令和のバーキン? ユニクロ「1500円バッグ」が英国で大絶賛 模倣品騒動も起きるほどヒットした背景 | ニコニコニュース
ユニクロの「ラウンドミニショルダーバッグ」が売れている。2021年4月の発売から順調に売れていたが、22年4月の英国インフルエンサーによるSNS投稿をきっかけに大ブレイク。LVMH(モエ・ヘネシー・ルイ・ヴィトン)グループが世界展開するファッション検索エンジン「Lyst」の2億人以上による検索データを基にした、23年第1四半期のファッショントレンドで「最もホットなアイテムのランキング」の1位にも選ばれた。
今や世界のファッショニスタが熱視線を送るユニクロのラウンドミニショルダーバッグ。本記事では、その魅力や販売好調の要因を探っていく。
ラウンドミニショルダーバッグは、三日月型のバナナバッグで、ユニクロ公式Webサイトでは「お出かけに必要な小物が収納できるサイズ感。さまざまな着こなしに合わせやすい」などと紹介されている。
価格は1500円。色は、ブラック、レッド、ナチュラル、ベージュ、イエロー、オリーブ、パープルの7色を展開している。今秋冬のモデルは、少ししわ感があり着こなしに馴染みやすいという素材にアップデートされた。
また、今秋冬の新商品として、コーデュロイ素材で、オフホワイト、ブラック、ブラウンの3色が加わった。
サイズは、横28×縦17×マチ10センチ。ストラップの長さは62~116センチ。素材は、通常商品は表地が100%綿、中わたは100%ポリエステル、裏地は100%ポリエステル。コーデュロイのものは、表地がナイロンだ。いずれも小雨を防ぐ程度の撥水加工が施されており、製品原産地(縫製・編立・組立)は中国。
開発の背景には、ユニクロが「使い勝手」にフォーカスした商品作りに取り組んでいることがある。同商品のコンセプトについては「小さめでも携行品を収納できるものを作ろうということで開発に至った。モノをたくさん入れることを前提に、重量を軽くすることも意識したポイント」(ユニクロPRチーム)としている。
具体的には、500mlのペットボトルを基準にしつつ、鍵やスマートフォンなども入れられるように内ポケットを付けるなど、しっかりとした収納スペースを確保できるよう工夫した。これまで軽くて着心地の良い服を得意にしてきたユニクロだが、そのノウハウがバッグにも生かされているようだ。
ラウンドミニショルダーバッグの大ヒットにつながったのは、英国のインフルエンサー、ケイトリン・フィリモア氏のTikTokへの動画投稿がきっかけだった。
動画では、小型のバッグからオーバーヘッド型ヘッドフォン・コンパクトデジタルカメラ・鍵・お菓子の袋・財布・リップクリーム・香水・薬などが次々と取り出される様子が映されている。デザイナーズブランドに勤務するというフィリモア氏のおしゃれな身なりもさることながら、小さなサイズのバッグに驚くほど多くのモノが入っていたことが大きな反響につながったようだ。
この動画を視聴した多くの人が購入して、またTikTokに投稿するようになった。これまでラウンドミニショルダーバッグに関するさまざまな動画は、5900万を超える再生数に達しているという。
ユニクロ公式Webサイトにある「LifeWear magazine」の取材記事によれば、フィリモア氏はロンドンの店舗でラウンドミニショルダーバッグを購入。スナックを買おうと立ち寄った店で、バッグの尋常ならざる容量に気付いてとても驚いたという。そこで、帰宅後にバッグからどんどんとモノを取り出す動画を作成した。
●英国では「ミレニアル・バーキン」と話題
ユニクロPRチームは、TikTokで動画が大きく拡散したことについて、最近のトレンドである「静かな贅沢(クワイエット・ラグジュアリー)」が影響しているのではないかと考えている。
ハースト婦人画報社のファッションメディア「BAZAAR」が23年8月9日付に掲載した記事『富裕層に好まれる「クワイエット・ラグジュアリー」とは? 大人女性におすすめのセレブの着こなし16選』によれば、「静かな贅沢」は「一目でハイブランドと分かるような騒がしいロゴやブランドは不要で、誰かに見せびらかしたり、自慢することを必要としない“真の富裕層”が好む品格ファッション」と定義されている。
確かにラウンドミニショルダーバッグはカラーバリエーションこそあるものの、シンプルな無地の製品だ。「UNIQLO」のロゴが入っているわけでもない。使い勝手が良く、小さいのに多くのモノが入る想像以上の収納性が、昨今のトレンドに合致したと見ることもできる。さりげなく携行していれば、ユニクロの製品だと分かる人には分かる。そうした性質を有している。
ラウンドミニショルダーバッグは、英国メディアで「ミレニアル・バーキン」とも称されている。ミレニアル世代(1980~90年代中盤生まれ)にとって、エルメスの大ヒット商品「バーキン」に匹敵する価値を持つとされているのだ。つまり、ミレニアル世代のファッショニスタにとって、象徴的なアイテムの一つにまで昇華されている。
ユニクロを運営するファーストリテイリングは、ラウンドミニショルダーバッグの販売数や販売額を公表していない。しかし、ミレニアル・バーキンと呼ばれ話題になった英国を中心とした欧州、さらにアジア諸国で人気を博しているのは明らかだ。冒頭で紹介したように、日本でもLystの23年第1四半期におけるファッショントレンドとして話題になった。なお、ラウンドミニショルダーバッグは展開しているどの国と地域でも、性別を問わず売れているという。そこがユニクロらしい。
ところで、ヒット商品の常だが、類似商品が市場に出回るようになってきた。見た目がそっくりで、より安価な価格で販売しているものもある。中には耐久性に問題があり、バッグという実用品として使うに堪えないほどのものもあると聞く。
ファーストリテイリングでは、9月19日に「ラウンドミニショルダーバッグの模倣品・類似品にご注意ください」と題したリリースを発表。「弊社は現在、模倣品・類似品の調査を続けるとともに、模倣品・類似品と確認された商品のうち悪質な事例については、その商品を製造・販売している会社に対する法的措置を検討しております」としている。
●今後、さらなるバリエーション展開も
今後、軽さやシンプルな形、収納力を中心に支持されていることを踏まえて、大きさや形状に関して寄せられている要望に対処すべく検討していきたいとしている。
9月15日には、デザイナーのクレア・ワイト・ケラー氏を起用した「UNIQLO : C」という新しいラインにて、少しサイズを大きくした「レザータッチラウンドバッグ」(2990円)を発売した。色は、ブラック・ダークオレンジ・ナチュラルで、10月中旬にイエローが加わり、4色展開となる予定だ。
このように、商品のバリエーションが今後増えていく方向性で進んでいる。世界のファッショニスタのマストアイテム、ミレニアル・バーキンとして、ラウンドミニショルダーバッグの勢いはますます加速していく様相だ。
(長浜惇之介)