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ラノベ不況は作品の劣化や少子化ではなく、“意外すぎる理由”によるもの!?

少子化でも、作品の劣化でもない…「ラノベ市場」が10年で半分以下に衰退した“意外すぎる理由” | ニコニコニュース

 少子化でもなく、作品の質の低下でもない……かつて出版業界の成長産業として、大きく期待されていた「ラノベ」はなぜ読まれなくなったのか?

 ライターの飯田一史氏の新刊『「若者の読書離れ」というウソ:中高生はどのくらい、どんな本を読んでいるのか』より一部抜粋してお届けする。(全2回の1回目/後編を読む) 

◆◆◆

伸びる児童書、落ちるラノベ

 書籍不読率減少と平均読書冊数増加の恩恵を受け、児童書市場は少子化にもかかわらず堅調に推移し、子どもひとりあたりの書籍代も増加傾向にある。

 1998年には児童書販売額700億円、14歳以下人口は1937万人、児童書の14歳以下人口ひとりあたり販売額(年間)が3614円だったのが、2021年には児童書販売額967億円、14歳以下人口は1493万人、ひとりあたり販売額が6477円(図10参照。児童書販売額は出版科学研究所『出版指標年報2022年版』、14歳以下人口は総務省統計局人口推計を元にした)

 対照的なのが文庫のライトノベルラノベ)市場だ。ライトノベルとは何かの定義はさまざまだが、簡単に言えばKADOKAWA電撃文庫角川スニーカー文庫といった特定のレーベルから刊行されるエンターテインメント小説だ。カバーや口絵、挿絵にキャラクターイラストを用いており、マンガアニメゲームと近い感覚で読める、サブカルチャーとしての文芸である。

 中学生の読書量は微増、高校生はほぼ横ばいであるにもかかわらず、文庫ラノベ市場は2012年284億円をピークに、2021年には123億円と半減以下になった(出版科学研究所調べ)。2000年代には産業として注目され、2012年までは市場が伸び基調にあったが、それは過去のものになった。「ターゲット層の読者が少子化しているのだから仕方ない」と思うかもしれないが、さすがに子どもの数は10年で半分にはならない。

 10代人口の減少率は毎年小数点以下数%から1%台前半である。対して文庫ラノベ市場は激しいときには前年比14%近く減少しており、少子化の速度をはるかに上回っている。かつて「中高生向け」と言われたラノベ市場に、一体何が起こったのか。

 これには、2010年代を通じて、株式会社ヒナプロジェクトが運営する日本最大級のウェブ小説投稿・閲覧サイト「小説家になろう」発の単行本ラノベ(判型が大きいソフトカバー仕様単行本で、文庫本コーナーではない場所に置かれるもの)という「大人向け」の市場が開拓されたことが関係している。

小説家になろう」というウェブサイトには、誰でも小説を投稿できる。その無数に投稿されたウェブ小説のなかで人気になった作品が、2000年代後半以降、書籍化されるようになった。そのほとんどは、出版社主催の小説新人賞を受賞するなどしてプロデビューした作家によるものではなく、それまで商業出版の経験がないアマチュアが投稿した作品である。

小説家になろう」に限らず、各種小説投稿サイトで人気を博したことで商業出版デビューを果たす作家は、今ではまったく珍しくなくなった。「小説家になろう」発の異世界ファンタジーは「なろう系」と呼ばれる。なろう系ウェブ小説を書籍化した際の読者の中心は、作品にもよるが多くが20~40代、つまり大人であると言われている。

 そして2010年代前半には、なろう系作品が従来の文庫ラノベよりもよく売れる、すなわち売上の初速が良く、重版率が高いという現象が確認された。2013年には推定発行金額が30億円市場だった単行本ラノベ(その多くがなろう系書籍化)は、2016年には100億円市場に急成長し、以降はほぼ横ばいをキープしている(出版科学研究所調べ)。

文芸市場の規模は10年で「4分の1」に

 2013年以降、文庫ラノベが凋落していったこととは対照的である。この差はなぜ付いたのか。なろう系は、ウェブ小説サイト上で人気になった作品だけを本にする。つまり読者によるテストマーケティングが先に済んでおり、ウェブ上での競争に勝った作品だけを書籍の企画として通す。そちらのほうが本読みのプロ、「目利き」であるはずの編集者が企画のジャッジをしている書き下ろしの文庫ラノベよりも、ヒットの打率が高かったのである(大半の作家や編集者は、どうがんばっても一般的な読者とは感覚がズレており、実際の読者が支持した作品を本にしたほうがよく売れる、ということだ)。

 正確に言えば、ラノベに限らず、小説誌・文芸誌発の一般文芸や、ミステリー、SFといったジャンル小説よりも、人気のウェブ小説書籍化のほうがよく売れた。「出版月報」(出版科学研究所)2021年9月号によれば、文芸単行本全体に占めるウェブ発のラノベ単行本の割合は冊数ベースで43.7%、金額ベースで37.2%に及ぶ。

 また、日販営業推進室出版流通学院『出版物販売額の実態2021』掲載のグラフによれば、2010年の売上を100としたときの2020年の文芸市場の売上は46.4、同『出版物販売額の実態2022』では2011年の売上を100としたときに2021年は46.7である(図11参照)。

 つまりウェブ小説書籍化は、2010年代を通じて「半分」以下になった文芸市場のおよそ「半分」を占めた――ウェブ小説以外の文芸市場の規模は10年で4分の1になった――ことになる。市場のシュリンクに抗うように成長してきたウェブ小説書籍化作品群が存在していなければ、文芸市場はより壊滅的にしぼんでいたはずだ。

 ともあれ、なろう系の急速な台頭の結果、既存の文庫ラノベレーベルウェブ小説を書籍化するようになった。のみならず、文庫書き下ろしのオリジナル作品でも、なろう系を読むような大人の読者向けの作品を増やし、主人公ヒロインが大人の作品を刊行するようになった。「ラノベ=中高生向け」という建前を取り払ったのである。

「若者のラノベ離れ」はなぜ起きたのか?

 結果、起こったのが本来メインターゲットだったはずの10代の急速な客離れであり、市場の半減だ。なぜ10代向け市場に大人向けを加えると10代に敬遠されるのか。たとえば若者向けの服の売場に突然おじさん向けの服も売られるようになったら「従来どおりのものも売っていますよ」と言われたところで、若い人は「なんか違う」と感じ、積極的にその店を使いたいと思えなくなるだろう。

 それと同じで、2000年代までは中高生にとってラノベというカテゴリは「自分たち向けのジャンル」と積極的に思える場所だったが、2010年代以降は「自分たち向けの作品も一部にあるジャンル」程度の位置づけに変わってしまったのである。ターゲット顧客と提供価値がブレれば、当然、客離れが起こる。

 従来からある「文庫ラノベ」と、ウェブ小説書籍化を中心とする「単行本ラノベ」を合算した数字を見ても、ラノベ市場は2016年302億円(文庫202億円、単行本100億円)がピークである。以降、単行本は横ばい、文庫ラノベは顕著な減少のために、2020年には単行本と文庫本を合算して244億円となった。なろう系書籍化作品の目先の売上(の効率性)に気を取られてラノベ文庫レーベルは大人向けに力を入れたが、トータルで見れば文庫ラノベのマーケットは従来の「中高生向け」を中核としたもののほうが大きかったのだ。

 大人向けにシフトした代償に、中高生からの支持を失った。統計上、中学生の読書量は増え、高校生は横ばいだ。中高生(とくに中学生)のほうを向き続けていれば文庫ラノベのここまでの縮小は避けられただろう。それは児童書市場の活況を見れば疑いえない。

累計発行部数460万部は伊達じゃない? 日本一読まれている自己啓発小説『夢をかなえるゾウ』が大人だけでなく中高生にも刺さるワケ へ続く

(飯田 一史/Webオリジナル(外部転載))

わずか10年でラノベに何が起きたのか? ©getty

(出典 news.nicovideo.jp)

NO EMPTY

NO EMPTY

転移・転生モノが流行ってるからと手を変え品を変えそればっか沢山出てくるから、読者が辟易してるだけ

RT

RT

なろうからの青田買い数うちゃ当たるな粗製乱造を蔓延させた低品質化の結果もあるが、一番最悪なのはそこから派生する打ち切りラッシュ。ただでさえウェブでも読める上に既存と比べて一冊単価高いのに、書籍の1、2巻買って続編でませんとか、当たり前になりすぎてそりゃ信者以外誰も買わねえわ。

200

200

むしろラノベ市場が10年たってもたった半分くらいしか衰退してないことに驚きだな、ネットでなろうみたいに似たような中身ぺらっぺらの読み物がタダでいくらでも読める時代なのにわざわざ買うやつがいるのか どうでもいいけどこれ系のアニメはもっと減ってほしいと

nullpo

nullpo

このテの、一見するとデータに基づいてるように見える文章における「読書量」って、ネット上で読んでる活字量が一切含まれていないからな。動画内の字幕やSNS・ブログの投稿、およびニュース記事へのコメントなどは読書に含まれない。活字ベースだったら読まされてる量(教科書の厚さ)が2倍以上に増えてるんだけど、若者ガーやってる時点でお察しなんだわ。

餠()

餠()

つばさ文庫とかは児童書の方に勘定されてるのかな? ああいう児童向けラノベレーベルは好調でしょ。もうそれでいいんじゃないかな、我々おっさんは滅べってこった

納豆御飯

納豆御飯

転生異世界モノはなろう系が流行る前からちらほらあったけどな。むしろ、架空戦記モノの方が大賑わいだったぞ。ちなみに、その頃のネット界隈は二次創作物の全盛期だった。エヴァとかナデシコとか。

ruku

ruku

総売り上げしか見てないから誰が買ったか分からんデータじゃねぇか。そもそも全盛期とやらも子供が買ってたの?金のない子供が?大半は大人が買っていて、類似品ばかりで飽きただけじゃないの?

暗濡

暗濡

ライトノベル(富士見ファンタジアや角川スニーカー)という物が普及しだした頃から見てきたが現状は円熟を通り越して腐敗気味になって来たと思う。後はコミック化や実写化で食われるだけかと。

めそ

めそ

今となっては、主人公周りの設定が多少違うだけの内容ほぼ同じな量産品ばかりだし、購買欲もわかない…

すとらいき

すとらいき

タイトルが似たりよったり

ぶり_ハマチ

ぶり_ハマチ

今は勇者パーティから追い出された系が多いよね。なんで同じパターンで売れると思ってるの?

ゲスト

ゲスト

普通に劣化だろ。もう何番煎じかすらわからない物で溢れかえってるやん

麦チョコ

麦チョコ

新規ファンを取り込みもせず、既存のファンの望む作品ばかり出版していれば、やがて既存ファン達が結婚などをする年齢になったときに一気に廃れるのは自明だわな。舌の肥えた既存ファンのために作られた作品を、新規は読まない。ジャンルの対象とする年齢層がファンの成長とともに動いちゃうわけだ。

ゲスト

ゲスト

流行なんざそんなもんでしょ

streGa

streGa

長いタイトルばかりで読む気が失せる

ゲスト

ゲスト

長いタイトルに限ってPVが多いけどな、察し

ゲスト

ゲスト

全年齢共通の話で単純に10年前よりエンタメの選択肢が圧倒的に増えてんだよ。それに半分なった言うても、強力タイトルは10年経っても続くんだから、実際は二束三文のテンプレ物や内容の薄い粗製乱造が淘汰されて分母が下がっただけだろ。当時の中学生も10年経てば社会人なんだから、古参が卒業して新規がweb小説とかSNS文化に移行して支持層が入れ替わってるのもあるけどね。

BCTA

BCTA

この10年は仕方ないよ、進撃の巨人と時期かぶって勝てねえって

KID

KID

「なろうと違って」自分で作品を持ち込み出版社と編集のチェックを通してるラノベが売れなくなるのは悲しい。一部には「なろうもラノベも変わんないだろ」って偏見も

はるちか

はるちか

キノさんとかホロとかの頃は見てた気がする。タイトルが長いのが出てきて、あとイージー異世界転生だらけのイメージ。アニメ化するのもそんなん被ってる感

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