ラムネの材料は?硬いのと柔らかいのは何が違う?「クッピーラムネ」を作る老舗製菓会社に、ラムネの秘密を聞いてみた! | ニコニコニュース
口に入れるとほろりととろけ、舌の上に爽やかな酸味が広がるーー子供の頃、そんなラムネの味の虜になった人も多いだろう。
【写真】名付けのきっかけとなった、エンゼルフィッシュが描かれた責任表
今も昔も駄菓子の定番として愛されるラムネだが、そもそもラムネについて詳しく知っている人は少ないのではないだろうか。「原材料は?」「名前の由来は?」「飲み物のラムネと名前が同じなのはなぜ?」など、考えだすとラムネの謎は深まるばかり。
そんなラムネの謎を解き明かすべく、「クッピーラムネ」を製造する老舗製菓会社「カクダイ製菓」(愛知県名古屋市)を取材。意外と知らないラムネの秘密や、クッピーラムネの誕生秘話などを、経営管理室室長の藤井幸博さんに教えていただいた。
【藤井さん】1853年に、ペリーが浦賀に来航した際に持ち込んだ「レモネード」が起源だと言われています。当時、ペリーが飲んでいたのはレモン水のようなものだったと考えられますが、その「レモネード」がなまって「ラムネ」となり、飲み物のラムネが生まれました。
その後、日本でも飲み物のラムネが売られ始めますが、瓶に入ったラムネはとても高価なものでした。そこで、子供もラムネを楽しめるようにと駄菓子のラムネが生まれたのです。
—— ラムネの材料と作り方を教えてください。
【藤井さん】クッピーラムネは、ばれいしょでん粉、砂糖、コーンスターチの3つが主原料です。それに香料やクエン酸などの酸味料、天然着色料などを加えています。他社では砂糖の代わりにブドウ糖を使っていることもあります。
作り方は、まず最初にばれいしょでん粉を練ります。色をつける場合は、ここで天然着色料も加えます。次にコーンスターチと砂糖、酸味料を加え、さらに練っていきます。その後、成形機に入れて、ラムネの形を作ります。最後に乾燥機に入れ、70度で25分乾かして固めたら出来上がりです。
最後の乾燥の温度や時間はメーカーによって多少違いますが、ラムネは水分を含んでいるとカビが生えてしまうので、しっかりと乾かすことが重要です。水分をほぼ含んでいないラムネは日持ちするため、クッピーラムネの賞味期限は製造後330日となっています。
—— すぐ溶ける柔らかいラムネと硬いラムネがありますが、何が違うのでしょうか?
【藤井さん】すぐ溶けるラムネは「湿式ラムネ」、硬いラムネは「乾式ラムネ」といい、製法が違います。弊社が作っている「クッピーラムネ」などは湿式ラムネで、上記のような作り方をしています。一方、乾式ラムネは最後に乾燥させるのではなく、圧縮して固めています。タブレット菓子と呼ばれるものはこの製法で作られています。
—— 1919年に創業しているカクダイ製菓ですが、どのような経緯でラムネを作るようになったのでしょうか?
【藤井さん】創業当時は「増進堂」という名前で、半生菓子を作る個人商店でした。その後、「大橋商店」と屋号を変え、アメや羊羹などを作っていました。
ラムネを作り始めたのは1950年頃。2代目社長がラムネを作っていた会社で働いていたことがきっかけで、弊社でもラムネを作るようになりました。戦後の子供が多い時代ということもあり、子供向けに何か作れないかという思いもあったのでしょう。その後、ラムネをメインに製造し始めたのにあわせ、社名を「カクダイ製菓」と変更しました。
—— 駄菓子としてお馴染みのクッピーラムネはどのようにして生まれたのでしょうか?
【藤井さん】もともとは「固形ラムネ」「ビンズラムネ」という商品名で、駄菓子屋さんでは単品で販売されるのではなく、“くじ”のはずれ商品という扱いでした。その頃、ラムネをつめる箱の中に「責任表」という紙を入れて出荷していたのですが、その紙に描かれていたのが熱帯魚のエンゼルフィッシュの絵。それを駄菓子屋さんの人がグッピーだと勘違いしたようで、「グッピーのラムネ」と呼ばれるようになりました。
新商品を発売するにあたり、「グッピーラムネ」の商品名が採用されましたが、濁点がついていると呼びにくいという理由で「クッピーラムネ」に変更されます。そして1963年に、弊社の看板商品となるクッピーラムネが発売されました。
—— クッピーラムネといえばウサギとリスのキャラクターが印象的です。このキャラクターはどのように誕生したのでしょうか?
【藤井さん】クッピーラムネを発売する際、2代目社長が「キャラクターがいた方が親しみやすいだろう」と考え、キャラクターを作ることになりました。はじめは某ネズミのキャラクターに似た絵を載せて売っていたのですが、クレームが来てしまいまして……。
そこで、どんなキャラクターにするか改めて考えていたときに、「こりすのぽっこちゃん」という絵本を見つけました。素敵な絵だったので、さっそく作者の太田じろうさんに依頼をしたところ、水彩で描かれたウサギとリスの絵が届いたんです。とても流暢なタッチで描かれた絵だったようで、当時の技術ではそのまま印刷することが難しく、少し手直しされて今のウサギとリスのキャラクターが誕生しました。
ちなみに、このウサギとリスには名前がありません。2012年に「クッピーとラム」という絵本を作る際に「名前がないと困る」ということで、暫定的にウサギを男の子の「クッピーちゃん」、リスを女の子の「ラムちゃん」としましたが、正式な名前がつく予定は今のところないですね(笑)。
—— 名前がないウサギとリスのキャラクターですが、さまざまなグッズが発売されたり、コラボ商品になったりと引っ張りだこなイメージです。これまでにどんな商品を発売されたのでしょうか?
【藤井さん】かなり昔から商品化されているので、数えきれないくらいたくさんの商品になっています。Tシャツや靴下といった衣服のほか、キーホルダーやポーチ、ハンドクリーム、スマホケースなど雑貨も多いです。スケートボードを販売したこともありました。
コラボ商品の場合は、先方から提案されることがほとんどです。最近では、中埜酒造さんとコラボした「クッピーラムネチューハイ」や、みかわ大国堂さんとコラボした「クッピーわらび餅」などがあります。キャラクター商品は、子供はもちろん、「懐かしくてかわいい」と買ってくださる大人も多いですね。
■もともとは東名阪で売られていたクッピーラムネ。今では海外にも!
—— 東海エリアで生まれたクッピーラムネですが、全国ではどのあたりまで流通しているのでしょうか?
【藤井さん】もともとは東名阪を中心に販売していました。営業担当が数人しかいなかったので、北海道や東北、九州など遠い地域は営業に行けなかったんです。また、北海道や東北などの寒い地域はあまり駄菓子のラムネに馴染みがないようで、売れないと言われていました。
最近は、クッピーラムネを扱っている100円ショップやスーパーマーケットの全国出店に伴い、さまざまな地域で買えるようになりました。100円ショップの海外店舗でも売られているようです。
—— クッピーラムネのほかに特徴的な商品はありますか?
【藤井さん】クッピーラムネのシリーズではありますが、無着色、無香料でオレンジといちごの果汁を使用した「1才ごろからのクッピーラムネ」があります。ほかにも、ハロウィンやクリスマスなどの時期には、期間限定パッケージのクッピーラムネもあるので、ぜひチェックしてみてください。
——ありがとうございました!
名古屋市に数多くある駄菓子メーカーのうちの1つであるカクダイ製菓。クッピーラムネとそのキャラクターは、これからもたくさんの子供たちを魅了していくのだろう。