恐ろしい〈生存率ゼロ%〉のタワーマンション…「終の棲家」として購入した高齢者たちの末路
タワーマンションの購入年齢…30代と60代に多い
「タワーマンション節税が規制強化で終了」最近そんなニュースが飛び交ったのを覚えているかもしれません。タワーマンション節税とは、物件の「相続税評価額」と「市場価格」の大きな乖離を利用した、「相続税の節税対策」のことです。高額な上層階の物件ほど節税効果が高いため、売り手としても節税効果は抜群のセールスポイントでした。しかし住まいとしての本来の目的から逸脱した購入が増えたことと、2022年4月にタワーマンション節税を認めない最高裁判決が下ったことを受け、税改正となりました。増税となるこの改正は2024年1月から適用される予定です。
このように今後は大きな節税効果は見込めないものの、依然としてタワーマンション人気が衰える気配は見えません。特に高層階は人気が高く、都心・湾岸エリアでは1億円では購入もとうてい不可能な状態。1LDKでも数億円という値段がつけられ、それが飛ぶように売れています。
一体どんな方がタワーマンションを購入しているのでしょうか。とあるディベロッパーにおける購入者の統計では30歳代が最も多いという結果でした。住宅ローンを借りて購入することを考えると、戸建て住宅と同様にこの年代となるでしょう。
「投資用」「法人の社宅用」という需要も少なくありませんが、自己居住用として購入するのはやはり若い世代です。
そして60歳代も多いというのがもうひとつの特徴。タワーマンション購入者の自己資金の割合は、なんとオールキャッシュ(現金一括)が約半数を占めます。つまり購入者の半分の人は住宅ローンを借りず自己資金で購入しているということです。この点からも裕福なリタイア世代が多いということが想像できます。
終の棲家として魅力的なタワーマンションの住環境
60代からのリタイア世代がタワーマンションに感じる魅力とはどのようなものでしょうか。
高い資産性は当然のことながら、まずは立地の良さが挙げられます。「マンションの価値は立地で決まる」とよく言われますが、タワーマンションではそれがより顕著です。多くは駅に近い立地であるため、リタイア世代にとって買い物や病院通いにとても便利です。
またファシリティの充実も魅力です。ゴミ置き場は各階にありゴミ袋を持って一階まで行く必要がありません。ゴミを持ったままエレベーターで住民と鉢合わせするのはとても嫌なものです。コンシェルジュが常駐しているマンションではセキュリティも万全。共用施設としてフィットネスジムやラウンジ、サウナなどが充実している場合もあります。高層階では眺望の良さも抜群。高層階に住んでいなくても共有施設としてパーティルームがある場合はそこで景色を楽しむこともできます。また住宅内はワンフロアであるため、二階建ての戸建て住宅と比較してリタイア世代には生活しやすいでしょう。
しかしタワーマンションもいいことづくめではありません。確実にデメリットとリスクが存在します。
リタイア世代〈タワーマンション住まい〉のデメリット5選
タワーマンションに住むリタイア世代にとってのデメリットを5つ挙げます。
① 外出に時間がかかる
特に朝の時間帯はエレベーターが混雑しがちです。駅から徒歩5分にもかかわらず、建物の外に出るまで15分かかることもめずらしくありません。
② 修繕積立金の大きな負担
タワーマンションの大規模修繕工事はまだ工法が確立されていないため、将来積立額が足りなくなる恐れがあります。若い世代の場合は大規模修繕時期までに売却することも考えられますが、リタイア世代ではそうもいきません。
資産性の高さは、重い税負担としてのしかかる可能性があります。前述のとおり「タワマン節税」は終了してしまったため、子供世代への相続税負担について対策を考える必要があります。
④ 災害時の避難が困難
2022年に東五反田にある44階建てのマンションで火災が発生したことがあります。700世帯が暮らすマンションでの避難はエレベーターが使えず大混乱だったことが想像できます。注目すべきは高齢者世帯が「避難は諦めた」と言っていたこと。高齢者が階段を使って一階まで避難するのは難しいでしょう。2011年の東日本大震災でも体の不自由な高齢者が避難を諦め、津波の犠牲となられた痛ましいケースが多くありました。避難を諦めるという事態が都心でも起こりかねないということを、この火災で気づかされました。
⑤ 体調不良時、救急隊の到着に時間がかかる
リタイア世代にとって常に不安なのは、急な体調不良。もし救急車を呼ぶ事態となったとき、救急隊が高層階にたどり着くために一体何分かかるのでしょうか。コンシュルジュが常駐しているマンションであれば、救急車が到着する前にエレベーターを一階に下げて準備してくれるかもしれません。しかしそれはコンシェルジュと冷静に連携できればの話です。特に出勤時間帯であれば絶望的な状況になるかもしれません。
さらにもしエレベーターにストレッチャーが入らない古いマンションの場合、救急隊員におぶってもらい降りていくこともありえます。時間を争うような急病の場合、悲惨なことになるのは想像に難くありません。
この点について興味深いデータがありますのでみていきましょう。
高層階の住民の心停止〈生存率は0%〉というデータも
2016年と少し古いのですが、カナダの医学雑誌『カナディアン・メディカル・アソシエーション・ジャーナル(CMAJ)』に興味深いレポートが掲載されました。
タイトルは「Out-of-hospital cardiac arrest in high-rise buildings: delays to patient care and effect on survival」(高層ビルでの病院外心停止:患者ケアの遅れと生存への影響)というものです。
これによると、トロント市などにおいて心停止で救急搬送された患者8,216人のうち、生存して退院できたのは低層階の住民の方が多かったとされています。
2階以下の住民の生存率は4.2%、3階以上では2.6%という統計でした。しかし、16階以上の住民の生存率だけを抜き出すと0.9%、25階以上では生存率は0%という衝撃の結果となっています。
救急隊の到着の遅れが生存率に大きな影響があるということです。
もちろん外国での調査であるため日本のタワーマンションとの構造上の違いや救急隊員の熟練度の違いもあるかもしれませんが、高層階で急性心筋梗塞や脳卒中を発症した場合に命が助かる確率が著しく低くなるのは否めません。
心筋梗塞は朝8~11時頃が「発作をおこしやすい魔の時間帯」としてよく知られていて、それはタワマンにおいて、エレベーターが混む時間帯と重なります。これはタワーマンションにリタイア世代が住むことの大きなリスクといえるでしょう。タワーマンションを購入する前に冷静に検討すべきポイントです。