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金融庁も注意喚起…退職金の運用の相談、金融機関にするな! 理由を聞いたら顔面蒼白【公認会計士が解説】
定年退職したばかりの60代は、人生で最も多くの貯蓄を持っています。大金を持っている本人は、気が大きくなっているだけでなく、老後資産の拡大を狙って大勝負をしてしまいやすく、また、金融機関はそんなシニアに金融商品購入を勧めるべく必死です。高齢者の投資と資産形成について、公認会計士・税理士の岸田康雄氏がアドバイスします。

退職後の60代は「人生でいちばんお金を持っている」

資産形成を考えている若い世代から相談を受けている、公認会計士のK先生。今日寄せられた相談は、若い夫婦のマネープランではなく、その父親の退職金の運用についてです。

会社を退職した60代は、退職金を受け取った直後でもあり、一生涯で保有する貯蓄額が最も大きい時期となります。そのため、ここぞとばかりにお金を大きく増やそうと画策する人が後を絶ちません。結果、ハイリスクな投資で損失を抱え、貴重な老後資金を失う人も…。

高齢になってから「こんなはずじゃなかった」と嘆かないために、どんな点に注意すべきなのでしょうか。

あなたの退職金、銀行や証券会社に狙われてますよ…!

夫:昨年、うちの父が65歳で会社を退職したんです。かなり退職金をもらったようで、銀行や証券会社の窓口へ行って資産運用の相談をしているようなんですね。ウチの父の場合、どのように運用するのが正解なのでしょうか?

K先生:いままで資産運用の経験が少ない人が、突然大金を持つと、投資で一気に増やそうと意気込んでしまうケースが多いんだ。君のお父様も同じケースかもしれないから、注意が必要だ。まぁ、退職金の運用のことを、銀行や証券会社で相談するのは、赤ずきんちゃんオオカミに人生相談しているようなものだがね…。

金融庁も注意喚起する、 金融機関の「対面セールス」

夫:えっ!? なぜですか?

K先生:金融リテラシーの低い高齢者は、銀行や証券会社の格好のターゲットなんだよ。 とくに銀行は、お客様の預金口座の入出金をすべて把握しているから、退職金みたいな大きな入金があると、すかさず金融商品の提案を行うんだ。

妻:それでも、お客様の利益を考えて金融商品を提案するのではありませんか?

K先生:いや、そんなことはあり得ないね! 銀行や証券会社が勧める金融商品は、お客様に最適な商品ではなく「自分たちが儲かる商品」だ。金融庁は、平成27年度のレポートにおいて、「金融機関においては、短期的な利益を優先させるあまり、顧客の安定的な資産形成に資する業務運営が行われているとは必ずしも言えない状況にある」と指摘していたんだよ。

手数料の高い金融商品を4つ紹介!

夫:具体的に、どんな金融商品が提案されるのでしょうか?

K先生:販売手数料や運用手数料が高い金融商品だね。よくある話としては、主に4種類ある。

アクティブファンド

ファンドラップ

③米ドル建て仕組債

③劣後債

妻:ファンドラップ」って、どんな商品ですか?

K先生:ファンドラップというのは「証券会社に資産運用をお任せするサービス」だね。預けたお金は複数の投資信託に投資されるんだけど、アクティブファンドのような投資信託に投資され、手数料がバンバン抜かれてしまうんだ。つまり銀行や証券会社にとって儲かる商品なんだよ。

手数料の目安「10年で3割」の例も

妻:手数料って、どのくらい高いのでしょうか?

K先生:管理手数料が年間1.5%程度かかるだけでなく、投資をお任せする手数料として年間1.5%程度かかる。つまり預けたお金は毎年3%ずつ減少していくんだ。10年間運用したら確実に3割は消えてしまうね。1,000万円を投資すると10年後には300万円を取られてしまうということだ。

夫:…そんな商品、だれが買うんですか!?

K先生:これを営業担当者が提案するときは「お客様は自分で資産管理する手間が省けます」「プロのコンサルティングが受けられます」などというんだ。手数料の高さは曖昧にして、手数料を上回る利益が出るかのように説明するんだね。

夫:そんな説明されたら、うちの父もファンドラップを買ってしまいそうですね…。私自身は、インターネット証券で取引していますから、営業マンから対面のセールスを受けてファンドラップを買うことなんて、ありえないのですが…。

K先生:そうだね。2020年に投資信託協会が公表したデータによれば、金融機関に勧められて投資信託を買ったという人は全体の40%なんだ。しかし、高齢になるほどその割合が高まっていて、60代で50%、70代で60%なんだ。つまり、若い人は金融機関を頼っていないけれど、高齢者は金融機関を頼って取引しているというのが現状なんだ。

妻:確かにうちの父も、優しくて親切な営業マンに勧められた商品は、なんの疑いもなく買ってしまいそうです…。

退職金を元手に、個別株式や先物取引を行うのはNG!

夫:ファンドラップ以外に危ない商品はありますか?

K先生:対面営業中心の証券会社で多いのが、個別株式の「回転売買」だね。

夫:売買が、回転…するのですか?

K先生:回転売買というのは、個別株式を売ったり買ったり、売買が繰り返されて、売買手数料をドッサリ取られてしまうことだね。高齢者は、どの株式を買えばいいかわからないので、若い営業マンを信頼し、いわれるがままに売買してしまうんだ。

夫:うちの父も放っておくと、いいカモになりそうですね…(汗)。

K先生:あと、数年前に問題になったのが、銀行が熱心に販売していた「毎月分配型の投資信託」だね。「毎月分配金が出るので、お小遣い代わりにも使える」といわれて買うんだけれど、利益が出たからお金が分配されるのではなく、元本の一部が取り崩されてお金が分配されるというもの。もちろん、解約すると元本が目減りすることになるんだ。

妻:えーっ! そんな商品があったんですか!?

K先生:あと、「バイナリーオプション」や「商品先物取引」も危ないね。これは、〈レバレッジ〉といって、100万円を元手に1000万円規模の取引などが可能になるんだ。利益が出ると大儲けできるけど、損失が出るとボロ負けになるんだよ。

夫:ほとんどギャンブルですね…。

K先生:こういった複雑な金融商品は、頭がいい人がターゲットになりやすいので、注意が必要なんだ。例えば、「原油の先物取引」。外国の戦争で石油価格が上がれば「いま原油価格が上がっていますね。原油先物に投資すれば、利益が出る可能性が高いですよ。ニュースで報道されていましたよね!」と提案するんだ。

夫:へぇー!

K先生:こういう提案は、毎日情報収集に励んでいる知的エリートプライドを刺激するようで、ついつい取引に手を出してしまうんだね。しかし、価格の上昇がニュースになる頃にはすでに価格は最高値に達していて、買った直後に価格の下落が始まるケースが多いんだよ。

高齢者は低リスク商品で資産運用がおすすめ

夫:どれも怖いですね! 結局、高齢者は、退職金をどのように運用すればよいのでしょうか?

K先生:投資する金額は、リスク許容度に応じて決めなければいけない。株式へ投資するとすれば、短期的には3割から4割の損失が出ることは当然に想定されるから、それに耐えられるかどうかが問題だね。ほとんどの高齢者にとって、3割から4割の損失は致命傷になるだろう。そうだとすれば、株式への投資を控えて、国債や銀行預金で運用するほうがいいね。

夫:なるほど、高齢者は、なるべくリスクの低い金融商品で運用すべきだということですね。父にしっかり伝えておきます!

岸田 康雄 国際公認投資アナリスト/一級ファイナンシャルプランニング技能士/公認会計士/税理士/中小企業診断士

(出典 news.nicovideo.jp)

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