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ウエストランドが語る“苦しかった冬の時代”「2~3年全くテレビに出られない時期も」

ウエストランドが語る“苦しかった冬の時代”「2~3年全くテレビに出られない時期も」

“小市民の怒涛の叫び”が時代を変えた。大会史上最多、7261組の漫才師たちが頂点を競った’22年の『M-1グランプリ』。見事優勝を勝ち取り、’23年の芸能界の“主役”として名を上げたのが、タイタン所属の毒舌漫才コンビウエストランドだ。

結成14年目にして初の栄冠を獲得、切れ味鋭い悪口を武器に全方位にケンカを売りつける井口浩之と、酔って自分の会社の社長を抱こうとするなどクズエピソードが豊富な河本太。そんな彼らは「自分の人生なんですけど、初めて主役になれた気がしました」と優勝後に言い放った。ふたりが歩んだ人生の主役を手に入れるまでの道のりは険しいものだった。

◆芸能界のスターたちの覇気に押し潰されかけていた日々

――優勝おめでとうございます。SPA!にもよく出てくださるので、応援していました。

井口:僕らのことを? 誰が優勝しても「応援していました」って言うんでしょ?

――いや、そんなことは(笑)。優勝してからは多忙ですか?

井口:優勝直後に100件ほど仕事の問い合わせがきて寝られない日々が続いてましたけど、10日後ぐらいからは落ち着いてきましたね。

河本:優勝する前は僕だけが暇で。井口がピンで呼ばれることが多かったんですが、さすがに優勝したらコンビで忙しくしてます。僕にはテレビに3回出ると体調が悪くなるっていうジンクスがあったんですけど、今のところは元気です(笑)

――優勝後の「自分の人生なんですけど、初めて主役になれた気がした」という井口さんのコメントには、多くの共感が得られました。あれはその場で考えたものだったんですか?

井口:いや、『M-1』の審査中から考えてました。決勝でネタが2本できた段階で「ちょっと考えとかないとな」とは思っていましたね。

河本:聞いた瞬間に「コイツ、しっかりコメントを決めてきたな」と思いました(笑)。絶対カッコいいこと言おうとしてるじゃんって。

井口:いや、優勝コメントって、『M-1』の放送終了までの5秒しか時間がないからムズいんだよ!

◆『いいとも!』が決まったときは「売れたな!」と思ったけど…

――フリー芸人でキャリアをスタートし、結成5年目で『笑っていいとも!』の準レギュラーなど、早くから活躍されている印象があります。

井口:それこそ『いいとも!』は人生の主役級の芸能人しか出られない番組。僕らみたいな脇役中の脇役が出ても……見向きもされませんでした。出るだけでは仕事も増えないし、人気者にもなれない。芸能界の主役たちと絡めるいい経験はさせてもらいましたけど、本当は嫌でしたね。

河本:『いいとも!』が決まったときは「売れたな!」と思って結婚したんです。でも、全く売れずにここまできて、家族にも迷惑をかけちゃいました。

スターから遠のいたお笑い第七世代ブーム

――そこから‘20年の『M-1』決勝進出まで、目立った活躍がない時期に入ります。

井口:第七世代が出てきたときが一番苦しい冬の時代でした。ぺこぱとは芸歴も変わらないのに、僕らはお笑い第七世代として一緒にテレビに出られない。ウエストランドというコンビは“旬な面白い人を出そう”というテレビフィルターに弾かれていたんです。2~3年全くテレビに出られない時期もあった。そんななかで唯一出られたのが『M-1』でした。

河本:第七世代が活躍していたころ、僕は子供ができたんです。もともと『いいとも!』終了後から芸人として全く仕事がなくなり、奥さんからは『芸人をやめろ!』って言われてたのに、さらに風当たりが強くなって。でも、絶対やめたくないから内装屋に就職して、最低限の生活費を家に入れてなんとか続けてきた。社会人でも働けると思いますけど、楽しい芸人の生活がなくなると思うと……怖かった。自分勝手な話ですけど。

井口:“楽しいからやめられない”は僕も同じ。もしもミュージシャンとしてミリオン歌手になれるとか、役者として月9の主役になれるって権利が目の前にあったとしても……、僕は売れるかどうかわからない芸人の道を選びます。それぐらい僕もお笑いが好きで、やめるという選択肢はなかったです。

◆相方の面白さが世間にバレたら、絶対売れると思ってた

――テレビに出られず、売れるかどうかもわからない状態で、なぜ、“楽しい”だけで続けられたのですか?

河本:僕は相方の面白さが世間にバレたら、絶対売れると思ってたんで。だから、くすぶってる期間をどうやって“騙しながら”続けていくかが僕の勝負でした。もしかしたら売れないんじゃないか、なんて考えない。「僕たちは大丈夫だ」って自分で自分を騙してた。

――井口さんの才能を認めていたということですか?

河本はい。タイタンに入ったとき、たまたま僕だけCMの仕事が決まって若手なのにありえないぐらいの給料が入ってきたんです。でもそのギャラを折半した。「コイツのほうが売れるから、今からギャラを半分ずつにしておこう」と思って。その後は圧倒的に井口のピンの仕事が多くなったので、我ながら人生最大の先見の明でした(笑)

◆毒舌って言われるほど“悪口”は言ってない

――「人を傷つけない笑い」の時代で、毒舌漫才が受け入れられると思っていましたか?

井口:時代が、人を傷つけない笑いになればなるほど逆張りの自分たちの笑いがカウンター的に受け入れられ、チャンスが増えると確信していました。

――河本さんはどうですか?

河本:僕はちょっとネタは……。カウンターとかよくわかんないですね(苦笑)。

井口:こいつ、ネタに関しては一言も意見ないんですよ!

――そうなんですね(笑)

井口:大体、毒舌って言われるほど“悪口”は言ってない。僕らのネタを書き起こしてもらったら、全く問題発言をしてないのがわかりますから。確かに今回の『M-1』決勝で「瓦礫の前でパジャマ」とか、どの芸人のこと言ってんだって臆測も出てましたけど、こんなの毒でもなんでもないですから。僕らよりも爆笑問題のほうがよっぽどヤバい。

※「瓦礫の前でパジャマ
’22年M-1』決勝戦のネタのなかでの一言。ウザい芸人の特徴として、単独ライブで「瓦礫の前でパジャマ」などの不条理なタイトルをつけると毒を言い放ち、爆笑をかっさらった

爆笑問題がいるからビビらずに突き進める

――やっぱり毒舌漫才に関しては、事務所の先輩である爆笑問題さんの影響が大きい?

井口事務所トップ爆笑問題が最も毒を吐くので、僕らの毒なんか事務所が気にしないんです。会社自体が毒舌に麻痺しちゃってて、毒の基準がバグってる。でも一番上の人間が一番やんちゃだから、若手である僕らも物おじせずヤバいことができます。爆笑問題に比べたら僕らの漫才なんて優しいほうですけどね。

――そういう環境下だからこそ、今の漫才スタイルが生まれたんですね。優勝する自信はありましたか?

井口:2本目のネタの段階で、「優勝しちゃいそうで怖ぇな~」っていうのはありました。だからコメントも考えていたわけです。でも……、はっきり言って『M-1』に優勝して泣く芸人たちの意味が全然わかんない。賞レースで優勝したくて芸人やってるわけじゃないでしょ?

河本:僕は嬉しかったですけどね。泣かないと思ってましたけど、優勝した瞬間に涙がこみ上げてきましたもん。

井口:なにが涙がこみ上げてくるだよ! こいつもそうですし、全チャンピオンにも言いたい! 優勝したら生涯生活を保障してくれるんだったらわかりますけど、ひとつのバラエティ番組でウケただけ。それなのに泣く意味がわからない。確かにでかい仕事ですけど、それが成功した後が大事でしょ。油断していたら仕事はなくなりますから。それじゃダメなんです。

◆『M-1』で優勝できても僕らのお笑い人生は終わらない

――『M-1』も、ひとつの仕事が終わっただけだと?

井口:そう。世間は『M-1』を神格化しすぎている。ゴールデンレギュラーが決まるほうが遥かにでかいことだと僕は思いますけどね。優勝しても人生は終わらないんだよ!

――そんなゴールデン番組で“主役”になれる権利をついに手にしたおふたり。「まだ人生の主役になれていない」と感じている読者がいたら、かけてあげたい言葉はありますか?

井口:世間が評価してるキラキラしたものや、正しいと言われる形に無理にハマろうとしなくていい。そういうのって結局、自分を抑え込んじゃうので、長続きしない。僕らだってはやりに乗って傷つけない笑いを追求し続けることはできなかったはず。僕らはお笑いの仕事が好きってだけで突っ走ってきた。それでも“信念”を貫けば、必ず結果が出る。そうすると今度は世間側が僕らをお笑いとして“正しい”と言いだしました。だから読者の方も迷っているなら、自分の好きなものに立ち返って、信念を再確認してほしい。僕らみたいなもんが優勝できるんですから、大丈夫ですよ。

河本:僕は才能のある相方についていったら優勝させてもらえました。みなさんも会社で「こいつについていけば大丈夫そうだな」という人間を早く見つけて、あとはひたすら言うことを聞く。そうすれば主役への道が開けてくると思います。

井口:いや、それで主役になれるのはお前だけだよ! 読者のサラリーマンからしたら「なめんな」って話だぞ! バカか!

WEST LAND
同級生だった井口浩之と河本太が’08年に結成したコンビ’10年から「日本エレキテル連合」らとともにタイタン事務所預かりに。『M-1グランプリ』2020第9位、2022優勝。1月21日より、初の冠番組となる『VSウエストランド』ABCテレビ)が放送

取材・文/南ハトバ 撮影/尾藤能暢 ヘアメイク/田中菜月 フライヤーデザイン/李以子

―[インタビュー連載『エッジな人々』]―
’22年『M-1グランプリ』覇者の、ウエストランド(写真左:井口浩之 写真右:河本太)

(出典 news.nicovideo.jp)

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