就寝時「冷房の切タイマー」は何時間が正解? 家電のプロが教える「エアコンの電気代」節約術 | ニコニコニュース
2023年の夏は、7月下旬から8月初旬にかけて高気圧が張り出し、西日本や沖縄が猛暑となると天気予報で発表がありました。
かたや世界情勢の影響で燃料が高騰しています。熱中症予防のためにエアコンを使いたいところですが「寝る時ぐらいは消して電気代も節約したい」「ペットがいるのでエアコンをつけっぱなしにしたいが、電気代が心配で設定温度を1℃下げるのもためらわれる」とお悩みの方も多いでしょう。
ここでは誰にでもできるエアコンの電気代節約術をご紹介します。
エアコンは「つけっぱなし」が経済的?
結論からいうと、「人センサー」がついている最新タイプのエアコンは「風量」「風向」「節約」「気流」など、「自動」という選択肢があればかたっぱしから「自動」にするのがベストです。リモコンを操作するのは、明らかに遠出をするときと、寝るときだけ。あとはエアコンをつけっぱなしにしておけば、部屋に人がいなくなると30分程で送風運転に切り替わり、人が戻ってこなければ自動的に電源を切ってくれます。
エアコンの操作をするのは設定温度のみ。あとはエアコンに任せておけば設定温度になるまでは強風で急速に部屋全体を涼しくし、設定温度に近づくと静かに送風して室温を一定にしてくれます。エアコンは一番合理的でコスパのいい風量と風向を自動で切り替えるので、手動であれこれ操作するのはオススメできません。
ただしペットがいる場合は話が変わります。エアコンのセンサーは人のみを見分けるので、暑さに弱いペットのために一日中運転させたい場合は、「節約」や「エコ」といった自動で電源を切るメニューはOFFにしてください。
人がいなくなっても運転するようになっているかを確認するには、ペットだけを残して45分ほど部屋から離れてください。たいていのエアコンは30分で冷房から送風、もしくは電源をOFFにするので、45分後に入室してエアコンが運転していることを確認します。
一方、寝室や子供部屋などに入れている6畳向け以下の安いエアコンには、自動節約機能が搭載されていない製品が大多数です。ただ「風向」「風量」は「自動」モード(「スウィング」モードではない)にすることをオススメします。
ここ10年以内に購入したエアコンなら、どんなに安い機種でも設定温度になるまでは、風量と風向を自動で切り替え、合理的でコスパのいい運転をしてくれます。しかし安い機種は人センサーを持たないものが多いため、部屋を離れる時間によって、つけっぱなしにしたり、電源を消したりするといいでしょう。電源を切る目安は30分です。
・近所のコンビニへ買い物、洗濯物の取り込みなど、不在時間が30分以内
→つけっぱなし
・外食、お出かけなど、不在時間が30分以上
→電源OFF
「冷房」は冷えすぎる…「除湿機能」の上手な使い方は?
筆者が受けるエアコンに関する質問の中で1位のお悩みがコレ。とくに女性からこの質問をよく受けます。
ご存じの通り除湿機能は、室温はそのままに、湿度だけを下げる機能です。目標湿度を設定できるエアコンもあれば、だいたい50~60%固定という機種もあります。また東日本大震災以前は、室温を維持する「再熱除湿」という方式が主流でしたが、冷房に比べると電気代は1.5倍程高くつきました。
しかし震災を境に省エネ意識が高まり、「弱冷房除湿」が増えました。これは、電気代が安いのですが、数時間使うと室温が徐々に下がる方式です。一日中「除湿」を使うと部屋が寒くなる、吹き出し口に手をかざすと冷たいというエアコンは「弱冷房除湿」です。
除湿が効果的に使えるのは気温が28℃まで。それは湿度を10%下げると体感温度が約1℃下がるという現象を利用しているためです(不快指数という計算上の理論なので体感は個々によって変わります)。
29℃以上の場合は「冷房」運転がオススメ
たとえば気温27℃で、ゲリラ豪雨明けのようにジメジメする湿度70%でも、除湿運転をして湿度50%まで下げると、体感温度は25℃ぐらいまで下がります。湿度も下がるため、汗がすぐに蒸発してベトつきの不快感もなくなります。
29℃以上の場合は「冷房」運転をオススメします。29℃以上になるといくら除湿しても「やや暑いな」と感じてしまうからです。さらに気温が32℃を超えると除湿するだけでは「汗ばむ暑さ」になります。
ですから気温が29℃を超えたら「冷房」運転にして、設定温度を27~28℃程度にするといいでしょう。冷房運転は除湿もしてくれるので、ゲリラ豪雨明けのムシムシした状況でも、かなり快適な環境になります。
なお、除湿機能がついていないエアコンや、「再熱除湿」と「弱冷房除湿」の区別が付かない場合は、冷房運転にして設定温度を28℃以上に設定するといいでしょう。ほとんどのエアコンは冷房の設定温度を30℃ぐらいまで上げられるので、弱冷房除湿とまったく同じ動作になります。
寝冷えするので冷房は使いたくない、でも熱帯夜はキツイ!
これもよく質問を受けます。「エアコンの“切タイマー”は何時間にセットすればいいの?」というご相談です。そもそも「エアコンをかけたままで寝るのは健康に悪そう」という都市伝説もあり、とくにご高齢の方は熱帯夜でもエアコンをつけずに寝ることが多いと聞きます。
気象庁は「夕方~翌朝までの最低気温が25℃以上を熱帯夜」と定義しています。でも体感的には30℃近くに感じるのではないでしょうか? それは湿度が70~100%もあるのがザラで、しかも無風のときがあるからです。もちろんタオルケットを羽織れば、また熱がこもります。
「エアコンをかけて寝るのは不健康」というのは大嘘なので、熱帯夜には必ずエアコンを使いましょう。もしエアコンを使わずに一夜を過ごすと、知らぬ間に熱中症になる危険があります。湿度が高いので寝汗をかいても蒸発せず体温調整機能がうまく働かなくなり体内に熱がこもる。これが熱中症です。また体は必死に体温を下げようと、ますます汗をかくので今度は水分不足になります。
寝苦しいと感じたり、「今夜は熱帯夜になります」とニュースなどで聞いたりしたら、必ずエアコンをつけて寝てください。設定は冷房運転で温度は26~28℃にします。気温が28℃以下なら除湿運転でもいいでしょう。目標湿度は50~60%です。
「切タイマー」を利用する場合は睡眠サイクルを考慮
夜通し運転するのに抵抗がある方は「切タイマー」を利用します。セットするのは起床2時間前です。たとえば11時に就寝して7時まで8時間寝る方は、2時間前の「6時間」の「切タイマー」をセットします。
人間の睡眠は浅い眠りと深い眠りを1セットとして、これを3、4回繰り返します。この1セットは人により1時間半という場合もあれば2時間という場合もあるので、普段の生活サイクルから1セットの時間を割り出してみてください。3か4で割って余りが少ない方があなたの睡眠サイクルの1セットです。1セット2時間の方で3セット=6時間睡眠、もしくは1セット1時間半で4セット=6時間睡眠なら「切タイマー」は「4時間」になります。
つまり最後の1セットの睡眠の始まりでエアコンをOFFにすると、室温も徐々に高まり約2時間後に室温が高くなったところで目が覚めるというわけです。
よくやりがちなのは、床に入って寝るまでの「1時間」の切タイマーです。これだと気持ちよく寝られるのは最初の1セットだけなので、2時間ごとに目が覚めたり、寝不足気味に感じたりしてしまいます。
もちろん電気代が気にならない場合は、夜通しエアコンを付けて寝てもいいでしょう。ただしお腹を冷やさぬよう、きちんとタオルケットを羽織ってくださいね。
また就寝前のお風呂も効果的です。詳細は別に譲りますが、ぬるめのお風呂に入って体の芯を温めると、非常に寝つきが良くなると医学的にも証明されているそうです。
ちょっとしたお掃除で電気代が安くなります
エアコンのフィルターをお掃除すると電気代が安くなるというのはよく聞きます。月に1、2回フィルターをお掃除すると、まったくお掃除しない場合と比べて、年間で1,000円ほど電気代が安くなります。
注意してほしいのは、フィルター自動掃除機能つきのエアコンです。フィルターのホコリは自動的にお掃除してくれますが、ホコリは掃除機のような「ダストボックス」に溜まります。ゴミの排出までは自動でできませんから、年に1回はダストボックスのお掃除も忘れないようにしましょう。
また夏の冷房時はエアコンの内部にカビが発生しやすいので、ひと夏を終えたら業者にエアコン清掃を依頼するといいでしょう。冷房運転は内部が結露しやすく、カビが繁殖するのにちょうどいい温度です。言うならばカビの繁殖期。清掃せずにそのまま暖房運転をすると、夏に発生したカビたちが「久しぶりに風が吹いた!」と喜んで、胞子が部屋中に飛び出してきます。
また泥汚れが多い地域では、室外機のお掃除も効果的です。金属板が何枚も重なっている部分に泥が付着してしまうと、放熱効果が悪くなり、エアコンの効率が下がってしまいます。室外機を見て茶色い泥がついている場合は、高圧洗浄機や散水で泥を洗い流しましょう。室外機の裏側から掃除しなければならないので、自信がない! 自分で掃除して壊してしまわないか? と心配な場合は、エアコンクリーニングの業者さんに相談するといいでしょう。
さらに室外機で注意したいポイントがもう1つあります。それはファンから出る風を通り抜けやすくすることです。室外機の前に冬用タイヤを積んであったり、子供が乗らなくなった自転車や不用品を置いたりしていませんか? また室外機の見栄えが悪いからと言って、園芸用のラティスなどで隠してはいませんか?
室外機の役割は、室内機で吸収した熱を外に吐き出すことです。風通しが悪いと、熱を外に吐き出せなくなり余計に電気代がかかってしまいます。
扇風機と合わせて使うと「温度ムラ」がなくなる
暑い夏の夕暮れでも、フッと風が吹くと涼しさを感じるものです。実際に、人は風を感じると、体感温度が2℃下がると言われています。
そこで冷房をする場合は、扇風機やサーキュレーターなどで部屋の空気を攪拌し、気流を作ってください。こうすることで部屋の温度ムラがなくなり、より涼しく感じるでしょう。
たとえばエアコンの設定温度を27℃に設定します。しかし扇風機などを併用すると体感温度が2℃下がるため、実際には25℃に設定したのと同じ涼しさになるのです。
一方、エアコンの電気代は、設定温度を1℃上げるとシーズンで1,000円ほど節約できます。つまり26℃が快適な方は、エアコンの設定温度を28℃にして扇風機などで風を作ってあげるとシーズンの電気代を2,000円ほど安くできます。
「でも扇風機を使ったらその分電気代がかかるでしょ?」と思うかもしれません。しかし扇風機の電気代は、1日8時間「弱」で使ったとしても5円程度しかかかりません。扇風機の電気代はエアコンに比べると安いので、ぜひ併用してみてください。
人は年を重ねると「暑さ」の感覚が鈍ってきます。そのため高齢の方は、真夏日の昼でも暑さを感じずエアコンを運転しない方が多くいるそうです。そのまま過ごしてしまうと、熱中症や脱水症状になりかねません。ちなみに人の予備の水分は主に筋肉の中に蓄えられていると言われており、子供やお年寄りなど筋肉が少ないと、さらに脱水症状の危険性が高まります。
そこで子育て世帯やお年寄り世帯にオススメしたいのが「熱中症計」。市販されている熱中症計には「黒球式熱中症指数計」という専用の温度計もあります。しかし熱中症専用となると、いつも確認する癖がないので見逃しがちです。アラームが鳴って警告するタイプもありますが、耳が不自由な方は気づきにくいかもしれません。
筆者がオススメする熱中症計は、時計タイプや普段使いする電話機です。あくまで一例ですが、「CITIZEN」の高精度デジタル湿度計(8RZ232-003)は卓上に置く時計で、文字も大きく見やすくなっていて、温度と湿度センサーを内蔵しているので、熱中症に注意すべきときは時計の中央に警告が表示されます。
またパナソニックのデジタルコードレス電話機(VE-GD78DL)は、普段使う電話機に熱中症の警告機能がついているので、音声と大きな画面で熱中症の警告をします。暑さの感覚が鈍っていることには本人はなかなか気づきません。ですから家族からプレゼントとして贈るといいかもしれませんよ。
我慢せず、上手に賢く節約しながら健康に
ここ数年、何もかもが値上がりして「節約」ばかりを考えてしまいます。とくに電気代の高騰は家計に大きく響きますが、何と言っても健康が第一です。暑さは我慢せず暑いときには積極的に冷房を使いましょう。でもちょっとだけ工夫することで、電気代も節約できるので皆さん実践してみてください。
(藤山 哲人)