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自由の国、アメリカ。医療についても“自由”のアメリカでは、日本に比べ医療費がかなり高額になっており、医療費が支払えず、病気になっても治療を断念する人は珍しくありません。医療費が高すぎる理由はなぜなのでしょうか、本記事ではその理由をみていきます。

アメリカの医療事情

ご存知の方も多いと思いますが、アメリカと日本との大きな違いは、日本のようにアメリカでは国民皆保険制度ではありません。保険加入の義務もありません。国民1人ひとりが、民間の医療保険に入って医療を受けています。

自分の健康については、あくまでも自己責任なので、個人で民間の医療保険に加入することを決めなければなりません。自己責任ですから、入らなくてもよいのです。加入した保険会社によって、保険でカバーできる医療範囲も異なります。ですから、自分で決めなければならない責任が求められることになります。

日本と違い、「自分の健康は自分で守らないといけない国」なのです。ですから、便利性よりも信頼性が重視されます。よって、自分の責任において信頼できる医師や薬剤師を求めることになるのです。

救急車は有料、決められた病院にしか行けない…病気に対する「覚悟」が必要

日本と比べて、アメリカは「面倒だな」と思われたと思います。正直面倒です。ですから、以下のような面倒なことが発生します。

・病気になった場合は、基本的に主治医と保険会社が認めた病院にかかることしかできない(どこでも受診できるわけではない)。 ・個人で保険会社と契約し、かかりつけ医(主治医)を設定しなければならない。 ・かかりつけ医は保険会社が登録しているリストから選ばなければならない。 ・一般の病院とは別に、眼科と歯科には別の保険を必要とする。 ・医療費は日本よりもかなり高く、救急車も有料。 ・学校入学時の書類には主治医を記載する。

そのほか諸々あるようです。

保険加入者は国民の6人に1人…病気になっても治療を受けられない人も

では、アメリカ人はどのように保険に加入しているのか。一般的なアメリカ人の保険加入方法は、主に以下の方法となります。

・勤務先の会社が提携している保険会社に加入する。 ・勤務先の会社が毎月の給料から会社が定めた金額を差し引いて、いざというときは会社が負担する。 ・個人で民間の保険会社を利用する。

一般的に加入する民間の保険料もかなりの高額です。そのため、持病を持っている人は保険に入れない場合があったり、一般よりも高い額の保険料を課される場合があります。実際には、アメリカ国民の約6人に1人しか保険に加入しておらず、病気になっても「治療を受けられない」という人が多くいるのが現実です。

つくづく日本の国民皆保険制度はありがたいと痛感します。

低所得者にも保険を…改革に乗り出したオバマ

日本のような国民皆保険制度がないアメリカは、低所得者などが十分な医療を受けられない、病気になっても治療を受けられないという不満は当然多くあります。

このような問題があり、前大統領オバマ氏が改革に乗り出しました。それが公約のひとつであった「オバマケア」です。オバマケアとは「医療保険制度の改革」のことです。2010年に成立した法律、ACA(Affordable Care Act)を、通称「オバマケア」と呼んでいます。

オバマケアを簡単に説明すると、

・低所得者の方も、保険料の安い公的医療保険に加入できるようにする。 ・保険会社は、どんな人にも(持病や重度の病気を持つ人も)差別なく保険の加入を認める。 ・ただし、保険に入らなかった場合は、確定申告のときに罰金を科す。

というものです。これは日本の国民健康保険とは違い、あくまでも自分の意思での加入ということになっています。

しかし、このオバマケアには国家予算として、1.1兆ドル(約120兆円)の予算を必要とするとして、共和党を中心とした反対意見も多く、トランプ政権になって見直しが行われました。その後民主党に政権が移り、状況は変わりつつあります。賛同するアメリカ国民が多いことは事実です。

アメリカの医療はコストが非常に高くて、国土が広いので、アクセスも悪いことが問題になっていました。それが当たり前になっているのです。

アメリカの医療費が高い“裏事情”

アメリカの医療費は高いですが、医療費が高くなることにも理由があります。そのへんの事情を少しみてみましょう。

オバマケアの登場には、アメリカの法外な医療費が大きな理由です。救急車を呼んで病院に運ばれるだけで数十万円かかるといわれています。民間の保険に加入していても、高額な医療費を払わされます。その最大の理由は、各医療機関が値段設定を自由にできるからです。ここが日本とは大きく異なります。

日本の医師の倍以上!超高収入の米医師

医療ビジネスによって、アメリカの医師の給料はほかの国に比べても圧倒的に高いのです。先進国の医師の平均年収は大体900万〜1,600万円くらいなのですが、アメリカの医師になると約2,200万円以上になります。これは先進国のなかでもっとも高く、日本の医師の倍以上といわれています。

日本は病気の種類や治療による料金を国が定めていますが、アメリカにはそのような固定価格はありません。ですから、病院側が自由に値段を設定しているのです。つまり個々の病院、医療が「ビジネス化」しているのです。

学費・研究費も高いアメリカ…その“ツケ”が医療費の高さに

アメリカの大学の学費は世界トップクラスの高さです。これは教育機関も医療機関と同じように「ビジネス化」していることが主な要因です。このビジネス化が値段設定における原点といっても過言ではありません。アメリカの大学の医学部の学費は超高額です。借金をしてでも教育を受ける人は珍しくありません。ですからその後のこともあり、必然的に高い給料ではないと、仕事としてやっていけないという事情があるのです。

アメリカの医療技術は世界でもトップクラスです。それを支えているのは、医療機関による研究投資が莫大な金額を投じているからです。いうまでもなく、その負担はかなりのものです。

新たな治療法、技術、医薬品の開発など、研究費にかける費用はとても大きく、その負担が個人の高い医療費に繋がっているといってもよいでしょう。つまり、医療開発費のツケが一般医療費に回って来ているといっても過言ではないのです。

「医療訴訟」に備えている側面も 

アメリカニュースや情報、あるいは映画やドラマなどで裁判のシーンがよくみられます。また、訴訟が起きたという情報をよく耳にすると思います。マイケル・ジャクソンが亡くなったときにも、いろいろと見受けられました。ご存知のとおり、アメリカは訴訟社会なのです。

日本とは比べものにならないくらい、アメリカでは頻繁に人を訴えます。なかには、「えっ、こんなことで」というようなものもあります。当然のごとく医療の現場でも、このようなことが頻繁に起こり、命に関わることですから、訴訟になったときに発生する金額も大変なものです。

万が一の医療ミスなどに備えて、「弁護士費用」を考慮した高い医療費を取っているといっても過言ではありません。医師側は訴訟が怖いのです。ですから、過剰なサービスや治療を施して、訴訟の発生を避けていることも珍しくないのです。訴訟を起こされて廃業した医師も少なくありません。医師の方々も必死なのです。

そして、アメリカでは保険は必須です。万が一に備えておくことは大切です。なにかあった場合は、考えられない金額を請求されることが珍しくありません。ビジネスはもちろん、旅行に行く際も保険に入っておくことをおすすめします。

鈴木 幹啓

すずきこどもクリニック院長

(※写真はイメージです/PIXTA)

(出典 news.nicovideo.jp)

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