赤ちゃん連れの移動は、親にとって緊張するタイミングだ。なにせ「赤ちゃん」だから言っても聞いてくれないし、それぞれ個性もあるから「こうすれば大丈夫という正解」があるわけでもない。
そうなると結局、周囲の人が「大人の対応」をするしかないのだが……残念ながら、不快な態度をむき出しにしてくる人もいるようだ。
先日、0歳の娘を連れて、新幹線を利用した女性のこんなツイートが話題を呼んでいた。
<ショックだった話。小さな娘を抱えて新幹線に座った時、隣の席の人に、「はぁーーー最悪」「ハズレだ」と小声だけど聞こえるように言われ、おもむろにヘッドホンを付けられた。気持ちは分からんでもないが、もう少し寛容な世界になってほしいなぁと思ってやまない。>
ツイートしたのは、株式会社ニットで広報を担当する小澤美佳さん(@mica823)。いったい何があったのか、詳しく話を聞いてみた。(文:寒野もどり)
「とにかく娘が騒がないようにしないと!」緊張しっぱなしの1時間半
ーーまず、「最悪。ハズレだ」と言われた当時の状況をおしえてください。小澤さんは娘さんとお2人で乗車されたのでしょうか?
「いえ、実は夫と義理の父母も一緒に乗っていました。里帰りから数ヶ月ぶりに東京の家へ帰るというタイミングで、私の実家まで迎えに来てくれた夫と義理の父母と一緒に利用したんです。3列の席で、窓際に座っていたのがその乗客の方、真ん中が私、通路側が、当時1ヶ月半の娘を抱っこしている夫でした」
「隣の方は、20~30代くらいの女性だったのですが、私たちが席についたとたん『最悪……。ハズレだ』と呟いて、うんざりした様子でヘッドホンを耳にあてていました。その時点では娘は大人しくしていましたし、隣にいる私ではなく通路側の夫が娘を抱っこしていましたから、そんなことを言われるなんてと驚きました」
ーー相手の方は女性だったんですね。ツイートを読んで、てっきり年配の男性に言われたのかと思ってしまっていました。
「ツイートではとくに性別や年齢には言及しませんでしたが、私のあのツイートだけを読んだ方の多くが『赤ちゃん連れの母親が、年配の男性に例の言葉を言われた』と勘違いされていたみたいです。認知バイアスというやつですかね……」
ーー乗車してすぐにそう言われたのでは、到着するまで気まずかったのではと思いますが……。
「その言葉を聴いた瞬間から、夫も私も緊張してしまいましたね。乗車時間は1時間半ほどでしたが、『とにかく娘が騒がないようにしないと』とずっとピリピリしていました。乗車中3回ほど娘が泣きそうになることがあったのですが、ちょっとグズりはじめるとすかさず夫が席を立ち、娘をデッキに連れて行ってあやしてくれたので、なんとかなりました」
ーー先手を取ってそんな嫌味を言われたら、親としてはプレッシャーに感じますよね。
「娘を連れて公共交通機関を利用するのは出産してから初めてのことだったので、もともと不安はあったんです。なので、娘が乗車中は眠ってくれるようにあらかじめミルクを飲ませておいたり、新幹線を降りたあとは自宅までタクシーを利用するよう手配したりしていました。新幹線を降りてタクシーに乗り込んだときには、なんだかどっと疲れていましたね」
あまり知られていない子連れ向けのサービスも
ーー当時の状況について呟いたツイートは瞬く間に拡散され、3.9万件もの「いいね!」を集めていましたが、送られてきたリプライの中で、印象に残ったものなどはありますか?
「『子連れで電車やバスに乗るときにはいつも緊張する』『子連れで乗車したときに心ない言葉を受けたことがある』などの共感の声がほとんどでしたが、中には『世の中、子どもが苦手な人もいる』『聴覚過敏などで、身体的に赤ちゃんの泣き声がつらい人だったのかも』などのご意見もいただきました」
ーー特殊に子どもが苦手な人だと、長時間一緒はつらいのかもしれないですね。
「私も、昔はあまり子どもが得意なほうではありませんでしたし、苦手な方の気持ちはわからなくもないのですが、あえて相手に聞こえるように発言する必要はないんじゃないかと思ってしまいますね……」
ーーそうですね。他にはどんな声がありましたか?
「以前新幹線の車内でパーサー(ワゴン販売や車内巡回などのサービスを担当するスタッフ)として働かれていた方からもリプライをもらいました。『新幹線の車内には、授乳やおむつ替えなどもできる”多目的室”と呼ばれる個室が設けられていますので、困ったときには利用してください』という内容でした」
「ほかにも、東海道新幹線では大型連休などの期間限定で”お子さま連れ専用車両”が設けられていることもあるらしく、あまり知られていないですが、子連れ向けのサービスもあるんだなあと知る機会にもなりました」
ーー新幹線には、いろいろなサービスがあるんですね。今回の出来事のほかに、子連れでの外出で嫌な思いをされたことはありますか?
「まだ娘が小さいので、その後遠出をしたことはないのですが、日常生活ではほとんど嫌な思いをすることはないです。実際には、エレベーターを譲ってもらえたり、買い物中優しく声をかけてもらったり、『こんなに他人って優しいんだ』と感じる出来事のほうが多いんですよ」
「ただ、今回の経験から、『1人で娘を連れて電車に乗るのはちょっと怖いな』と思いますし、買い物中も『ベビーカーが邪魔になってないかな』とほかの人の目を気にしてしまいます。私のツイートが子育て中の多くの方に共感されたことからも、同じように外出中に緊張してしまうという方は多いと思うんです。もっと小さな子ども連れの家族に対して温かい世の中になってくれたら嬉しいなと感じます」
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小澤さんによると、ほとんどのケースで周囲は子連れの家族夫婦に対して「大人の対応」をしてくれているようだ。新幹線の隣の人はたまたま、そういう人だったのかもしれない。
そもそも新幹線のように、みんなでシェアして使う公共交通機関は、絶対に誰にも邪魔されずに静かに移動したいというような人には不向きな乗り物かもしれないだ。もちろん心の中で同乗者に対して何を思っても自由だけど、実際に口に出して言っちゃうと、お互いがギクシャクしてかえってつらい時間になってしまうかも……。
<このニュースへのネットの反応>
実際にうるさかったら仕方ないけど座ってすぐにこんな事口に出すのはさすがにデリカシー無さすぎだろ。
「運が悪かったですねえ、ご愁傷様(ニヤニヤ)」と言い返す…まではいかなくても心の中で思う程度の余裕を持ちたいね。別に赤ちゃん連れで新幹線に乗ってはいけないなんてルールはないわけだし。
これ別に直接言われたわけでもないし実被害全くないんよな。なんなら横でガチャなり競馬なりしてて「最悪・・・ハズレだ」と呟いてるのを自分のことを勘違いしてるまである。