アメリカとカナダの国境にたたずむ五大湖の1つ、スペリオル湖で、120年前に沈んだ希少な「ホエールバック船」が発見されたそうだ。
ホエールバック船は、五大湖の嵐に対処するために特別に設計されまたが、それでも沈んでしまったようだ。
五大湖難破船歴史協会(GLSHS)の調査によると、貨物を輸送中に嵐に見舞われ1902年に沈没した「バージ129号(Barge 129)」という船名の貨物船であるそうだ。
今回の水中ドローンによる湖底調査では、スペリオール湖で合計9隻の難破船が発見。そのうちの1隻であるホエールバック船は、世界で44隻しか建造されていない希少な船だ。
120-year-old shipwreck discovered in Lake Superior
ホエールバック船は、1880年にアレキサンダー・マクドゥーガル船長が設計した貨物船だ。
スコットランドで生まれたマクドゥーガル船長は、10歳の時にカナダ、オンタリオ州に移り住み、17歳で貨物船に乗ると、五大湖の港から港へと荷物を運ぶようになった。
湖といっても、五大湖は荒々しい嵐で知られるところだ。そこでマクドゥーガル船長は、「できるだけ多く貨物を運べ、かつ最悪の嵐にも耐えられる船」を設計することにした。
[もっと知りたい!→]オランダ海域で16世紀の難破船が偶然発見される。海洋船舶の発見としては最古のものである可能性
そして完成したのが、しばしばブタの鼻に喩えられる尖った船首が特徴的な、葉巻とバナナの中間のような奇妙な船だった。
ホエールバック、すなわち「クジラの背中」という不思議な名前は、貨物を満載すると船体が水中に沈み込み、まるでクジラのように見えることにちなむものだ。
ドックに停泊するバージ129号 / image credit:Great Lakes Shipwreck Historical Society
120年前の嵐で沈没
せっかく作られた特別な船だったが、スペリオル湖の最悪の嵐にはホエールバックでも太刀打ちできなかった。
44隻が建造されたホエールバック船の1つ「バージ(荷船)129号」は、運命の1902年10月13日、鉄鉱石を積み込み、大型蒸気船「マウナロア号」に牽引されながら大西洋に向かっていた。
だが海が荒れ始め、ついには引き綱が切れてしまった。
マウナロア号はどうにか綱をつなぎ直そうとしたが、荒れた湖では至難の業で、2隻は衝突してしまう。
[もっと知りたい!→]新種の生物に秘密基地、難破船にピラミッドなど、世界の海底に隠された10のミステリー
衝突は激しく、GLSHSの記録によれば、マウナロア号左舷の錨がバージ129号の右舷に突き刺さったという。
幸いにもバージ129号の船員は、200mの湖底に沈む船から間一髪で脱出し、マウナロア号に救出されている。
湖底で発見された船首のキャビン上部と大綱/Image credit: Great Lakes Shipwreck Historical Society
船首には3つの輪があり、「ブタの鼻」を思わせる/Image Credit: Great Lakes Shipwreck Historical Society
湖底調査で120年ぶりに発見
それ以来、バージ129号は、五大湖で暴風雨の犠牲になった何千もの船とともに、そのまま湖底で眠り続けた。
次に人目に触れたのは、GLSHSによるスペリオル湖の湖底調査が行われた、2021年のことだ。
GLSHSの事務局長ブルース・リン氏は、「ドローンを向かわせると、引き綱の一部がついたままの特徴的な船首をはっきりと確認できました」「あれは信じられない瞬間でした!」と語る。
120年ぶりに発見された巻き上げ機と大綱 / Image credit: Great Lakes Shipwreck Historical Society
船は、嵐と水によってひどい状態で、船底は完全に破壊されていたという。大きな破片が少なくとも4、5個転がっており、小さなものなら無数に散乱していた。
GLSHSによれば、それでも船の残骸は歴史の重要な一部であり、近いうちに「五大湖難破船博物館(Great Lakes Shipwreck Museum)」に回収したいとのことだ。
「私たちの主な仕事は、これまでに見つかったさまざまな難破船の物語を伝え、その歴史を守り続けることです」と、リン氏は語っている。
「ここ五大湖でも、それほど有名な難破船ではありません」「ですが、このユニークな船を発見したことで、その歴史と物語を伝えられるようになりました」
References:Great Lakes Shipwreck Historical Society discovers Barge 129, 120 years after accident - Great Lakes Shipwreck Historical Society / written by hiroching / edited by / parumo
<このニュースへのネットの反応>
沈没船発見の話はやっぱワクワクする
44隻しかって...頭米軍かよ
44隻作られたからには、通常時は問題なく運用できたのだろう。129号なのは貨物船全体での番号。牽引前提という固有の構造なのか?
何だか、某紺碧の艦隊に出てきた『木造潜輸』みたいだw …しかし、1世紀以上前によくこんな物考えついて建造したなぁ