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99.99%…世界一の火葬大国・日本で「土葬」がこれから増えなければいけない納得の理由
日本の火葬率は世界一高い99.99%だが、土葬墓地を新設する動きがある。ジャーナリストで僧侶の鵜飼秀徳さんは「ムスリム(イスラム教徒)の埋葬は土葬です。日本には今、外国人ムスリムが16万人以上、日本人ムスリムが4万人以上。技能実習生の受け入れも増え、ムスリム人口は今後、年10%増との試算もありますが、土葬墓地は数が少なく新設計画の地域では地元住民から反対の声が上がっています」という――。

■世界一の火葬大国・日本で今「土葬」が話題になる理由

九州のある町で、ムスリム(イスラム教徒)の土葬墓地設置を巡って混乱が続いている。

在日ムスリムにとって、土葬墓の整備は切実な問題だ。だが、地元住民から「地下水が汚染される」「農作物への風評被害が起きる」などと反発の声が上がり、計画は暗礁に乗り上げた。土葬墓整備について、国や行政の腰は重い。そんななかでムスリムの「救世主」になっているのが、宗旨の異なる仏教寺院やキリスト教教会だ。

土葬墓地の候補に挙がっているのは大分県日出(ひじ)町。国東半島の南端部に位置し、別府市にも隣接する風光明媚な立地である。土葬墓地整備の話が持ち上がったのが2018年宗教法人別府ムスリム協会(カーン・ムハマド・タヒル・アバス代表、立命館アジア太平洋大学教授)が、大分県日出町の山中に土葬墓用地約8000平方メートルを取得したことに始まる。

聖典コーランでは「死後の復活」が約束されている。復活のためには肉体が必要となる。そのため、ムスリムの埋葬は、絶対的に土葬なのだ。

キリスト教も同様に、死後の復活を認めており、原則的には土葬でなければならない。だが、近年はプロテスタントを中心に火葬を容認する傾向にある。欧米の教会ではコロナ禍によって、衛生に対する意識が高まり、火葬するキリスト教信者の割合が増えてきている。

たいして、日本人の多くが信仰する仏教の葬送は、火葬だ。これは、古代インドにおける釈迦がその死後、火葬されたことを準拠にしている。現在、日本の火葬率は世界一高い99.99%。そこには宗教上の理由がある。

一方で日本人の、もうひとつの宗旨である神道の葬送法は土葬だ。江戸時代までの日本は神仏混淆状態で葬送も火葬と土葬が混在していたが、明治維新時の神仏分離令によって完全土葬に切り替わった。例えば、都立青山霊園や雑司ヶ谷霊園、谷中霊園などは神葬祭の土葬墓地として整備された経緯がある。

しかし、土葬用地の不足や衛生上の問題が生じ、すぐに火葬が容認された。そして、各地に火葬場が建立された結果、日本は火葬大国になったのだ。そうした流れの中で土葬はどんどん消滅していった。現在、伝統的な土葬習俗が残るのは滋賀や奈良、京都南部、三重など関西を中心にごくわずか(年間100体から200体ほど)。特殊な例として、死胎(水子)を土葬する地域がある。

そのほかの土葬は、本稿の主題である「日本在住のムスリムが亡くなった場合」である。たとえば日本人外国人のムスリムが国際結婚をし、日本で暮らして亡くなるケース。また、外国人技能実習生や、留学生が国内で病気や事故などで亡くなる場合。さらに日本で死産したケースなど、さまざまである。

■国内のイスラム教徒は日本人を含め20万人以上

現在、日本に在住する外国人ムスリムは16万人以上、日本人ムスリムが4万人以上といわれている。国別ではインドネシアバングラデシュマレーシアイラントルコエジプトなどさまざまだ。日本におけるムスリム人口は今後、年に10%ほどの割合で増えていくとの試算もある。

大分県でもムスリムが増加傾向にある。技能実習生の受け入れ先は農業、漁業関連のほか、自動車アパレルの工場など。ムスリムは貴重な労働力になっており、地域経済を支えている。

また大分県には、学生・教員ともに半数が外国籍という立命館アジア太平洋大学(APU)がある。大学関係だけでも数百人のムスリムがいるといわれる。

ところが、死後の受け皿がまったく整っていない。現在、わが国におけるムスリムが埋葬できる土葬墓地は北海道茨城県埼玉県山梨県など東日本に7カ所、西日本では京都府和歌山県兵庫県広島県に3カ所あるだけだ。九州にはひとつもない。

そのため、九州や四国在住のムスリムが亡くなった場合は、何百キロも離れた埋葬地(あるいは本国)へ遺体を運搬する必要がでてくる。その費用は数百万円単位になり、その後の墓参にかかる旅費などもバカにならない。墓の問題を抱える日本で、ムスリムは安心して死ねないのだ。

そんな状況に救いの手を差し伸べたのが、カトリック別府教会だった。

地元ムスリムに対し、好意で土葬墓地を提供してきた。先述のようにキリスト教、とりわけカトリックは原則的には土葬である。そこで、別府教会が所有する神父用の土葬墓地や、大分トラピスト修道院の土葬墓の一画を提供した。しかし、その区画数はわずか。あくまでも急場しのぎであり、すぐに埋まってしまうことが予想された。

そこで、別府ムスリム協会はムスリム専用の土葬用地の整備を決意。日出町の民有地を購入したのが2018年のことだった。そこでは100区画ほどの整備を予定していた。

同時に、住民説明会も繰り返し開かれた。ちなみに土葬は墓地埋葬法では禁止していない。地元の条例にも適合しているため、町長の許可があれば土葬墓地設置が可能になる。

しかし、地元住民らが反発した。

町長や町議会にたいして土葬反対の陳情書を提出。反対の理由は①飲料水を湧水で賄っているので、水質汚染が心配②米、肉、野菜、卵など地元農作物への風評被害につながる③土葬墓の少ない西日本全域から土葬を求めて多くのムスリムがやってくることになり、土葬墓がどんどん増設されていくのではないか――などだった。

それにたいして、ムスリム協会側は反論した。水質汚染に関しては、土葬予定地から水源地まで2kmも離れている。また、ほかの地域の土葬墓周辺では水質の問題が起きた事例はない。風評被害についても、土葬予定地の隣接地にはトラピスト修道院の土葬墓があって、これまで風評被害は出たことがない。土葬開設後の埋葬者も年間2~3人程度と見込んでいる――などと主張した。

日出町議会は住民の反対の陳情書にたいし、賛成多数で採択。そこで、折衷案として土葬候補地を別の場所の町有地に移した。住民の事前協議も終え、いよいよ正式に申請すれば町が許可を出し、土葬墓地整備に取り掛かれるとみられていた。

しかし、今度は新候補地に隣接する杵築市の住民が怒り出した。「寝耳に水」として、反対の陳述書を市に提出する。そして議会が採択し、事態は完全に膠着状態になった。候補地のたらい回しの様相を呈してきた。

■外国人労働者の「ゆりかご・墓場」の整備は行政の責任

本来、信仰に基づく墓地の整備は、技能実習生らを受け入れている地域や行政の責任だ。現状では、ムスリムの人権や、信教の自由が侵害されている状態だ。大分だけではない。日本は将来的には外国人労働者に頼らざるを得ない状況になる。「ゆりかごから墓場まで」整備して迎えることは、人道上当然だと思う。

そんな中、ムスリム墓地の整備に理解を示し、奮闘しているのが曹洞宗の善隆寺の住職、自覚大道さんだ。自覚さんは曹洞宗の国際的ボランティア団体(シャンティ国際ボランティア会)の元職員で、ムスリムと一緒に活動した経験をもつ理解者だ。「多文化共生」を提唱し、自坊でイスラム講座を開いたこともあるほどだ。

「ムスリムは善良な人ばかり。仏教界を含め、多くの日本人に彼らのことを知ってもらいたいと思いました。しかし、特に地方都市のムラ社会の中では、なかなか理解が深まらないのが現状です」(自覚さん)

自覚さんは2021年6月、別府ムスリム協会のアバス代表や大分トラピスト修道院の院長らと厚生労働省を訪れて、信仰に基づいた埋葬が可能な「多文化共生公営墓地」の設置を求めた陳情書を提出する。土葬墓地を各都道府県に設置したり、既存の公営墓地内に土葬エリアを設けたりするなどの措置を求めた。

大分県だけではなく、日本各地では土葬にたいするアレルギーは強い。水質汚染や風評被害の心配が解消されたとしても、土葬という生々しい埋葬法が、火葬大国の日本では心理的に受け入れ難いものになっているのだ。火葬場の新設が困難であるのと似ている。

自覚さんだけではない。各地のムスリムの土葬墓地の整備を主導しているのが仏教寺院である。山梨県甲州市塩山にある「イスラム霊園」は曹洞宗の文殊院という寺院境内にある。先代住職がムスリムに理解があり、半世紀前にムスリム専用墓地を整備した。

また、今年に入って土葬のエリアを設けたのが、京都市南山城村の高麗寺だ。高麗寺は山間部に5万坪の敷地を有する禅宗寺院だ。その一角に土葬墓地がある。ムスリム以外にもキリスト教徒や儒教など、土葬率の高い宗教も受け入れている。同一区画に同一宗教の人のみを埋葬している。

奈良県三重県にも近いこの地域の埋葬法といえば、15年ほど前までは土葬がほぼすべてだった。そのため土葬墓地整備に関しても、地域の理解が得やすかったという。土葬墓の設置を巡って紆余曲折がある中、宗教を超えてキリスト教、仏教が連携しムスリムの人を助けようとする精神に、救われた気がした。

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鵜飼 秀徳(うかい・ひでのり)
浄土宗僧侶/ジャーナリスト
1974年生まれ。成城大学卒業。新聞記者、経済誌記者などを経て独立。「現代社会と宗教」をテーマに取材、発信を続ける。著書に『寺院消滅』(日経BP)、『仏教抹殺』(文春新書)近著に『仏教の大東亜戦争』(文春新書)、『お寺の日本地図 名刹古刹でめぐる47都道府県』(文春新書)。浄土宗正覚寺住職、大正大学招聘教授、佛教大学東京農業大学非常勤講師、(一社)良いお寺研究会代表理事、(公財)全日本仏教会広報委員など。

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日出町のムスリム土葬墓地予定地 - 写真提供=善隆寺

(出典 news.nicovideo.jp)

<このニュースへのネットの反応>

「郷に入っては郷に従え」

別に人間埋めるまでも無く、日常的に山野で野生動物が生き死にしてるんで、尤もらしい理屈程いらん心配な気がするんですが  疫病の心配なら、疫病が発生しないような埋葬法(薬剤処理とか土壌隔離)はあるでしょうし、こういうのってビジネスチャンスでもあると思うんですよ

火葬ですら墓地の増加問題になってるのに土葬に逆戻りしたら土地を所有する富裕層でないと親族を弔えなくなるぞ・・・。

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