バイプレイヤーの泉 第104回 『舞いあがれ!』くわばたりえに伝えたい「今の君はピカピカに光ってる」 | ニコニコニュース
幼少期から熱血ドラマオタクというエッセイスト、編集者の小林久乃が、テレビドラマでキラッと光る“脇役=バイプレイヤー”にフィーチャーしていく連載『バイプレイヤーの泉』。
第104回はお笑い芸人のくわばたりえ(クワバタオハラ)さんについて。現在、朝ドラ『舞いあがれ!』(NHK総合ほか)に出演中の、くわばたさん。半年間の放送期間を経て、ドラマは最終章を迎えています。ずっと物語を追ってきましたが、今回の朝ドラで(勝手に)ベスト・オブ・バイプレイヤーを差し上げたいのは彼女でした。
○ハマり役だった東大阪のおばちゃん、梅津雪乃
放送曜日が見事にぴったり月末日とハマった3月31日(金)に、最終回を迎える『舞いあがれ!』。空で飛ぶことを夢見た、舞(福原遥)がパイロットを志すところから物語は進んでいった。舞は幼馴染で歌人の梅津貴司(赤楚衛二)と結婚、起業、出産と人生経験を積む。ただ夢半ばで諦めることになってしまった飛ぶこと。10代からは生活環境が変わったけれど、諦めずに近づいていく。
この作品でくわばたさんが演じているのは梅津貴司の母、雪乃役。東大阪でお好み焼き屋「うめづ」を夫婦で営んでいるという設定だ。舞の実家である岩倉家の隣に住まいと店を構えて、ついには舞の姑となった雪乃。子どもたちや仲間が時間経過とともに考えや、生き方を変えながらも「うめづ」は彼らを見守るように同じ場所にあり、変わらぬ味を提供している。余談だが、ランチには大阪名物のお好み焼きと白飯という、炭水化物の波状攻撃をしているのが何とも大阪らしいなあと思った次第。
さて梅津雪乃役。2022年10月にドラマがスタートしたあの日、くわばたさんが登場してきたのを観て「うわ、ハマリ役!」と、初回にして思った。ドラマオタクの記憶の限りでは、彼女が地上波のドラマに出演していたのは10年以上も前だ。それもスペシャルドラマにおける、ゲスト出演。それが突然の朝ドラ出演に至ったとは紛れもなく快挙だ。
○くわばたさん、背中を一発叩かれたことを忘れません
雪乃は毎回、大阪のおばちゃんを彷彿させる柄の洪水のような衣装で、店に立ち、店主の勝(山口智充)と夫婦漫才のようなやりとりをしている。ネイティブ関西弁でセリフを話す姿も最初はおぼつかない感じを覚えた。ただ放送回を追うごとに不自然さは消えて、お母ちゃんっぷりが板についていくのがよく分かった。
「ウチの貴司なんかでも一生独身ちゃう? 短冊にな、短歌書いてモテんのは平安時代までやっちゅうねん! ホンマに!!」
例え息子が赤楚衛二であっても、おばちゃんの扱いは手荒だ。虚勢を張るようなセリフが目立ったけれど、息子の短歌が掲載された新聞をストックしている雪乃。愛情表現のギャップがまたドラマを盛り上げていた。くわばたさんが今回の朝ドラがどういった経緯で出演に至ったのかは分からないけれど、きっと女優としてのオファーが続いていくと思う。
……と、熱血くわばたファンのように書いてしまうのは理由がある。
実は彼女が結婚する以前に、ダイエットの企画で取材をさせてもらったことがあった。話は盛り上がり、取材が終わった頃。なぜか恋の話題になり、実は振られたばかりだと言うと、確か「頑張りや!」と背中を思い切りバッシン!! と叩かれたことがある。驚いた。たくさんの人に取材をさせてもらったことはあるけれど、対象者から体を叩かれるのは2回目のこと(1回目は麒麟の川島氏)。思い切り不意を突かれた対応のせいか、未だに当時のことを覚えている。ただし、あの一発には愛情があった。彼女の表裏のない性格から自然に出た行為だと解釈した。
そんな思い出があり、テレビ出演している彼女を見かけるたび、勝手に小さな親近感が湧いていた。結婚して、お子さんが産まれて、そろそろ仕事は規模縮小されていくのだろうかと思っていたところに、今回の朝ドラ出演である。やはりあの威勢の良さは、簡単に崩れるものではなかったらしい。
今後のくわばたさんの女優人生が、空高く舞い上がっていきますように。また勝手に小さく願わんばかり。
小林久乃 こばやしひさの エッセイ、コラム、企画、編集、ライター、プロモーション業など。出版社勤務後に独立、現在は数多くのインターネットサイトや男性誌などでコラム連載しながら、単行本、書籍を数多く制作。自他ともに認める鋭く、常に斜め30度から見つめる観察力で、狙った獲物は逃がさず仕事につなげてきた。30代の怒涛の婚活模様を綴った「結婚してもしなくてもうるわしきかな人生」(KKベストセラーズ)を上梓後、「45センチの距離感」(WAVE出版)など著作増量中。静岡県浜松市出身。Twitter:@hisano_k この著者の記事一覧はこちら
(小林久乃)