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「危ないからダメ」は逆効果…大雨のとき「外の様子を見に行く人」を止めるためにかけるべき2つの言葉

「危ないからダメ」では逆効果…大雨のとき「外の様子を見に行く人」を止めるためにかけるべき2つの言葉

台風や大雨のとき、外の様子を見に行った人が事故に巻き込まれるケースが後を絶たない。なぜこのような危険行動をとる人がいるのか。兵庫県立大学環境人間学部の木村玲欧教授は「好奇心と責任感の2つのパターンに分けられる。いずれにしても、『危険だから見に行かないで』と呼びかけるだけでは逆効果になる」という――。

■毎年のように同じような理由で事故が起きる

2019年10月令和元年東日本台風(台風第19号)が発生しました。中部から関東・東北にかけて猛烈な風雨をもたらし、100人を超える死者・行方不明者が発生しました。

この台風では「川のようすを見に行ってくる」、「田んぼのようすを見に行ってくる」、「経営する施設のようすを見に行ってくる」と、宮城県福島県栃木県神奈川県などで亡くなる人が出てしまいました。またこれ以前も、そして以降も、毎年のように同じような理由で亡くなる人が出続けています。

なぜ、大雨や台風の中、出歩いてしまうのでしょうか。亡くなる人を少しでも減らすためには、何をすればよいのでしょうか。今回は「川のようす」や「田畑のようす」を見に行く人々の心理を知ることで、このような危険な行動に対する危機管理を考えます。

■「好奇心」と「責任感」の2パターン

「外、川、田んぼ、施設のようすを見に行く」理由には、大きく2つのパターンがあります。1つ目は「どのようなことが起こっているのか、どんな被害が発生しているのか純粋に知りたい」という「好奇心パターン、2つ目は「自分の仕事として外出せざるを得ない」「必要があって行く」、「先祖からの土地や財産を守る」という「責任感」パターンです。

もちろん人の行動を変えるのはなかなか難しく、特に「責任感」パターンを減らすのは難しいのですが、まずはどうしてこのような行動をとってしまうのか、その心理を理解することから始めましょう。

■「好奇心」が抑えられない3つのバイアス

人間には「知りたい」という知的欲求があります。大雨や台風で、外がどうなっているのか、川の増水のようすや被害のようすがどうなっているのかを「見てみたい」のです。

もちろん外は危険なので、多くの人は危機感を持って知的欲求を抑えるのですが、中にはあまり危機感を持たない人もいます。それらの人は、3つの「考え方のクセ」にとらわれていることが多いように思われます。心理学では、人々に共通する考え方のクセを「バイアス」と呼んでいます。

1つ目は「正常性バイアス」です。普段とは違うことが起きていたとしても、見た目で大きな違いがなければ「特に変わったことはない」として心を安心させてしまい、考えることを止めてしまうクセです。

窓から見た雨のようすが大したことがない、特に風が強いわけではない、家の中に浸水してくるような気配がなければ、天気予報で大雨になることが分かっていても「まあ大丈夫だろう」と心を平静に保ってしまい、その結果、対応が遅れてしまいます。危険と隣り合わせだったとしても「見た目」が大きく変わらないと、人はなかなか動かないのです。

■考えることを止め、危機感を持てなくなる

2つ目は「楽観主義バイアス」です。過去の経験から「今回もまあ大丈夫だろう」と、楽観的に思って、考えることを止めてしまうクセです。

これまで大きな災害に巻き込まれた経験がない人に限って、「今まで大丈夫だったのだから、今回も大丈夫。めったに起きないし、まさかこの地域に限ってそんなことは起きない」と、根拠なく考えてしまいがちです。もちろん「今まで起きなかったから、今回も起きない」なんて理屈はありません。

3つ目は「同調性バイアス」です。周囲の人たちの言動に、自分の考えを合わせてしまう考え方のクセです。人間は社会的動物ですので、集団の中で協調性を保ち、集団にいることで安心感を得ようとする傾向があります。「家族も近所も災害に対して何もしていないみたいだし、まあ、取りあえず行ってみようか」と思って、考えることを止めてしまうのです。

この他にも、テレビで「行くな」などと禁止されるとますます行きたくなるという「カリギュラ効果」や、大雨・台風に対する不安・恐怖が刺激となってアドレナリンドーパミンが放出さて、感情がゆさぶられて「わくわくする」気持ちとして認識されてしまうという、一種の「吊り橋効果」などもあると言われています。

いずれにせよ、大雨・台風時に「危ないと認識していない」ために行くのであって、単に「危ないからダメ」というだけでは、「いやいや大丈夫だって」と返されてしまい、本人の認識や行動を変えることがなかなかできません。

■「責任感」が判断を狂わせる

もう1つは「責任感」です。自分の仕事として「田んぼや水路」、「施設や資機材」のようすを見に行く人たちです。自分が役割を担っていたり、使命感に駆られたり、不利益を避けたりするために見に行くわけですが、これはかなりやっかいです。

まず、責任感が強い人々は、一般的に、意志が強く、頑固で、完璧主義で、一貫性を持って行動しようとします。また、強い責任感や使命感を持っている時には、ストレスがかかって「ハイ」な状態になります。

さらに、人は、被害や損失が出るという「失う」ことに敏感で、被害や損失を避けたいあまり、合理的ではない選択をしてしまうということがあります。行動経済学に詳しい人は、プロスペクト理論における損失回避性のようなものだと理解してください。

これらの要素が原因となり、冷静さが失われて視野が狭くなります。そして先ほどのバイアスがあわさって、身の安全についての適切な判断ができなくなるのです。

「役割を果たさなければならない」、「今対応しないと被害や損失が拡大して、今後の仕事の死活問題につながる」という「正論」の中で、自分自身だけでなく、周囲の人々も止めづらくなります。衝動的に飛び出してしまったり、「危ないからダメ」と言っても「そんな非常事態だからこそ行くんだ」と家族の引き留めにも耳を貸さなかったりするケースが発生してしまうのです。

■「事前計画」「最新技術と制度」「周囲の引き留め」の合わせ技がいい

好奇心パターン、「責任感」パターンのどちらであっても、命を落とすことは、本人にとっても大打撃ですし、救助・捜索活動をする人たちの仕事を増やし、命の危険にさらします。人の行動を変えることはなかなか難しいですが、危険な行動を減らすための危機管理ヒントとして「事前計画を作る」、「最新技術と制度を導入する」、「本番で周囲が引き留める」の3つを紹介します。

実際に風雨が強くなって、ひとたび「好奇心」や「責任感」を持ってしまうと、それを「無くす」「打ち消す」ことはなかなかできません。ですので、事前計画を作って行動のルールをあらかじめ決めて、ルールによって自分自身の行動を抑制させることが効果的です。

ルールづくりには何段階かあるのですが、まずは自分の体の状態を知る「健康診断」と同じように、自宅や田んぼ、会社などの施設の災害時の危険性を知る「災害診断」をぜひやってみてください。「ハザードマップ」という災害時の危険性を教えてくれる地図を基に確認してください。

ハザードマップは紙で配付されることもありますが、最近はデジタル版も発行されています。国土地理院の「ハザードマップポータルサイト」というサイトでは、お住まいの自治体ハザードマップを検索したり、ウェブブラウザ上でハザードマップの情報を重ねたりすることができます。ぜひ試してみてください。

国土地理院ハザードマップポータルサイト 身のまわりの災害リスクを調べる

災害時の地域は、いつもの見慣れた地域とは異なります。ある地域のワークショップで「災害診断」をした時に、田んぼや、自宅から田んぼに至る道がすべて3m程度の浸水エリアになっていることを確認した参加者が、「まさかこんなところが水に浸かるなんて!」と驚きの声を上げていました。

■「誰が」「何をするのか」を事前に決めておく

また別の参加者は、台風時に工場の確認をする必要があったのですが、工場自体は浸水しない想定だったものの、自宅から工場に至る道が浸水エリアになっていました。そのため、安全に工場に行くことができる別の人を、台風時の工場確認の担当として計画修正していました。

事前計画では、タイムラインという考え方があります。時間経過とともに「誰が」「何をするのか」を事前に計画したものです。地域や組織などで作られています。国土交通省のサイトに「タイムライン」について動画や事例などがわかりやすくまとまっていますので、ぜひ参考にしてみてください。

ある地域では、水害時の水門の管理について、従来よりも早い段階から数段階にわたって水路の確認と水門の開閉などについて対応し、対応時も必ず複数人の利害関係者で行うように計画を修正したところもあります。

国土交通省タイムライン」サイト

会社では、災害時の事業継続計画(BCP)を作成しているところも多いかと思います。まずは地震版だけでなく、水害版があることも確認してください。また水害版ではどのように被害確認をする計画になっているか、命の危険性がないかを確認してください。水害版のBCPについては、一般財団法人国土技術研究センターのものがわかりやすくまとまっています。

※一般財団法人国土技術研究センター「水害対応版BCP」サイト

■大雨の際に見なくてもいいように備える

大雨・台風時に、直接、様子を見に行かないように、最新技術や制度を導入することも検討に値すると思います。補助が出るものもあります。

1つはウェブカメラを活用することです。現在、国土交通省地方自治体は、大きな河川を中心にカメラが設置され、河川の状況をライブで公開しています。ぜひ、関係する河川のライブ映像がどのようなインターネットサイトから見ることができるか、調べておいてください。区市町村のホームページなどからリンクが貼られていることも多いです。

田んぼや農地などの私的な土地であっても、現在では安価にカメラを取り付けて、自宅で監視することもできます。実際に豪雨災害に見舞われた被災地で、こうしたライブ映像を見ることで外出をあきらめることができたという声がありました。

また、手動の水門や用水路の開閉について、監視カメラを付けるとともに、水害時には遠隔操作で自動的に開閉ができる「水門や用水路の自動化」の技術が進んでいます。現在では多くの会社がこの技術を開発していて、金額も少しずつ安くなってきています。大きな水門についてはまだまだ高価ですが、用水路の自動給水栓などは安価になってきました。自治体によっては補助金が出るところもありますので、一度、相談をしてみてもよいかと思います。

さらに、被害が出ることを前提にして、農業保険(収入保険・農業共済)に加入しておくことも重要です。農業保険は、農林水産省による公的保険で、国が保険料の一部を補助します。万一の大災害時にも国の再保険でしっかり補償してくれます。任意加入のために、無保険の農業者も多いのですが、自然災害による農林水産業への被害額は増加傾向にあります。自然災害以外にも様々な事態に備えることができるので検討してみてください。

■「外の様子を見に行く人」を引き留めるための“言葉”

本番になったら「周囲の人の引き留め」が、行動を抑制させる最後の手段になります。

好奇心パターンの人に対しては、「天気予報で今後の風雨がひどくなることがわかっている」、「テレビなどで今すでに非常事態であることがわかる」、「今行くべきことか」、「命よりも大切なことか」、「自分たちは家に留まるのに1人で勝手に行動するのか」と、単に「危ないからダメ」ではなく、正常性バイアス、楽観主義バイアス、同調性バイアスをなるべく解消するように具体的に働きかけることが効果的です。

実際に、同調性バイアスについては、家族やご近所が「避難しよう」と言ってくれると、自分にその気がなくても「周りが言うから」といって避難をする傾向があることが、西日本豪雨の被災者への調査でも分かっています[関東学院大学・大友章司先生の研究(2020年)による]。

「責任感」パターンの人に対しては、まずはいったん冷静になってもらい、判断ができる状態になることが重要です。

そして「命を失う危険性をかけてまでやるべきことか」、「ケガや行方不明になれば救助や捜索が必要になり、人様に迷惑をかける」、「捜索で家族が巻き添えになる危険性がある」、「家族としてとにかく心配だから思いとどまってほしい」などと、自分がやろうとしていることの今後の影響力の大きさを伝えたり、感情に訴えたりすることで何とか踏みとどまってもらえればと願っています。

■常識が通じないほど「自然が変わってしまった」

令和時代、日本は「大災害時代」になることが予想されています。地球温暖化が原因となって、毎年のように激しい大雨・台風が日本を襲ってくるのです。これまでの常識は通用しません。「自然が変わってしまった」のです。ですので、私たち自身の意識や行動も変えていかなければなりません。

台風の被災地に行った時に、「50年に一度の大雨と言われている。ならば、あと50年は大丈夫だろう」という声を聞きました。これは間違いです。50年に一度というのは、確率でいうと2%です。毎年2%の確率でその地域に大きな水害が起きる可能性がある、しかも地球温暖化によってその確率は上がっている可能性があると思うべきです。

令和を生きる私たちにとって、自然災害は「めったに起きないもの」ではありません。人生の中で、必ず何度かは経験する危機です。起きることを前提にして、「今回は! もしかしたら!」と思って事前に対策を取らなければならない危機なのです。

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木村 玲欧(きむら・れお)
兵庫県立大学環境人間学部教授/防災心理学
1975年生まれ。京都大学大学院修了、博士(情報学)。認定心理士、心理調査士、専門社会調査士。専門は防災心理学、防災教育学内閣府内閣官房国土交通省などの委員を歴任しながら、人間や社会の立場から災害・防災研究を行っている。『日本歴史災害事典』の編纂の他、『災害・防災の心理学 教訓を未来につなぐ防災教育の最前線』『グループワークのトリセツ』など著書多数。ゼミホームページ https://kimurareo-lab.com/

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2023年6月2日、大雨の東京を歩く女性 - 写真=EPA/時事通信フォト

(出典 news.nicovideo.jp)

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近隣の農家が水を逃がすためにひとの水門開けるらしいけど?

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なんつー傲慢で農家のことを見下してる馬鹿が描いた駄文。生活かかってるんだから危険があろうが見に行くに決まってんだろ田んぼやられてもノーダメの部外者にとやかく言われる筋合いなんかない

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用水路管理システムは良いもん開発したなと思うけどさ、停電時はどうなんよ?ちゃんと動作してる?その確認は?もしダメだったら農協の保険なんか来年の植付け費用の足しくらいにしか補填できんし、川の泥水流れ込んだら作物全部破棄と田んぼの土総入れ替えやぞ。

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水位センサーと排水ポンプだけでも保険適応でリースしたらいいのに

一般通過ゲスト 一般通過ゲスト

農家にとっては田畑の状態が今後の生活を左右するんだから気になるのはやめられんよ。せめて複数人で行けば良いんじゃない?

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パヨオンがゴミ記事を書くのを止める言葉が知りたい

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気象の激しさは毎年確実に増してるから、5年後10年後には毎年洪水が当たり前になるんちゃうかねえ。日本は火力発電を止めるつもりがないようだし、対策するなら、増税して大規模治水工事でもやるしかないんじゃない?

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好奇心で行く奴は救い用が無い。責任感で行く方は保険か保障で解決出来ないか。

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