z/)
共和党下院幹部も物心両面から支援し、世論調査では一時は民主党のパパス候補と互角の戦いを演じてきた。
だが、選挙民、特に無党派層に接するにつれて感じたのは「トランプ離れ」だった。主流メディアの反トランプ報道がひたひたと陣営内外に広がっていく。
「あなたは選挙キャンペーンでフェアな扱いを受けてる?」
レビット氏は「そうかもね。でも人間って、自分の信じることをやらないとダメよ。他人に何と言われようとも」と答えるので精一杯だった。
終盤戦では「2020年大統領選否定」を取り下げ、ウエブサイトでは「トランプ推薦」も削除した。
結果は得票数14万1899(46%)、パパス候補(16万6852=54%)に2万票差をつけられての敗退だった。
「オズ推薦」でメラニアに謝ったトランプ
中間選挙後、強気な姿勢を崩していないトランプ氏が、11月10日、珍しく「謝罪」した。
(トランプ氏は間違っていようと前言は取り消さないし、謝罪などしたことがない)
「私は、妻のメラニアと(フォックス・ニュースのアンカーマンの)ショーン・ハニティ氏に謝りたい」
「(ペンシルベニア州選出の上院選に立候補して落選した)メフメト・オズ氏を推薦するよう助言したのはメラニアとハニティ氏だったと報道されたからだ」
「これはフェイクニュースだ。謝りたい」
(https://news.yahoo.com/trump-says-id-apologize-melania-165604006.html)
この報道は、11月9日、ニューヨーク・タイムズのマギー・ハーバーマン記者がツイートしたものだ。
(https://www.businessinsider.com/trump-angry-melania-for-urging-him-back-oz-maggie-haberman-2022-11)
同記者はベストセラーの「Confidence Man: The Making of Donald Trump and Breaking of America」の著者だ。トランプ氏が信頼している数少ないジャーナリストの一人と見られている。
トランプ氏にとってオズ氏が勝てば、大きな勝利だったはずだ。その意味ではレビット氏にはどうしても勝ってほしかった。
レビット氏が勝てば、「Z世代のスター」として大いにPRし、主流メディアの鼻を明かしてやりたかったはずだ。ところが、これこそトランプ氏の誤算であることが選挙後判明した。
ハーバード大学ケネディ行政大学院のジョン・デラ・ボルペ教授はこう分析している。
「Z世代の63%は民主党を支持、共和党支持派35%だった。人種別にみてもZ世代の黒人の89%は民主党支持、ラティーノは64%、白人は58%が民主党支持者」
また「I Gen Politics」ポッドキャストのホスト、ビクター・シー氏はこう指摘している。
「その理由は、Z世代の最大関心事は地球温暖化、銃規制、人工中絶であり、共和党候補たちはこれらのアジェンダに一切言及しなかったからだ」
(https://www.msnbc.com/11th-hour/watch/young-voters-boost-dems-in-midterms-153205829586)
こうした傾向は当分続くだろう。だとすれば2024年の大統領選挙を従来通りのパターンで予想するのは現実的ではない。
Z世代は中間選挙だけでなく、2024年には新たに生まれるZ世代有権者とともに米国をよりリベラルでまともな国にしていく可能性が出てきた。
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ぼくらの春はこれからだ!
20代で国家運営の先行きをどこまで見通せているものかと思う一方、還暦過ぎても自らの足元すら見えていないダメな人も居るからな。国造りに参加しようと言う意思はあっても行動しない日本の非投票有権者との差は大きいな(良い方に転がるとは言っていない)
米国の若者が民主党に投票したからと言って、日本の若者は民主党(立憲・国民)には投票しませんよ
日本は福祉を一番声高に叫ぶ老人政治家に老人達が投票して終わるっていう老人のための国っすから
嘘つきの独壇場の日本の選挙活動自体が欠陥システムだからそれを真に受ける人間を増やしたところで嘘つきのマスコミや政治家が得をするだけで普通の人間からしたら無意味